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公爵令嬢のじかん

18禁です!表現が。

15禁にしてありますが、お子様はお帰りください。

大きいお友達は、なーんだという空振りである事を先に釘さししておきます。

「爵位や宮家を賜っていない殿下には、資産はまだございませんね。ですから公爵家が後ろ盾になっておりました。…国王陛下の私財から賄うしかございませんね。お父様におすがり下さいませ。なお」


つらつらと、令嬢は口を回す。

「もし、警察によってわたくしへの嫌疑が晴れれば、断罪に対する慰謝料も重ねて申請致します。」


矢張り。

エーは王子の蒼白な顔を横目で見てため息をついた。



「公爵家ご長女ともなれば」

C伯爵令嬢が加わる。


「1度立った醜聞のダメージは大きいですね。婚約が無ければ、外つ国が是非ともと王妃に考える才色兼備です。その慰謝料ともなれば、国内最大の額となるでしょう。」

 

お褒め頂き恐縮です。小さく礼を言ってD嬢は、王子に向き直る。


「無論、国費で補填は出来ませんわ。これは一王子の私的な問題ですから。」


「あっ!それとーそれとー」

今度はぽふん、とB嬢は両手を合わせて、


「公爵家から、将来の嫁ぎ先への御心配りと言うことで、折々にお贈りになられた贈答品や殿下のお小遣いもお返しいただくか、買い取っていただくか、ですよねーっ」


(悪夢だ。)

エーは頭を抱えた。

育ちの良い王子は、貢物だと言って、じゃんじゃか使っている。


「このリストですと、総額4億5327万ゼクロールとなります。」

A嬢はバサッと紙面が壇上に見えるように掲げた。


「賠償金、慰謝料、贈答品。総額は?A嬢」

A嬢は、計算尺をテキパキ動かして告げた。


「しめて8億7000万ゼクロール。魔石を除く。ですね。」


D嬢は、宜しくね、と軽く頭を傾け、にこ、と微笑んだ。まるで、お茶のお代わりをお願いするかのように。



見事。

見事である。

満額王家が支払えば、令嬢は独身のままで一生暮らせる。


公爵家の後ろ盾を失い、父王の財を借りれば、王子はたちまち兄弟の中で存在感が薄れるだろう。余程力量を発揮しない限り。

エー侯爵子息は、ここで王子サイドにつけば、出世は見込めない、と理解した。


王子もまた、令嬢の言葉を正しく理解した。

事ここに及んで、王子は真実の愛の代償が、かなり大きい事を思い知らされた。


「何よっ!ディー様は王子よ!

出世払いでお父上がホイホイ出すわよ!あんたなんか、行かず後家で一生刺繍して引きこもるんだわ!」


アーディアは、洋梨を美味しく頂いた様で、ようやく声を張った。


「アーディア嬢。」

D嬢は、初めて彼女の名を呼ぶ。

「何よっ」


「公爵家が長女、Dにございます。名乗りは初めてですわね。この度は、殿下とのご婚約おめでとうございます」


いやまだそうときまったわけで()


と言うしどもどが、王子の口から漏れているが、2人はスルー。


「ふふ!やっと認めたのね。そうよ!私は第二王子の妃になるの。」


「まことにおめでたい。ではアーディア様は妃教育を本日から始められるのですね。」

(えっ)


D嬢はニコニコとA嬢を呼んだ。

A嬢は再び立ち上がる。


「はい。外国語学も含め、男爵令嬢なれば、初めての事が多くお時間がかかりましょう。概算でアーディア様が32歳と4ヶ月になられれば、本日までのD嬢の妃教育を履修なさいます。」

「あら、わたくし来年の誕生日までは続ける予定でしたわ」

「で、あれば、33歳と8ヶ月ですね。」


(な、なに?何なの?)


「ご結婚式は、それまでお待ちになられませ、殿下。」


「いや!だから、婚約はまだ「勝手な事言うんじゃ無いわよ、負け犬のくせにっ!」」

殿下のしどもどに、アーディアの叫びがのしかかる。


「勿論優秀な方ですもの、わたくしより速く身につけなされば若い花嫁になれましょう。」


(この!馬鹿にして!)

アーディアは外づらをすっかり忘れて、中の人に成り下がっている。


「アーディア様。教育費は殿下がお支払いになるのですか?」

「え?」

「失礼ながら男爵家の資産で賄うには高額かと。」


「本当に失礼ね!私は淑女よ!あんたみたいに時間も金もかけなくても、ディーの横に立てるわ!」


いやいや。

侍女のほうがまだ出自がいいわよ。

女生徒達は一斉に苦い薬を飲んだような表情を隠した。


「左様ですか。直ぐに婚姻を結ばれる、と。では、寝屋のしきたりは勿論ご存知ですわね?」


「え…」(何?)


「王位継承権二位の殿下のお子様を授かる御身です。初夜は、国王及び国家の重臣が立ち会われます。」


「え、それって」


「殿下との睦事(むつみごと)は公開となります。そして、首尾よく事が終ったか改められます。翌日侍女によって、純潔の証を市民に掲示されます。」


「ええ?しょ初夜にひ、人が??

証って、まさか、…そんな」


D嬢は、その頬を薔薇色に染めつつも、淡々と話す。


「勿論初めてなればこその証がシーツに。確かに殿下以外受け入れない体であるとの誓いでもあります。そして、めでたく身ごもり、出産の時も、王宮の間にて王族及び重臣方立ち会いのもと、子をひり出すのです」


「何それっ!はしたない!人前で愛し合うなんて…露出魔でなきゃ我慢ならないわっ!」


「それが血統を守ると言う事です。種が違えば大問題。子をすり替えれば、国家転覆の嫌疑となります。正しく殿下と結ばれ、確かに二人の子であると示さねばなりませんわ」


「……い、嫌よ、そんな。も、もし首尾よくいかなかったら」

「証でございますか?……他の殿方を受け入れた女性と見なされ、直ぐに捉えられるでしょう。…ご安心なさいませ。殿下と()()()()を育まれた貴女ならば。」


若干身に覚えのある殿下はうろたえ、大変に身に覚えのあるアーディアは逆ギレして吠えた。


「嫌!嫌よ!女をバカにしてるわ!そんな、男ばっかり得をする様な…」

「それが、王家に嫁ぐと言う事です。」


そうだ。

侯爵や伯爵とは違うのだ。

王家はその血統のみで継承される一族。王家の血に民は(かしず)き臣は忠誠を誓う。



「あんたは」

「……何でしょう」

「あんたは平気なの?私が現れなければあんたは人前で股を開くことになってたのよ?」


あまりのはしたなさに、会場はざわついたが、D嬢は平然と聞いている。


「ふふ。構いません。殿方の視線から上手に隠す技法も、妃教育で授かりました。それに」


はっ、とエーは、殿下は、顔を上げた。そして、

花の(かんばせ)を綻ばせたD嬢を見た。


「愛する殿下を受け入れる事以外は、瑣末(さまつ)な事ですわ。きっと、殿下はわたくしが恥らわないように上手にいたして下さいますでしょう……。それに」

公爵令嬢は、ひらりと制服の裾を揺らめかせ、脇から腰へと両手を身体のラインに沿って撫ぜるように下ろした。


(((……ぅおおぅ…)))

野太い吐息は、観衆の中から。


「この磨かれた身体の何処に、見られて恥じ入る事がございましょう……ねえ、殿下…。」


長いまつ毛の奥から、妖しい瞳が王子をロックオンした。

王子は、ごくり、と、喉を鳴らして、綺麗な唇を半開きにして惚けた。
















次、ラストです。

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