魔術のじかん
6月に入り、またおふざけ作品 魔鏡人生相談! なるものを連載し始めています。
この小説に好感をおもちいただける方には、お時間頂いても大丈夫かと。
是非。
「「「「「「」」」」」」
エー侯爵子息の悲劇はあっという間に広まり、午後の魔術学では、ひそひそと噂が飛び交い、古老の教師の講義は疎かになっていた。
「えー、皆さんご静粛に。今から」
「B嬢!貴様っ!A嬢に何をした!」
黒髪の少女は、キョトンとして、怜悧な青年のキツい声を受け止めた。
「えー、ビイ君。今は講義の」
「そんなことはどうでもいい!」
授業の根本を否定され、教師は呆然と黙した。
「貴様!ちょっと魔術に長けるからと、いい気になって、Aにどんな術をかけたんだっ!」
ビイは魔術局の若き研究員。その魔力から学生の身ではあるが、魔術局への出入りを許された存在である。
ただ。
その力のため、身内には疎まれ、恐れられ、かなり拗らせた性格である。しかし、可愛い婚約者B嬢のおかげで、社会性を徐々に身につけていた。
だが、この頃は疎遠であり、アーディア嬢と第2王子達の輪の中にいることが多くなった。
「……エー様がA伯爵令嬢に、返り討ちにあったことですか?」
怒りの炎がちらつく双眼に、臆せずB嬢は可憐な仕草で、コテンと首を傾げた。
「ほら!矢張りな!お前の術だろう!」
「そんなあー。A様はぁ、とっても賢い方ですものぉー。ご自分のハエさんはご自分でぶっ叩いちゃいます。」
「お前の、ネチャネチャしたモノの言いは虫唾が走る」
「そんなあー。アーディアさんだって、ぶりぶりじゃないですかあ」
「アディのは天然だ。彼女は無垢で天真爛漫。そんな所が…って!そんな事はどうでもいい!」
授業そっちのけの修羅場に、周囲は学食テラス再び!と、凝視していた。
「お前、アディの教科書を破っただろう!晴れた日にアディを水浸しにもした!廊下を急ぐ彼女をコケさせて!挙句は、階段から突き落とした!」
「えーB、覚えがありませえん。Bはぁ、A様とかCちゃんとかといつも一緒だしぃ。」
「盗人猛々しいな。魔術が得意なお前にアリバイなどない!」
バン!と、ビイの靴音が響く。
すたっと指をB嬢に突きつけ
「B!お前とはこれ以上我慢ならないっ!魔術局長に談判し、お前との婚約は破棄だ!」
(出ました!婚約破棄!)
(今度は通るか?)
ギャラリー達は悪い顔でワクワクしている。
「えー!破棄したら、Bどうなっちゃうの?」
「これだけの罪状があるんだ。退学だ。悪評故、嫁ぎ先も仕事先程も無いわ。自分の非道を呪っていろ。」
「ひどおい!B泣いちゃう!」
「だから止めろ!そのぶりっ子!」
「だからーアーディアさんとBの何処が違うのーっ!」
室内にも関わらず、Bの背には白い虎が咆哮をあげ、ぶわっとブリザードが吹き荒れ始めた。
対するビイはシールドを張り、マントで上半身をかばうが、間に合わず吹雪の直撃に遭う。
「お、お前とアディはっ、違…!大体アディの方が美人だし、声も美しい!そもそもお前なんか、つるぺたの棒みたいな身体のくせにっ!」
ぴきっ。
空気が、凍った。
「……あ。」
ゴゴゴゴゴ、と擬音がしそうな様体のB嬢に、全員目が離せない。
「……ったわね。お、女の子に、ぜっ……たい、言っちゃいけないこと、言ったわね!!」
B嬢の可愛い顔が、魔女のように、ニタリと歪む。
「……ってやる。」
「―何?」
「言ってやる!バラしてやる!みーんなっ!」
びBーっ!と、ビイは、あわあわしだしたが、勿論止まるわけが無い。
「こいつは!」
今度はB嬢のブーツが床を叩く。
「こいつなんか、厨2なんだからァ!!」
「うわあァァ!」
B嬢の口から、ビイの声が出てくる。
「『暗闇に俺は独り。孤高の存在には、理解者など不要。ふっ。』
『ああ。また。俺の中の竜が!魂を求めて!』
『俗人ばかりのこの世にあって、清冽に生きるには……俺は綺麗過ぎる。苦いな。貴様らに、ブラックコーヒーは似合わないだろう』」
止めて!やめてくれえ!!
ひいぃいっ!
茹でダコの様なビイの空中平泳ぎ状態を、周囲はぬるーい目で見ていた。
「ね!みんなあ!
こんなDQNな厨二病の童⚫野郎の癖に、なあにが、婚約破棄よっ!
あんたなんかあんたなんか!」
明日からフード被って眼帯して、手首に包帯巻いて登校しろおおおっ!
ひえぇぇぇぇ!
ぜーぜー。
「いいっ!厨二病克服してから、戯言言いなさいっ!Bが、Bが、どれだけあんたをフォローしてるか思い知るといいわっ!」
「……めんな、さい」
「聞こえませえん!」
「ごめんなさいーっ!」
「破棄はっ!」
ありませーん…
そして、教室の真ん中で、厨二病のDQNは、箱男になった。
さあ、次はCちゃん!