五話 漂流物!?
異世界からやってくる漂流物。
それは、空中に開いた穴と呼ばれる空間からやって来る。
大きさはどれも1メートル程の丸いもので、向こう側は真っ暗で何も見えない。
世界政府は、俺が生まれる前に漂流物の使用を禁止し、発見次第、穴を魔法で閉じることが法律で決まった。
漂流物には、この世界に悪影響を及ぼす物が含まれると判断されたからだ。
世界にいくつか開いていた穴は、今は政府公認の研究として残されている一つを除き、すべて閉じられたと言われている。
そう、この巨大な木の中にある穴は、まだ俺しか発見していない隠れ穴だった。
穴から落ちてくる漂流物は、ほとんどが役に立たない物ばかりだ。
穴をダストシュートと名付けた研究者は、異世界から穴を通して、この世界にゴミを捨てている、という一つの仮説を発表した。
そして、やがては、この世界を滅ぼすような廃棄物が捨てらるのではと、懸念したのだ。
確かに、穴から落ちてくるものは、ゴミが多い。
生ゴミや用途のわからないものが多く、ほとんどが使えないものだ。
だが、たまに『攻略本』やウナギのような小動物、こちらの技術では作れないようなお宝が落ちてくる。
すべてがゴミだけではない。
もし、このように精巧に書かれた『攻略本』がゴミならば、異世界では、魔物は、絶滅したということになるだろう。
それは、それで物凄いことだ。
こちらの世界では、魔物はどれだけ倒しても、どんどんと湧いてくる。
「わふっ」
隣にいるウナギがオレもゴミじゃないぞ、みたいな顔で一言吠える。
「そうだな、この穴が運ぶのは、ゴミだけじゃない」
20年前、俺が5歳の時に、ここで『攻略本』を拾った。
その時から、俺の冒険は始まったのだ。
留守にした一ヶ月の間に、穴から落ちてきた漂流物は、大木の中の柔らかい土がクッションがわりになり、損傷が少ない。
それでも元から壊れていたのか、部品が欠けている家具や、動かない機械がほとんどだ。
「わっふーーっ」
そんな中、ウナギが噛むと音がなるボールを見つける。
こちらでは作れない素材で、触るとプニプニして気持ちいい。
「ヴヴゥ」
「大丈夫、取らない取らない」
ボールを放り投げると、ウナギはしっぽを振りながら嬉しそうに追いかけていく。
「今回は使えるものはなさそうだなぁ」
それでも家具や機械は、バラして部品を持ち帰る。
今は使えないものでも、後から落ちてきた漂流物と組み合わせて、完成することもあるからだ。
「さ、ウナギ、今日はもう帰ろ……」
帰り支度をしている時だった。
大木の枝が風もないのに、ざわっと揺れる。
周りの空気が一瞬、凍り付いたように固まった。
この現象は何度も見たことがあった。
穴から何かが落ちてくる前触れだ。
何が落ちてくるのか?
待ちきれず、大木の中を下から覗き込む。
この子供みたいな行動がなければ、どうなっていたのだろうか。
穴から顔を出したのは、まだ5歳にもならないような小さな幼女だったのだ。
「え、えええっ!?」
つるん、と穴から生まれたように、幼女が落ちてくる。
まるで、そこに来るのが決まっていたかのように。
幼女は俺の腕の中にすっぽりと収まった。