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Folklore ~最強戦士の無双冒険記~  作者: 音々
1章 仲間
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2話 友達

更新滞っててすいません。ぼちぼち再開します。

 長く、ややウェーブのかかった、翠玉(すいぎょく)を連想させるような美しい長髪。向けられる向日葵色(ひまわりいろ)の大きな瞳は、日光を反射して宝石のように輝いている。見ていて目を離せなくなるような整った美貌。女神のような神々しい気配を纏って、彼女は立っていた。


「───」


 お互いの視線がぶつかり合い、沈黙が流れる。


「俺はリオンという。ただの通りすがりだ。」


 やがて我に返ったリオンが口を開く。手を広げて見せて、敵意がないことを示す。


「私はティーナ。ティーナ・エメラルドよ。」


 ティーナと名乗った彼女は、その家名そのままの美しいエメラルドグリーンの髪を揺らして、そう答えた。


 立ち方、身のこなし、リオンの目から見て、彼女の体術の実力は大したものではないと判断。しかし、その身から発せられるエネルギーは並みのものではなく、尋常ならざる力の持ち主であることを主張している。


「ティーナか、良い名前だ。俺はつい最近山奥から出てきたばかりで、外の世界のことを良く知らないんだ。」


 ひとまず、なにかを警戒している様子のティーナに向けて、身ぶり手振りで害意がないことを伝える。事実、リオンには害意はない。ただ単に、突然現れた美少女に好奇心をそそられているだけで。


「私を、捕まえに来たわけじゃないの?」


 そういえば、先程も同じようなことを聞いてきた。ティーナの口ぶりから察するに、どうやら彼女を捕まえようとする輩がいるらしいが、リオンはそうではない。


「違う。本当に単なる通りすがりだ。」


 はっきりと、否定する。そんな堂々とした振る舞いをティーナはどう受け取ったか、推し量ることはできない。しかし、


「そう。ごめんね、おどかしちゃって。」


 漂っていた緊張感がふわりと和らいだ気配。それを感じ取ったリオンはおもむろにティーナの方へと足を踏み出した。一歩、一歩、のしのしと接近していく。ティーナが身を固くするのがわかった。それでも、リオンはその歩みを止めることなく彼女に近づいていく。


「──」


「──」


 近づくリオン、身を固くするティーナ、双方無言。やがてリオンがティーナの正面、手を伸ばせば触れられるようなすぐ近くまで来たとき、


「んじゃ、改めて。俺の名はリオン、宜しくな!」


 笑顔でそう言って右手を差し出した。一方ティーナは戸惑った様子でその差し出された右手を怪訝そうに見つめている。


「握手だ。俺の地元での挨拶さ。同じように手を出してくれ。」


 どうやら握手という文化は一般的ではないらしい。おずおずと手を差し出すティーナ。リオンはその手を素早く握った。


「あ」


 驚いたような声をあげるティーナと、それに構わずぶんぶんと握った手を上下に振るリオン。

 握ったティーナの手は温かく、そしてやはり強大なエネルギーを感じた。


「いやあ、あんまりにも人に会わないから、もしかしたら人間は全滅していて、生き残りは師匠達と俺だけとかいうサバイバル展開かと思ったから安心したよ!」


 言いながら尚も手を上下にぶんぶん振る。ティーナは依然として戸惑った様子だ。


「え、えっと?」


「座ってゆっくり話そう! 聞きたいこと、話したいことがいっぱいある。」


 何せ10年ぶりの新しい出会いだ。それに、この世界での初めての友達ができる予感がして、嬉しさを隠しきれないリオンであった。

 いまだに状況が飲み込めてないティーナの手を引いて、ずんずんと歩きだした。


▼△▼△▼△


 手頃な場所を見つけたリオンは、そこに腰を落ち着けた。


「さて。単刀直入に訊くけど、ティーナは何者なんだ?」


 前置きも何もなしに、リオンはきりだす。


「何者って言われても…私はこの森に住んでいるだけなの。」


 住んでるだけ、とはなんとも奇妙な言い回しだが、そこには触れない。


「森の住民ってわけか。エメラルド一族がみんなでここで暮らしているのか?」


「ううん。私だけ。一人で暮らしてる。」


 伏し目がちに答えるティーナ。なんとも訳ありな雰囲気だ。リオンのように突然この森で生まれたわけではないのなら、何かの事情でこの森で暮らしていることになる。


「そうか。」


 疑問を胸のうちに留めて、短く返すリオン。この世界のことについてなど、色々と聞きたいことはあるが、何から話そうかと悩んでいると、


「リオンこそ何者なの? さっき山奥から出てきたばかりって言ってたけど」


 今度はティーナから質問してきた。確かに、相手のことで知りたいことがあるのはお互い様だ。


「ああ、ここから西へ行ったところにある辺鄙(へんぴ)な山奥で師匠と修行していたんだ」


「修行?」


 ティーナが首をかしげる。それに合わせて綺麗な緑の髪が波打つ。


「体術の修行がほとんどだったな。魔法の練習もしたけど、そっちは全然ダメさ。」


「そうなんだ。強い魔力を感じるから、てっきり魔法が得意なのかと思った。」


 何気なく発せられたティーナの言葉にリオンは目を丸くする。


「強い魔力って、わかるのか?」


「うん、なんとなくだけど。リオンのは今までに感じたことがない雰囲気のを感じる。」


 何でもないように言ってのけるティーナだが、これはリオンにとっては予想外なことだった。


(これ、不良品なんじゃないか?)


 リオンは首から下げたペンダントを見下ろす。ペンダントといっても、見た目はなんの変哲もないリングだ。オシャレ目的ではなく、これはリオンがカローラ先生から貰った、感知阻害の効果が付与されている魔道具だ。


『これで、お主の魔力を隠せるじゃろう。相手はお主の魔力を、人並のものと感知する。』


 要は、リオンの膨大な魔力を隠蔽するための道具だ。それをあっさりと見破られ、リオンのペンダントに対する信用はガタ落ちだ。


「まぁ、魔法に運用するには不向きなんだな、これが。」


 そんな風にお茶を濁す。ペンダントの効力はさておき、


「ティーナからも強い力を感じるぞ。魔法は得意なのか? 」


 ティーナから感じる感覚は、カローラと似たものがあった。

 いや、むしろカローラよりも──


「うん。私、魔法は得意なの」


 言いながらピンと立てた人差し指の上に小さな火の玉を出現させる。


「おお、すげえ!」


 褒められて気を良くしたのか、次はパチンと指をならす。すると、こんどは地面が盛り上がり、椅子の形に変形する。


「器用だな。魔法ならどんなことでもできるものなのか?」


「うん。ある程度のことならできると思う。」


 自慢げに言うでもなく、何でもないように言うティーナ。リオン自身は魔法が使えないので、体感的にティーナの凄さがわからないが、カローラの魔力の扱いと比べて、ティーナは遜色無いものだった。


 その後、ティーナがあれこれと魔法を使って見せたり、リオンの修行時代に習得した魔法の知識をティーナに教えてみたりと、微笑ましい時間をすごした。


 

 


次の更新は明日の19:00です。

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