表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Folklore ~最強戦士の無双冒険記~  作者: 音々
0章 鍛練
1/14

1話 転生

 気がつくと、知らない場所にいた。深い、深い森の中だ。一体どうして自分がここにいるのか、どのようにして来たのか。一切わからない。


「うっ…」


 その広大な自然のなかに、ぽつんと場違いなものが転がっている。


──人間だ。


 先ほどまで死んだようにうごかなかったそれは、何事か呻きながらモゾモゾと動き出した。


「う…あ…」


 先ほどから何事か声を発しようと試みるている人間だったが、喉が渇いているせいか、はたまた()()()()()()()()()口から出てくるのは呻き声だけだった。


「ここは…?」


 ようやくまともに物が言えた頃には、朧気(おぼろげ)ながらも自分の置かれた状況を把握する。


 もっとも、今現在の自分の体勢、というレベルの状況把握だが。


 服は着ていない。どうやら倒れていたらしい自身の体を起こし、回りを見渡す。少々、喉の乾きと空腹を感じる以外に、体の機能に問題はないらしく、すんなりと体が動く。


「──」

 

 見渡すかぎりの緑の世界。360度ぐるりと視線を向けても、眼窩(がんか)に映るのはひたすらに壮大な自然だった。ウネウネと、何かの触手のような木の根が、土に収まりきらなかったのだろうか、地表に露出して地面を多い尽くしている。生き物が通ることが少ないのか、その根を苔が覆っていた。凹凸に富んだ緑の絨毯(じゅうたん)


 森のなかで倒れていても、どこも怪我をした様子がないのは、この苔がベッドのような役割を果たしたのだろう。


 頭上へ目を向ければ、自分を取り囲んでいる木々の高さが良くわかった。天を貫かんばかりに高々と生えていて、葉がうっそうと生い茂っていて、空は見えない。


 呆けたように顔を上に向けたままでいると、聞き覚えのある音が耳に届いていることに気がつく。


「水の音、か?」


 ()の鼓膜が川の流れるような音を捉えた。

 生存本能に突き動かされるまま、とくに何か思うわけでもなく、音のする方向へと歩きだした。


しかし、歩き出してすぐに違和感に気付く。


「俺、小さくね?と、いうか…」


 ほんの数歩とはいえ、歩いたことによって脳に血が回ったためだろうか、だんだんと思考力が戻ってくる。そして、自分がこの得体の知れない場所に来る以前の記憶がおぼろげに、しかしだんだんと鮮明に、脳裏に映った。


「お、俺は…」


 歩き出して感じた自分の体の大きさの違和感。そして先ほどから自分の口から発せられる()()()()()()()()──


「ッ!!」


 ぞくり、と背筋を震わす感覚から逃げるように、全速力で駆け出す。


「何がおきているんだ!!」


 自分の隣を、尋常でない速度で木々が通りすぎていく。


  ──否、尋常でない速度で走る自分の体


 自分でも信じられないほどの脚力、人が走るには悪すぎる足場であっても、なんなく突破する体幹、障害物を捉える驚異的な視力。


 明らかに自分の知っている自分の身体能力と違うという現実を、考えまいと一心不乱に駆け抜ける。


 駆けて、駆けて、駆けて、


 「み、水…。今は、とにかく…」


 森のなかを静かに流れる、小さな川にたどり着いた。川辺に膝をついて水面に目を落とす。恐ろしく、透明度のある水だった。これまで()が見てきた川の中でも、これほどまでに透き通ったものは見たことがなかった。


 そして、()は見る。


──水面に映る、()()()()()()()()()()姿()()


「う、嘘、だろ…!? こんなことって…」


 そこには、全く知らない顔が映っていた。


「なんでだぁぁぁぁぁぁ!!」


 絶叫が、森中に響き渡った。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ