表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

奪い合う二人

スズからは見えないが、激しい光と爆音が何度も聞こえる。


聞こえて、地面が揺れるだけで、ここにはまだ炎も風も届いていない。だけど、漏れ聞こえる音と光で、外がひどいことになっていることが分かる。

外で何が起こっているのだろう。

アイラーテ様を家の中に入れなければと思うのに、恐怖に足がすくむ。彼女も、立ち尽くして動けなくなっているようだ。

それほど、怒りの波動を感じるのだ。

これは、ロン様ではない?


「ふざけるな!ロン!いつから私の番を隠していた?この家の結界を解け!」

「それだけはできませんっ!彼女は私の--っぐ」


大きな言い争う声が途切れた。

アイラーテ様が悲鳴をあげる。

「ロンっ!」

アイラーテ様がなんと、外に一歩踏み出してしまった。

それはいけない。この家の中にいるから安全だというのに。

スズは固まっていた足を必死で動かして彼女にしがみつく。

「ダメです!危険です!」

「放して!~~~~っロン!」

アイラーテ様は、スズよりも体が大きい。そして、竜人に愛されているからか、体力もスズに勝る。

家の中に押しとどめられずに、さらに一歩、外に出てしまう。

途端に突風にあおられる。


見上げると、そこには宙に浮かんだ二つの影。

背中からは、大きな羽を生やして、空中にとどまっている。

片方はロン様だ。もう一人は……シグルト様だ。

二人が争っている様子に、スズは息をのむ。

先日はあんなに仲が良さそうだったのに、今や二人とも傷だらけだ。……いや、シグルト様にはほとんど傷がついていない。ロン様の方は、血がにじんでいるのがこの距離からでも見える。

「家の中に入っていてくれ!」

ロン様が叫ぶ。

「俺の番だ!」

俺の、番。

彼は必死の形相でそう叫んでいる。

ロン様はそれを阻む。

「違います!彼女は私の番です!」

二人の番が同じになるなんて聞いたことは無かった。

そんなこと、尋ねてみたことも無いのだ。もしかしたら、そういうこともあるのかもしれない。

執着心の強い竜人が一人を取り合ったら、どれだけの被害が出るのだろう。


彼らの言い争う声を聞いて、スズはアイラーテ様に向き直る。


「アイラーテ様。私は、何があってもあなたの味方です」


真っ青な顔をしながらも、アイラーテ様はスズに顔を向けてくれる。

スズは、彼女の手を握って、真剣な表情で問う。

「どちらがお好きですか?どちらでも、私はアイラーテ様を応援します」

二人をこのまま争わせるのではなく、アイラーテ様が気持ちを固めてしまえばいいのだ。

最愛の人の言うことならば、竜人だっていうことを聞いてくれるはずだ。

アイラーテ様は目を見開いて、首を横に振る。

「考えるまでもないわ。ロンよ」

それを聞いて、スズはほうっと息を吐く。

言葉に嘘はなかったが、失恋後に主人の夫となった彼とずっと顔を突き合わせるのは勘弁してほしいところだ。

「だったら、家の中に入りましょう。ここは危険です。ロン様が帰っていらっしゃるのを待ちましょう」

アイラーテ様が、唇を噛んで黙ったままこくんと頷いた。

踵を返して家の中に入ろうとした時、ひときわ大きな音がした。


驚いて振り向いて見上げた先には、二人分の影が、高い空から急降下で向かってくる。


「ついに、俺の――!」

「やめろー!」


片方はロン様だ。遠目に見るだけでも赤く染まってひどいけがをしているように見える。

スズはアイラーテ様にしがみつき、どうにかシグルト様から彼女を守れないかと願った。

竜人二人から奪い合われたらアイラーテ様はどうなってしまうだろうか。

何もできない私だけど、盾にくらいは――。

そんな意思を感じ取ったのか、アイラーテ様も、スズに抱き付く。


言葉を発する暇もないうちに、スズとアイラーテ様は引き離された。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ