49話 そういうつじつま合わせっぽい「そう言えば」禁止、な
おれは真犯人、って今は言っちゃいけないんだっけ、真容疑者? つまりおれたちの物語部の樋浦清と、真・世界の真・物語部の真・樋浦清との入れ替わりトリックについて話を続けた。
「ということで、樋浦清はずーっと、多分連続殺人犯の探索をある程度終えてこの部室に戻って来るまで、実は真・樋浦清だったんだ。最後に部室に戻ったとき、まず市川醍醐、お前が先に入って、あとから清だっただろ。そのときにふたりはまた入れ替わったんだな」
おれは、ヤマダの前に置いてある非携帯端末の動画を見ることにした。
でもこれ、よく考えると変じゃん。入れ替わって犯罪犯してたのはそうするとおれたちの清のほうだよね? 第三者の、神的視点で語れるはずの、天使の年野夜見さんだって、新校舎を立花と確認したのは「樋浦清」って言ってるし。でもそこらへんの叙述を、「市川醍醐は、怯えた少女と一緒に新校舎をチェックしはじめた」とか、「真・樋浦清は教室のスイッチを入れた」とかだと、あからさますぎて叙述トリックにならないやん。それってどうなってるの?
ごめん、よく見てなかった、と、もはや天使ではないけど、年野夜見はおれに言った。
神的視点ではあるけど、実は神の視点じゃないんだ、てへ、ということである。
「えーと、どこらへんだったかな。おれたちは胸のところにみんな、携帯端末をぶら下げてて、物語部顧問のヤマダの前にある非携帯端末に探索の動画を送ってたよね。モニターは6分割されてて、ふたつ、つまり樋浦遊久先輩と年野夜見さんの端末からは動画が流れてない。流れているもののひとつは千鳥紋先輩からで、これはぐらぐらしながら校庭から校舎のほうを写している。ふたつはおれを向いている。ひとつはモニターを見ている。あー、あったあった、これだ。部室に戻る前、廊下で清の端末がいったん外されて、またつけ直されてるように見えるね。これは多分、真・清からおれたちの清に持ち主が写ったんだ」
確認を終えたおれは、言い直した。
「ごめん、犯人はおれたちの清のほうで、真・清は無罪。犯行の動機は心の闇。まあ妹を長くやってると、いろいろ貯まるものがあるよね、姉に対して。どうせいくらひどいことをしても、嵐の間、魔時空で起きることはヤマダが神の力でなかったことにできるし」
「わたしはわたしに、おいしいスイカを用意しておくから、と言われて代役を引き受けたんだけど、こんなことになるとは思ってなかったよ」と、真・清は嘘っぽい感じで言った。
「そう言えば、何度か図書室からどちらかの清さんが出たり入ったりしてたのを思い出しました」と、真・市川醍醐も嘘っぽく言った。
「そういうつじつま合わせっぽい「そう言えば」禁止、な、真・市川」と、おれは言った。
結局、誰も本当のことなんか言わないんだよなあ。謎解きミステリーじゃないから。そんなにうまくいくわけないっての。謎解きミステリーだって、ああこのドラマはあと20分あるから、そんなところで出てくるのは偽の真相だよな、って思うし、結末はこれでいいんだろうけど、どうも納得できない、みたいなのはけっこうある。要するに誰でもいいんだよ。被害者以外の誰が犯人であっても。
おれは、電気ポットの中を覗き込み、おれが望んでいたものがそこにあったのに安心した。
青白い両刃の、長さ20センチほどの槍の先のように見える刃には、10センチほどの調理用包丁がついており、刃先を下にして沈んでいた。おれは、あっちっちち、と素早く片手を湯の中に突っ込んで、マジ熱いんで素人は真似しないでください、と思った。
「これが犯罪に使われた凶器だ」と、おれはみんなの前に見せた。
「それは俺の部屋に飾っておいた妖槍・蜻蛉切じゃないか」と、樋浦遊久先輩は言った。
「もうすこしくわしく話を聞かせてください」と、おれは言った。




