46話 さすがにうちの学校でも、本物の刀は持ち込み禁止だよ
「別にスイカ、冷蔵庫にあるやん。何言ってるんだよ清は」と、物語部の部室に戻ってきたおれは、冷蔵庫の中を見ながら物語部の一年生部員である樋浦清を含む一同に言った。
「そんなはずはないよ、わたしが見たときは何もなかったよ」と、清は力強く言った。
「それを証明する人間は、誰がいるんだ? 市川、お前もちゃんと見たのか」と、おれは、おれと同じく物語部の一年生部員で、清と行動を共にしていた市川醍醐に聞いた。
「言われてみると、はい、ぼくは清さんが、ない、って言ったのしか聞いてませんでした」と、市川は言った。
「だろ! だからあったんだよ。そんなことよりスイカ食べよう。冷えてるよ」と、おれは言った。
「いやちょっと待て。そもそも誰がいつ、どうやってスイカ入れたんだよ」と、一般人で物語部のサポーターで頭が悪い(私感)関谷久志は言った。
「これは高度な宇宙人が百万年前に、ウェルカムフルーツとして俺たちに発見されるようにしておいてくれたんだ。それより早くスイカ食べよう」と、首から上は真・世界にある真・物語部の真・樋浦遊久先輩、首から下はおしゃれワンピースのおれたちの物語部の遊久先輩は言った。
「まだ校庭から戻って来てない4人の分も取っておかないといけないから、16等分?」と、一般人で物語部のサポーターで頭がいい(私感)松川志展は言った。
「包丁やナイフは、今はここにはないぞ。この盾代わりに使えないの? 早く早くスイカ」と、遊久先輩(首)&真・遊久先輩(胴体)は言った。
「うむ。真・物語部の剣士、真・年野夜見が来るのを待つとするか」と、元物語部で少女探偵(のはずなんだけど、今のところ特に推理はしていない)のルージュ・ブラン(ルーちゃん)先輩は言った。
「いやー、さすがにうちの学校でも、本物の刀は持ち込み禁止だよ。わたしの矢は、普通の人に当たっても、すこし痛いかなー、ぐらいにしかならないし。切ったスイカ置く紙皿とかないの?」と、真・樋浦清はおしゃれ魔法少女みたいな格好で言った。
「年野さんの魔剣は伸縮自在だし、念じると手元に来て、ときどき美少女にもなるという便利グッズにゃ違いねぇが、モンスターしか斬れねぇのがたまにキズよ。何だったらぼくの手刀でスイカ割るか?」と、真・市川醍醐は言ったが、それは遠慮したい。
「よく考えろ立花備。スイカを切るものは、お前なら知ってるはずだ」と、真・立花備は、おれに言った。
物語部の顧問で教師でもあるヤマダは、部室の奥の窓際の席に座って考えている。多分おれがスイカをなんとかする方法を早く思いつくよう願っているんだろう。ヤマダは神なんだから、とっととスイカ切ってくれよ、とかおれは思ったが、神と顧問の教師は「創造物・生徒の自主性にまかせる」という点で同じなんだろう。
外の豪雨もすこし収まりかけている、というか、強弱がわかるようになってきて、普段は6人いればいっぱいな部室はすでに12人いて、さらに4人加わることになる。おれたちが戻ったときには、立花と清のふたりしかいなくて、すこし涼しすぎるぐらいだった部室は、すぐに暑くなってきていた。
おれは仕方がないので、一生懸命考えた。そして、その真実に気がついたとき、背筋がぞくぞくっとして、夏なのに冷房の効きすぎた映画館で『八甲田山』を見ていた昭和の映画好き(おまけに映画館の観客は数人)みたいな気分になった。
………単に立花が扇風機のスイッチを入れただけだった。おれの背中でその一台が回っていた。3台全部つけなくてもいいのに。
「みんな聞いてくれ。おれには真犯人の見当がついた」と、おれは言った。
「えー、前も同じようなこと言ってなかったっけ?」と、清は言った。
「前に言ったのはただの『犯人』。今度はもう、ふたりぐらいほぼ死んでるみたいなもんだから、ちゃんとした真犯人だ」
「そのようなことはもはやどうでもいい。スイカを切る道具はどこだ」と、ルーちゃん先輩は言った。
この先輩、ひょっとしてただのポンコツ? いや、おれに話させておいて、そういう考えもあるだろう、しかし実はこうだ、なんていう役?




