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物語部員の嘘とその真実(夏休みの火曜日の午後、物語部員が巻き込まれた惨劇について)  作者: るきのまき
午後1時30分~40分 こわい話をする物語部員たち
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4話 ホラー映画の「恐怖の方程式(小中千昭理論)」

「これは、小中千昭『恐怖の作法-ホラー映画の技術-』という本に出てくる「ホラー映画の「恐怖の方程式(小中千昭理論)」をまとめたものね」と、千鳥紋先輩は言ったので、おれはそれを声に出して読んだ。


『A・脚本構造について

 恐怖とは段取りである

 主人公に感情移入をさせる必要はない

 因縁話は少しも怖くない

 文字は忌まわしい

 情報の合致は恐ろしい

 登場人物を物語で殺さない

B・脚本描写について

 イコンの活用

 霊能者をヒロイックに扱ってはならない

 ショッカー場面はアリバイだ

  注:ショッカー場面というのはびっくりする場面で、この本の中では『ジョーズ』の沈没船から見つかるものが例として挙げられている

 幽霊の「見た目」は有り得ない

  注:「見た目」とは人物の主観描写で、要するに「幽霊の視点から見る(主人公とかの)カットを出さない」

 幽霊はどう見えたら怖いのか

 幽霊ナメもやってはならない

  注:「ナメ」とはカメラの置所(視点)で、映画ではありがちの「登場している人物を向かい合わせにして、一方の肩ごしに取る」という描写

 幽霊は喋らない

 恐怖する人間の描写こそ恐怖そのものを生み出す

 つまり、本当に怖いのは幽霊しかないのだ』


「なるほど、小中千昭が語るファンダメンタル・ホラー映画とは、「幽霊がはっきりとは見えず、それを見ている主人公の視点から撮り(主人公側からの肩ナメは問題ない)、幽霊の視点は出さず、恐怖する人間を出す」ということですね」と、おれは言った。

「樋浦姉さんにも、何がこわいか聞いてみるといいわ」と千鳥紋先輩は、途中から本を読むのをやめて、ソファの上で考える人みたいなポーズでおれたちの話を聞いていた遊久先輩を見ながら言った。

「うわーっ、そんなネタを振るのかよー。俺はもう、「ゆうれい」の「ゆう」ぐらいでこわいのに」と、遊久先輩は両耳を押さえるという、おれが思った通りのリアクションをした。「ゆ」ではこわくないんだな。

「でも、円朝全集の分厚い奴、こないだ読んでたじゃないですか」

「ああいうのはいいんだよ。物語だから。これは私の友だちが実際に体験した話なんだけど、という実話っぽい物語はどうもなー。しかし岩波書店、頭がどうかしてるんじゃないのか。なんで圓朝じゃなくて円朝なんだよ。芥川龍之介は竜之介だし。龍は王様で、竜は虫だっつーの」

「まあその話は置いておいて」と言ったところで、清が戻ってきたので、おれはほとんど話が進んでないんだけど、「………………………………………………………………ということでな」で話を続けることにした。

「さっぱりわかんないよ!」と清は言って、しょうがないので年野夜見さんは、千鳥紋先輩が言ったことを話して、タブレットの画面を見せた。

 なるほどー、とか感心している清をしばらく放っておいて、遊久先輩は言った。

「そう言えば、納得できるオチみたいなのがついてる話はあんまり怖くないんじゃないの普通? 岡本綺堂の「西瓜」とか」

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