第6話 模擬戦
東京魔法高等専門学校の教室のひとつ、模擬戦場に1年の火組の面々が集まっている。
「へっ、クロお前ちゃんと来たんだな。負けるのが怖くて来ないかと思ったぜ」
「来なかったり負けたりしたらカノンに殺される」
「負けたりしたらァ?笑わせるな。お前の煙で何ができるってんだよ」
ここでコホン、とカノンが咳払いをして話し始める。先の殺される発言に対してもなにか言いたげだ。
「今回の勝負は私が取り仕切ります。対人戦ではないということで、私が今回の勝負の用意をしました」
カノンが教室の真ん中で説明する。カノンの立つ位置から約5メートル先の台座の上にアルミニウムでできた1辺30センチメートル程の直方体が3つ、等間隔で並んでいる。
「2人にはこのアルミニウムの塊を魔法で溶かしてもらいます」
アルミニウムの燃焼には激しい光を伴うため、全員が目を守るヘンテコなメガネを装着する。
するとカノンは3つ並べたアルミニウムの塊の真ん中に向けて右手を伸ばす。
刹那、カノンの右手から眩い銀色の炎がアルミニウムめがけて解き放たれる。
アルミニウムの塊が白銀の炎に包まれてから約5病後、白い煙がではじめたと思ったら激しい閃光と共にその塊は消滅した。
「こんな感じです」
メガネを外しながらカノンが皆を見る。
「それにしてもカノン、ほんとあんたの炎どうなってるの?」
通常、いや、必ず火属性の魔法は赤色を伴う。これに例外は無いはずだ。
しかしカノンの火はその彼女の美しい髪の色のような白銀色をしている。
火というのは温度によりその色を変える。彼女の実力が高いことは皆が知っていて、その温度が高いから白い、というカノンの説明でクラスは理解しているがその真相は謎である。
「まあまあ、それより勝負を始めちゃいましょう」
リサの疑問をカノンはサッと流す。
そしてリョウとサクヤは5メートル先にアルミニウムの塊を据えて立つ。
「俺はカノンのように5秒とは言わないが10秒で溶かす。お前はそのしょぼい煙で一生アルミニウムを燻製にしてな」
リョウの挑発を軽く受け流し、カノンの開始の合図を待つ。
「先にアルミニウムを溶かしきったほうの勝利とします。それでは始め!」
カノンの澄み切った声による合図とともにリョウが右手から真っ赤な豪炎を放つ。
サクヤはまだ動かない。
リョウの放つ赤い炎が溶かそうかというところでようやくサクヤが動く。
ふぅ、と息を吐くと、右手を出しそして握りしめる。
その瞬間、漆黒の炎がアルミニウムの塊のある位置に出現する。
カノンやリョウのように手から放たれた炎が塊に向かっていったのではない。塊のある位置に忽然と現れたのだ。
そして漆黒の炎が現れると同時、その黒と対比的な白く激しい光とともひアルミニウムの塊が消える。
サクヤのアルミニウムが消滅して数秒後、リョウの方も激しく虚しい光とともに溶け消える。
「なっ、サクヤ、どうゆうことだよ!?」
ショウマが驚き問う。
カノンを除いた全員がありえないという表情を浮かべ固まっている。
「・・・・・・こうなるから俺は魔法を使えないことにしてたんだよ」
「え、黒い炎?どうなって・・・」
リサも衝撃を受けたまま。
リサの白い炎を受け入れるのにも時間のかかった一同がサクヤの見せた禍々しさをも感じさせる黒の炎に理解が追いつかない。
「はは、なんだよ今の。魔法じゃねえ!カノン、なにか細工をしただろう!」
リョウは全く受け入れられずに今のは魔法ではないと主張。
「今のは正真正銘サクの魔法。これが彼の実力」
カノンは淡々と述べる。
「うるせえ!そんなの信じられるわけないだろう!だったらサクヤ、対人の魔法で勝負しやがれ!」
そう言うと同時にリョウは右手から炎をサクヤめがけてぶっぱなす。
「「あぶない!!」」
リサとショウマの声と同時に炎の玉がサクヤを包む。
しかしその火魔法はまるで無効化されたように見え、否、無効化されサクヤの周りから消えうせる。
「火属性を無効化だと!?」
リョウは驚きそしてショウマは少し納得したような顔。
「ああもうめんどくせえ。対人でもなんでもいいからかかってこい。泣いて謝るまで炙ってやる」
サクヤがいよいよキレそうになったところでカノンが動く。
「いい加減にして!!!」
カノンの怒りの叫びとともに2人を白い炎で包む。
「「熱ちっ!!」」
男二人が火に包まれ狼狽える。
「あれ、リョウの火は無効化したのにカノンの火魔法は無効化しねえのか?」
ショウマは先程少し納得しかけたことがまた分からなくなる。
「とにかく勝負はサクの勝ち。詳しいことは後で説明するから一旦この部屋から出ましょう」
カノンは一同を促し退出の準備を始める。
リョウ、リサ、ショウマそれぞれ聞きたいことが山積みになるのであった。
ようやくサクヤの力の片鱗をお見せできました。
ブックマーク、評価ありがとうございます。