第3話 朝の一幕
「ん、ふぁ〜ぁ」
自室のベッドでカノンは目覚める。朝7時を指し鳴り響く目覚まし時計をとめて起き上がり、朝食用の卵は冷蔵庫に何個残っていたかなと考えながら登校の準備をはじめる。カノンの自室、というのは学校から徒歩15分のところにあるマンションの一室である。駅から徒歩3分、築3年、風呂トイレ別、キッチンと10畳の部屋、そして6畳の寝室がある上等な賃貸だ。ここで彼女は一人暮らし。
全ての準備を終えると朝食の準備のために自室のキッチンを通り過ぎた。そして鍵をかけ家(自室)も出てしまう。朝食の準備をしようとしている者の行動ではないが出てすぐ、隣の部屋のインターホンを鳴らす。
「やっぱり今日も出ないか・・・」
カノンは迷いなくその部屋の鍵を開ける。鍵といっても、このマンションの鍵は任意の番号を設定するものとなっており、ワンタッチで鍵をかけることも出来るので、わざわざ鍵を持ち歩く必要が無い。8桁の数字を打ち込むと鍵が自動で開く音が聞こえる。カノンはそのまま部屋へと上がり込んだ。
「サク、早く起きて!学校遅刻しちゃう」
「ん、あと5分」
寝ているサクヤから眠そうな、テンプレまんまの返事が返ってくるがカノンは引かない。
「ほんとに進級できなくなるよ!いいの?」
単位制を導入している東京魔法高等専門学校において入学2ヶ月で留年の危機に瀕している理由は必修科目への出席率の少なさにある。毎日1時間目はクラスごとの必修となっており、その他の自由履修できる講義の中にもいくつか取らなければならない必修のものが存在する。
「わかったわかった今起きる」
サクヤがゆっくり起き上がるのを確認すると、カノンはサクヤの部屋のキッチンへと向かい朝食を作り始める。
「ったく、必修を1時間目に配置するあたり憎らしいよなぁ」
食後のコーヒーを飲みながらサクヤが言う。
「しかも今日の1時間目なんてただのホームルーム」
「必修じゃないからサボっていいってわけじゃないんだから文句言わないの!」
いつものカノンのお説教タイム。サクヤはコーヒーブレイクの時くらい落ち着かせてくれと思うが自業自得だ。
「それに今日のホームルームは魔法戦のセレクションについての大事な話があるんだからね」
「そういえば昨日、風組のヤツらも言ってたなそんなこと」
昨日の昼食前の小さな事件を思い出しながら、ふと昨日の嫌な予感が蘇る。
「ま、まさか!?」
「ふふーん。楽しみにしてなさい」
「頼む。遠慮してくれ」
「嫌です」
即反論に即却下された。
「だいたい俺は魔法戦のこともセレクションのことも何も知らないぞ!」
「それは今日のホームルームで説明されるから」
「そのセレクションとやらに俺を出して何するつもりだ!」
「おしえませーん」
カノンは憎たらしい声を出す。しかしそれに対しサクヤは不覚にも可愛いと思ってしまうのがなんとも悔しい。
(なんとしてもその訳分からんが面倒くさそうなイベントは回避してやる)
(なんとしてもサクをセレクションに出さなきゃ)
それぞれがそれぞれのそして正反対の思いを胸に登校するのだった。
実は作者、大学を留年しております。そんな恥ずかしい道をサクヤにも辿って欲しくないけど仲間を作るのもありかな、とも思い始めているところです笑
この先もどうかお付き合いお願い致します。