表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イベント屋へようこそ ~恋愛のご相談も承ります~  作者: 山之上 舞花
第1章 一目で恋に落ちる春大作戦!
8/22

第2話 案件『君を見つけた』告白の日 その4

◇プランの経緯


増岡君の協力のおかげで、二人の馴れ初めがわかった。結城に上条さんとわり合い仲のいい女子社員を介して、二人の馴れ初めがあっているか確認してもらうように話をさせた。やはり上条さんも卒業の日の出会いで、菱沼氏に一目惚れをしていたことがわかった。


それから、依頼主の社長に途中経過の報告書を送る。菱沼氏は上条さんのことを思っていることは確定だと。上条さんも同じで、二人は両片思いの状態であると。


すぐに社長から連絡が来た。ここで、どう手を打つかの相談だ。


いいところのお嬢様であり婚約者がいる女性に、菱沼氏からのアプローチはないだろう。だから、上条さんには婚約者がいることは否定するようにと、伝えさせた。



しばらく様子を見たけど、菱沼氏からは何もアクションを起こす気配がない様だ。それならば、菱沼氏からの告白のプランAではなくて、上条さんからの告白のプランBに変更するしかないようだ。


上条さんを動かすのは簡単だろう。彼女に危機感を持たせればいいのだから。今の時点で、こちらの協力者はかなり増えた。社長が気にしていることに気がついた営業課の課長が、協力者二号になってくれた。そこから、営業課の協力体制が出来上がってくれたのは、うれしい誤算だった。


さて、それでは彼女が食いつきやすい餌を用意することにしようか。『課長ではなくてその上の部長から、菱沼氏に他社からお見合いの打診があったと、社長に報告がきた。その話を聞いた社長が、菱沼氏はそんなに優秀なのかと興味を持った』という態で、菱沼氏の部下である上条さんに聞いてもらうとしよう。



この話を聞いた上条さんの行動力には、舌を巻くしかなかった。彼女は社長から、菱沼氏に他社のご令嬢とのお見合いの話が来ていて、そのお見合いがうまくいったらそちらの会社に移ることになると聞かされた。


それに対し、いかに菱沼忠興が優秀な人物で、もしお見合いがうまくいって他社に行ってしまったら、どれだけの損失になるかと例を挙げて、お見合いの話を無くすように社長を説得をしたのだ。それだけではなくて、自分が菱沼氏のことを思っていることを打ちあけて、彼とうまくいくように見守ってほしいと言ってのけた。


これで、社長は手を出せなくなってしまった。上条さんがどうしても菱沼氏と結婚したいと言ってくれれば、社長命令で見合いの席を設けようと思っていたのだ。それが見守ることを頼まれた。つまり自分でどうにかするから、黙って見ていろということだった。


社長を黙らせた彼女は、次に自分の同期の女性と、営業事務の女性社員を味方につけた。それから営業課の社員と課長。これを味方につけるのを、菱沼氏に気付かれないようにやってのけたのだ。もともと社長の働きかけで二人のことに協力する体制は営業課に整っていた。だけど、彼らの中には上条さんを好いているやつや、菱沼氏に嫉妬しているやつが少なからずいたはずだ。そいつらにまで協力することを約束させた上条さんは、すごいの一言しかない。


彼らが協力を約束したのは『真摯に菱沼氏のことを思う上条さんの気持ちに打たれたから』と、報告書には書いてあった。


あとはもう波紋が広がるように、上条さんへの協力の輪は広がっていった。乗りに乗った部長が社長の代わりに指揮をとり、いつの間にか告白一大プロジェクトとなって、会社をあげての協力体制が出来あがってしまった。


ここまでくればあとは告白の舞台を整えるだけ。どうせなら二人が出会った春。それもできることなら出会った場所で告白できれば完璧だろう。


幸いなことに営業課では、毎年課の親睦のために花見が開かれていた。それも二人が出会った公園でだった。これを使わない手はないだろう。


ここで授けた策はいたってシンプルなもの。花見の日、とくに告白する時には邪魔者が出ないように、公園内には会社関係の人だけにすること。菱沼氏が顔を覚えていると思われる他の課の人は、公園に余計な人物が入らないように見張る、封鎖班へ。菱沼氏と会ったことがない人は、その家族などと共に普通のお花見家族を演じさせた。


あとは少し少なめにお酒を用意させ、足りない分を菱沼氏と上条さんに買いにいくように仕向ければいい。



結果は大成功で終わったそうだ。上条さんの告白に、菱沼さんも『上条聖子さん、俺も二年前にこの公園で君を見つけました。そして、一目惚れしました。よければ一生共にいることを視野に入れてお付き合いください』と、告白し返して晴れて両想いとなって、カップルが成立した。


このあと、ホテルに移動して毎年行われる優秀社員の表彰式と親睦会に移行した。もちろん二人のカップル成立のお祝いを兼ねているから、主役の二人のところには人が押し寄せて、お酒を次から次へと注いでいったそうだ。菱沼さんは律義にも一口は口をつけていたらしい。


お開きになるころには菱沼さんは酩酊状態で、社長がお祝いに取ってくれていた部屋に二人で泊まったけど、何もなしだったとか。


翌朝、二日酔いで大変だったと、報告書には記載した。


岡本社長。何事もやり過ぎはいけないぞと、一言苦言を書き加えたのは悪くないよな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ