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イベント屋へようこそ ~恋愛のご相談も承ります~  作者: 山之上 舞花
第1章 一目で恋に落ちる春大作戦!
7/22

第2話 案件『君を見つけた』告白の日 その3

◇依頼案件とは


案件 優秀な社員の恋を応援したい


依頼主 サンワ商事 社長 岡本源蔵(おかもとげんぞう)


我が社の優秀な社員で、現在営業の主任をしている菱沼忠興(ひしぬまただおき)君と、その部下の上条聖子(かみじょうせいこ)君はお互いに思い合っているようだ。

なので、この二人の仲を、それとわからないように近づけさせたい。

出来ることならば、最終的には二人が結婚までいくことが望ましい。



渡された依頼文を見た、相馬と結城は一瞬、呆れた顔をした。会社の社長という立場の者の依頼としてはおかしいと思ったのだろう。


「ねえ、社長。これっておかしくないんすか。一社員の恋愛にその会社の社長が、口を出すなんてさ」


相馬は興味がなさそうに言った。結城はもう一度依頼文に目を通してから、口を開いた。


「ということは、依頼に裏があるんですか」


結城の言葉に目を見開いた相馬は、身を乗り出してきた。俺は結城の目を見て言った。


「どうしてそう思ったんだ」

「いかに優秀な社員だからって、社長の立場で結婚まで後押ししようとは考えないですよね。仲人好きでもなければですけど。社長がそう考えたくなったのは、どちらかが自分に近しい者。身内だったと考えたほうが、納得できます」


結城の言葉に俺は笑った。さすが、見所のあるやつだ。


「裏ってわけじゃないぞ。女性社員が社長の親族だったってだけさ」


そう言ったら、結城が嬉しそうに笑った。


「社長、私がやりたいです。いいですか」

「ああ、もちろん」


俺の答えに結城は笑みを深くした。結城は横を向き、相馬に言った。


碧生(あおい)もいい?」

和花菜(わかな)がいいのならな」


二人も納得したようで、よかったと思いながら、俺は二人に説明を始めた。


「この依頼は見てのとおり、二人が結婚を決意するまでがゴールになる。ということは、長期戦を覚悟してもらうことになるぞ」

「ねえ、社長。それはいいのだけど、大学三年の私は何をすればいいわけ」

「さっきも言ったけど、まずは会社説明会に行ってくれ。そこで興味を示したものを、若干名バイトに雇っているんだ。それに入りこんでくれ」


結城は顎に手を当てて考えこんだ。


「それって、話はついているってことでいいんですか」

「まあな。説明会に行くやつが決まったら、名前を知らせることになっているから」

「そうなんですか」


結城はなおも考えこんでいる。一応釘を刺しておくか。


「わかっていると思うけど向こうはうちの会社のものが、この案件の手伝いのために結城を寄こしたと思っているからな。就職先に考えているのなら、ちゃんとそれなりのことをしてこいよ」


相馬と結城は虚を突かれたような顔をした。


「社長、本気で俺たちの就職のことを考えてくれているの?」


探るような相馬の視線に俺は真面目な顔で頷いた。


「もちろんだとも。確かにお前たちは惜しい人材だけど、ここ以外で力を発揮できるなら、それを応援したいさ」


複雑な表情をする相馬に俺は笑って付け加えた。


「まあ、お前らがずっとここにいないほうが、危ない依頼は来なくなるからな」


相馬は憮然とした顔をした。それをスルーして俺は話を進めていった。


「それじゃあ、このイベントの計画を話すぞ。まずは情報収集だ。菱沼忠興と上条聖子が思い合っているにしても、二人の状況がわからないことには話にならないからな。二人のプロフィールはこれだ。どう見ても上条が入社してからしか接点はなさそうだが、意外なところで出会っていたという場合もある。だからまずは徹底的に二人のことを調べていく。そうそう、結城はバイトとしてサンワ商事に行っても、二人に接触するなよ」

「どうしてですか。女同士だから私が上条さんに接触したほうが、いいんじゃないのですか」


結城が不満そうに言った。


「あのな、依頼は二人に気付かれずにことを運んでくれといっているんだぞ。いきなりバイトで入った女の子が、慣れなしく話し掛けてきたら怪しまれるかもしれないだろう」

「ええ~、そんな迂闊なことはしませんよ」

「だったらプロフィールをよく読め。上条さんは結城と違って慎重な性格みたいなんだ。人見知りではなさそうだけど、初対面から馴れ馴れしく話せるタイプじゃない。そういうことも考えて動けよな」


結城にそう言った後、相馬に視線を向けた。


「相馬はもう一つの案件のほうに関わってもらうからな。そちらも基本はこちらと同じだ」


そう言ったら、相馬は嫌そうな顔をした。


「こっちの依頼は浮いた噂の無い兄のことを心配した妹弟からだ」



この案件の依頼を受けたのは四月だった。五月の会社説明会に行った結城は、そのままバイトとして採用された。大学の講義がない木曜と金曜の午後にバイトに入ることが決まったと言っていた。まあ、バイトだからやることはコピー取りや備品の補充などの簡単なことばかりのようだ。


結城は営業課の中でこちらの協力者となった増岡君と仲良くなったようで、相馬がヤキモキしているのが面白い。相馬と結城はいろいろあって恋人としてはつき合っていないそうだ。この事で二人の仲がどう変わっていくのかを見るのが楽しみだ。


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