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イベント屋へようこそ ~恋愛のご相談も承ります~  作者: 山之上 舞花
第2章 夏の恋はクロスオーバー
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第2話 案件『あなたと夏の恋を』その3

◇祭りでのトラブル


聖子の恥ずかしがる様子に、和花菜は軽く眉を寄せてそっと息を吐き出した。


「これじゃあ、彼氏さんも手を出すのをためらうわけだわ」


和花菜の言葉に、聖子は自分の態度に問題があったのかと、今度は顔色を青褪めさせた。


聖子が顔色を変えて悩む様子を見つめていた和花菜は、少し考えてからなんでもないことのように言葉を続けた。


「ところで、その彼とはどこで待ち合わせをしているの?」

「会場に着いたら連絡をくださいと言ってありますけど……」


聖子は手提げからスマホを取り出した。着信を確認すると、数十回入っていた。マナーモードにしたままだったから気がつかなかったようだ。


「大変。気がつかなかったなんて」


聖子はまた顔を青褪めさせながら、慌てて電話をかけようとした。それを和花菜がやんわりとスマホに手を重ねて、画面を隠してしまった。訝し気に見る聖子に和花菜はニッコリと笑いかけた。


「その前にお化粧を直そうか」


言われた聖子は先ほどまで泣いていたので、化粧が崩れて見られた状態じゃないと気がついた。なので、和花菜の指摘に頷いた。


この祭り会場を和花菜は熟知しているみたいで、一番近いトイレまで案内をしてくれた。やはりトイレはかなり混んでいた。十分ほど待って順番がきた。和花菜は用を足すと「外にいる」と言って先に出て行った。聖子も手早くお化粧を直して外に出た。


外に出ると日が傾いてきて、少し暗くなっていた。外で待っていた和花菜が、聖子が出てきたのを見て、ニッコリと笑って言った。


「じゃあ連絡をしてね」


スマホを取り出して菱沼に電話を掛ける聖子。待っていたようにワンコールですぐに菱沼は出た。


『上条さん、どこにいるんだ』


耳に聞こえてきた、怒鳴るような声に聖子は身を竦ませた。


「すみません、わた」


そこまで言ったところで、横から手が伸びてきてスマホを奪われてしまった。


「ちょっと失礼しまーす。聖子さんは、私、結城和花菜と一緒にいますので、ご安心ください。……というかさ、彼女を不安がらせんなよ。聖子さんはしばらく私が預かるから、文句があるのなら、フランクフルトを売っている屋台まで来な。ヒントとして参道の中央当たりの屋台だよ。じゃあね」


和花菜が話している様子を茫然と見ていた聖子は、話し終わって切ってしまった和花菜に、スマホを返されて我に返った。


「何をするの、和花菜さん」

「えー、ちょっとした嫌がらせよ。聖子さんを泣かせたからね」

「で、でも、私が電話に気がつかなったのが悪い……」


言いかけた聖子の顔の前に、和花菜は人差し指を立てて横に振った。


「違うでしょ。先に聖子さんのほうが不安を与えられていたんだから。少しくらい彼に心配させたってバチは当たらないわよ。それよりも、さっきのところに戻りましょう。彼が辿り着いても、聖子さんが居なきゃ意味がないわよ」


歩き出した和花菜の後ろを聖子もついて行った。かなり薄暗くなったところに、あまり灯りの無い屋台の後ろ側を和花菜は歩いて行く。


最初に連れてこられた屋台の裏側に着いた。和花菜は屋台の店主に話してくると言って、聖子から離れていった。聖子は困惑したまま、屋台の向こうの人混みを見つめていた。


「あれ~、こんなところでどうしたのかな~」


すぐ後ろから男の声がして、聖子はビクリとなった。振り向くと三人の男が立っていた。


「もしかして友達に振られたのかな」

「よかったら一緒に祭りを楽しまないかい」


男達はにこりと笑いながら言った。一見爽やかな笑顔に見えたけど、聖子を見る視線に嫌なものが混ざっている気がして、聖子は男達から離れようと一歩下がった。


「あの、すみませんが、待ち合わせの約束をしていまして」


そう答えた時に和花菜が戻ってきた。


「ごめんね~、待たせちゃって。って、あんたたち、なんか用なの」


男達に気がついた和花菜は、尖った声を出した。男達は和花菜の姿を見て、ニヤッと嫌な笑いを浮かべた。


「なんだ~、待ち合わせって女の子じゃん。同性同士じゃつまんないでしょ。一緒に行こうよ」


男の1人が聖子の腕を掴んだ。


「ちょっと、聖子さんの腕を放しなさいよ」


和花菜が声をあげて、聖子の腕を掴んでいる男に詰め寄ろうとした。が、彼女も他の男に腕を掴まれてしまった。


「いいじゃん。そうだ、この後のさ、花火がよく見える穴場があるんだよ。教えてやるから一緒に行こう」

「嫌です。放してください」

「そうよ。放せよ。一緒になんか行くもんか」


聖子と和花菜は男達から逃れようと、掴まれていない方の手で相手の手を外そうとした。聖子達がもがく様子を男達は薄ら笑いを浮かべて見ていた。


「おいおい、傷つくな~。ちょっと一緒に花火を見ようって、誘ってるだけじゃん」

「そうだよ。ねえ、君もさ、そんなに警戒しなくてもいいじゃん。ちょっと楽しむだけだって」


和花菜の腕を掴む男がそう言うと、引っ張って歩き出そうとした。



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