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0、プロローグ

よろしくお願いします。

 世界が震撼した、9.11事件。あり得ない映像が世界中に配信された。建物に飛行機が次々と突っ込み崩壊していく。アメリカの、いや現代社会の象徴たるビル群は跡形もなく更地にされた。世界の人々が想像にしていなかった出来事だった。いや、できることは知っていたはずだ。けれど誰もそれを実行しようなどということは思わなかった。そしてその日を境に世界は変わった。

 事件の主犯が潜むと考えられたイランに対するアメリカの攻撃。そしてかの国は混乱を極めた。9・11事件が発端だとするならば、その混乱が元凶と言えるだろう。混乱に乗じて、開けてはならないふたが開けられたのだ。



 場所はイランの郊外にあった博物館。その土地で出土した貴重な品々を展示し研究していた。その中の一つに、一抱えほどある大きさの箱があった。この土地に伝わる伝統的な装飾がされたその箱は実は出土したものではなかった。遺跡のほんのすぐそばの洞穴に住んでいた老人が持っていたものだった。人々はそれを学術的調査という名目で奪った。老人は叫んだ。


「災厄が訪れるぞ!」


と。

 人々は鼻で笑った。この箱の中にどんな災厄が満ちているのだと。パンドラの箱でもあるまいし、災厄などただの迷信だと言い切った。そして蓋を開けようとした。

 しかしできなかった。大の大人五人係りでも開かなかった箱は、だが壊すわけにもいかずCTスキャンを使って調べてみたが、その中身はようとして分からなかった。

 興味を抱いた他国の調査団のどんなに最新の機械にかけてもすべてエラーとなる。そのあたりにくると皆が畏れ出し、誰も調べようとはしなくなった。ただ美しい箱であったので博物館のメインとして飾った。


 そんな博物館も混乱の極みにあった。貴重品を守ろうとするもの、この騒ぎに乗じて貴重品を盗み出そうとするもの。だがそんなことは些末なことでしかなかった。

 

ドン!


 酷く至近距離に聞こえた砲撃の音に全員の足が止まった。だが次の瞬間我も我もと走り出す。もう博物館の展示品のことなど考えることなどできなかった。みな必死に生きようと出口に急いだ。

 そして二度目の砲撃。今度は最初のものよりもより近くで聞こえた。その衝撃で窓ガラス、そして展示品のガラスが割れた。頭らからガラスをかぶった音が血まみれで倒れる。その様子を恐怖のまなざしで見つめながら踏み越えていく。逃げなれば、逃げなればと脅迫的な思いで急ぐ。


 だが間に合わなかった。


 三度目の砲撃が博物館に当たる。吹き飛ばされ、あり得ない方向に首が曲がる人。がれきに埋まる者。鉄柱に突き刺さる者。

 一瞬で多くの人間の命が奪われた。その空間は死んだものと、未だ息のある死へ向かう者で埋め尽くされた。そして展示されていた貴重品もまた跡形もなく壊れた。


 その壊れたものの中に例の箱もあった。


 あれほど人々が開けることできなかった箱が壊れたのだ。純粋に砲撃の破壊力に叶わなかったのか。

 あるいは別のおぞましい理由か。



 分かっているのは、その箱から何かしらの未知のウィルス、力、そうしたものが世界に拡散されたということだ。箱に封じられていた【何か】は人をかえた。

 それを進化と呼ぶか、突然変異と呼ぶかはもっと先の未来の人間が決めることだ。少なくとも今は【それ】を世界は病と認定した。致死性は酷く低いが治療法は確立していない病気。世界中に広まり、年に百数十人の患者を出す。

 そうした事態を受けて世界が動いた。正確には国際連盟、世界保健機関『WH〇』がこの事態の収束に名乗りを上げた。

 最初の発病者が発見されて五年ほどたっていた。病原菌、感染経路すべてが不明ながらも、原因があの箱なのは間違いなかった。なぜならその箱を調査をした人間がことごとく発病したのだ。現在かの箱は破片が集められ分厚いシェルターで保管されている。

 そしてこの症状と病気に名前が付けられた。


【ジャバルジャロ・シンドローム】


 初めてこの症例を発見した医師がアラビア語圏の人間だったことを受け、アラビア語で『アクアマリン』を意味する『ジャバルジャロ』を関せられたこの症状。日本ではアクアマリン症候群と呼ばれている。それはなぜか。


 この症候群が発病すると目がアクアマリン色に輝くのだ。いや、その症状が顕在化すると、と言った方が正しい。 

 この病に罹患すると何かしらの特別な力を発現できるようになるのだ。ある者は空を自在に飛び、別の者は人の心が読めるようになった。ほんの少し前ならば超能力と呼ばれていただろう。

 力を得たといっても人間の本質は変わらない。その力を悪用しようとするもの出てきた。それに対抗するため、WHOは一つの機関を作った。

 それはジャバルジャロ・シンドロームを発症し症状を認定されたものを「認定能力者」と、認定は受けていないが症状を発症させた人間を「非認定能力者」呼び、その認定能力者の一部に能力者の管理を任せようというものだ。

 世界に散らばる支部を統括するものは四人。彼らは「特別認定能力者」と言われた。世界で最初に認定され、かつもっとも恐ろしい能力と代償を持つ者たち。


 「人間の福祉の為に」


 その言葉を合言葉に、彼らは人知れず世界のために尽力している。



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