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シャケ弁マスター中山田

作者: 灼無戯

中山田は思った。なぜ、シャケ弁は憎たらしいほどに上手いのか、と。

答えを求めて中山田は走った。

力の限り走った。

そして、肉体と精神が分裂して、肉体が限界を超えミンチになった。

中山田はミンチだ。

ミンチになった中山田は、もはや中山田ではない。

ミンチ、ひき肉、駄肉となった。

中山田という個体情報は一切この世界から消え去った。

苦悩する中山田は、苦悩がなくなった。

逆説的な解決方法かもしれないが、たしかに解決された。疑問を抱くことさえ、なくなればこの世界は常に、一定の可能性の範疇に留まる、つまらない、そうひどくつまらない肥溜めだ。

サラダボウルとか、坩堝だとかそんなカオス的な感覚はなく。

定説と、ある一定の市民に与えられた論理が物理的な世界となって現出する。

物理的な閉塞空間は、やがて「肉体的」、そう肉体的な制約をも課す。

空間の連続性だとか、精神の分岐、いや進化だとか、そんな多重なものは一切の迷いがなくなれば消え去る。

中山田は、中山田を捨て去ることで中山田的なすべてを受け入れて、そして永遠になる。

観測された中山田がAだとして、観測する中山田はB、もしくはA’となる。

ここで、中山田を分割する。

Aとしての中山田を中山とし、B、もしくはA'の中山田を山田とする。

中山は、山田に観測される。

いついかなるときも、一部の隙もなく山田は中山を補足し、記録する。

膨大な記録、人生?という長いテープ上の渦に、中山田を中山田と判断することができる粒子が、1μg程度でも存在するのならば、観測は成功だ。

失敗しない人間記録というものが、もしこの世の中にあるのだとしたならば、それはきっと後世の捏造、憂いだ。

邪悪なる魂をもった、そう恐ろしいほどのエゴイストが、ソレを仕掛けてくるに違いない。

単純な旋律を、そう何度でも何回でも、永遠?と思わさる程度に聞かせ人格を崩壊させてくる。

奴らは、赤い。赤いのだ。赤いものが敵だと、昔、口々に言った老害は死兵で亡霊だ。

終わってしまったモノは、どんなにあがこうと現在に価値を与える、未来をつくることはできない。

未来は、確定的に、漸進的に、そして浮遊する、粒子だ。

ある一定の周期で巡る、血のような循環が未来だ。

過去は未来ではないが、未来は過去になる。

固定、測定、観測された未来が、過去だ。

過去にいる人々が多い世の中では、停滞しかおこらない。

ゆえに、滅びる。



中山田は、ハムカツに大量のケチャップをかけた。

ハムカツは肉そのもの。受肉したものだとして、ケチャップが血で、未来であるならそれを食らう中山田は忘却の王だ。

録音された、簡単なものが、流れだすあふれだす源流が、中山田。


中山田に未来はなかった。


選択肢はあった。しかし、忘却の彼方にあった。忘れなければ行きられない中山田は、選択肢を得られない。

選択肢の与えられない世界は、存在しない世界だ。

消えることが肯定ならば、死ぬことは否定になるのだろうか。

いや、それはありえない。

死は、万物に等しく訪れる予定の終末。

結末は、単純な世界の崩壊かもしれないが、人類と呼ばれている者たちがどの程度生き残ることができるのだろうか。



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