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リクトの資質

設定回です。

神様、俺が一体何をしたと言うのでしょうか。


ルスラさんに衝撃の事実を伝えられたあと、来訪者のくせに一般人と変わらない、いやそれ以下の俺は与えられた部屋に引きこもって天井の木目の数を数えていた。

このまま寝転がっていてもどうしようもない事は分かっているのだが、あんな事を聞かされるとさすがに何もする気にならない。

元の世界に帰るためには、あの樹海の中を調査しに行くしかないが、このステータスじゃ樹海どころか街から出たら死ぬと言われてしまった。


「お先真っ暗だな……」


とはいえ木目を数えるのも飽きてきたので、ルスラさんが置いていった書類に手を伸ばした。

来訪者対応マニュアルと書かれたその書類の束にぼーっと目を通す。

それにしても、マニュアルができるほど異世界人が落ちてきてるのか。

ぺらぺらとページをめくっていると、一つの情報に目が止まる。


『ステータスについて

 ステータスはその人の素質を表したものである。

 また、レベルアップする事でその時点での経験を元にステータスは再編される。

 魔法の経験を積んだものは魔法力が、己の肉体を鍛えたものは攻撃力が上昇する、といったように


読んだ感想を率直に言うならば、ゲームみたいだなと思った。

そして、俺にとって重要な一節を発見する。


『同じ経験を積んでもレベルアップであがるステータスは少なくなっていく』


ゆっくりと、止まっていた思考が動き出した。


「これ、さっきルスラさんが言っていたこととちょっと違うよな」


実は、自分がポンコツだという事実をつきつけられたあと、俺はルスラさんに一つ質問をしていた。

そのときの会話をはっきりと思い出す。


『あの、でも俺もレベルさえ上げればそれなりにステータスは上がるんですよね』


『上がることには上がる。ただ、レベルアップであがるステータスは幼少期のほうが多い。だから、君の年からレベルをあげてもあまりステータスは上がらないんだ。実際、歴代の来訪者の方たちは強力なスキルは持っていても、総じてステータスは低かったからな』


その会話でさらに死体蹴りを食らったわけだが、今はそれが一つの希望になっていた。

一つの仮説をたてた俺は、改めて自分のステータスカードを見る。

ルスラさん曰く生まれたての赤子と同等という自分のステータスカードを。


「このステータス、おかしくないか?」


だってどう考えても赤子とある程度育った俺のステータスが同等なわけがないだろう。

例えば今目の前にある机。

俺は難なく運べるが、赤子が持ち上げることはまず不可能。


「ステータスってのは、肉体そのものの素質を表してるわけじゃないのか」


となるとこのステータスは、ゲームでいうバフ効果のような物なんじゃないだろうか。

だけどそうなると次の疑問が湧いてくる。

なぜ、ステータスは年を重ねるにつれて上がりづらくなるのか。

もし俺の仮説が正しいならば肉体は関係のないはずなのに。

そこでもう一つ疑問に思っていたことがのっていないか、来訪者対応マニュアルを読み漁った。


「あった!」


目当ての物をみつけ、そして予想通りのことが書かれていたことに俺は歓喜する。


『レベルアップについて。

 レベルアップは、生物が死に際に放つ命力を集め、一定値溜まることによって行われる。

 また、生物の死骸にも多少命力が残っているため、食事を行うことでもレベルアップが可能である』


ルスラさんの言っていた通り、近所の子供が俺より強いとしよう。

ということは、間違いなくレベルアップを経ているわけだ。

だけどもし生物を倒さなきゃレベルアップができないのなら、まだ幼い子供のレベルが1でないのはおかしい。

ならば生物を倒さなくてもレベルが上がる方法があるはずだ。


「食事か、なるほどね。それならある程度育った子供はみんなある程度レベルが上がってるわけだ」


自分の仮説の裏付けができた俺は、思わずこみ上げてきた笑いをこぼす。

つまり、ただ生きているだけでもレベルは強制的に上がってしまう。

だから、実際には高レベルになるにつれてステータスが上がりにくくなっているだけなのに、あたかも年齢が高くなると錯覚する。

こんなこと簡単に気がつきそうなものだが、それを邪魔しているのは来訪者の存在だ。

一定以上の年齢でレベル1という本来ありえない存在がありえてしまい、そして彼らが揃いも揃って反則スキルを携えていたせいで年齢が高いとステータスは上がりにくいんだと認識したのだろう。

だって反則スキルなんてもってたらそれ使ってモンスター虐殺して一気にレベルをあげられる。

そんなことをすれば、経験なんて積まれるはずもないから、ステータスだってあまり上がらない。

もっとも、スキルに物を言わせることができた彼らはそんなことを気にする必要もなかったのだろう。

それに、生きるだけで強制的にレベルが上がるここの住民にはそんな事はどっちでも同じだ。

彼らにとって、一定年齢をすぎるとステータスが上がりづらくなる事にかわりはないのだから。


だけど俺は違う。


俺はこの年齢になってなおレベルが低いという、間違いなく来訪者だけが持ち得るとっておきの資質をもっていることになる。


「それなら、やることは一つだ!」


もしかしたら俺の仮説は間違っているかもしれない。

やるだけ無駄なのかもしれないが、やってみる価値はある。

やる気が湧いてきた俺は、意を決してルスラさんの元へ向かった。


屋敷の人にルスラさんの部屋を聞いて、彼女の部屋へ訪れる。

急に訪ねてきた俺をみて、不思議そうな顔をするルスラさんに、俺は頭をさげてお願いした。


「ルスラさんに頼みがあります!俺を、ぼっこぼこにしてくれませんか!」


「えっ。いや、なんでも協力するとは言ったが、そういうのはちょっと……」


テンションがあがって勢い余ったおれは、恥ずかしそうに目線をそらすルスラさんにドン引きされていた。


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