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プロローグ

俺は、真っ暗な視界の中でパニックに陥っていた。

つい数瞬前まで普通に道路を歩いていたはずなのに、急に浮遊感を感じたと思ったらいきなり視界が真っ暗になったのだ。

最初はマンホールの蓋でも空いていたのかと思ったが、それにしては明らかに落下時間が長い。

自分が落ちたと思われる穴も、もはや遥か遠くにあり白い小さな点にしか見えない。

そして、ついにその白い点も見えなくなり、視界は完全に闇に包まれてしまった。

今自分がまだ落ち続けているのかどうかもわからず、恐怖で頭がおかしくなりそうだ。

気が狂いそうになるほどの恐怖を抑えて、何かないかと辺りを見回していると、視線の先に白い点を見つける。

そこに向かって必死に手を伸ばしていると、だんだんと白い点が大きくなってきた。

そしてついに白い光の目の前までたどり着き、視界が光に包まれる。


「へぶっ……!」


勢いよく光を抜けた先には巨大な土壁があり、そこに俺は思いっきり顔をぶつけてしまった。

衝撃と共に急激に体から力が抜け吸いつけられるように土壁に体が張り付いていく。

ようやくこれが土壁ではなく地面だということに気がつき、そこで再び意識が暗闇に取り込まれていった。




「……どこだここ」


目がさめると、知らない天井でした。

はっきりしない意識のまま、今自分が置かれている状況を確認しようと体を起こす。

どうやら首を痛めたようで、頭を動かすたびにずきずきと痛みが走る。


「随分広い部屋だな」


まるで旅館のようなその部屋は、質素ながらも部屋は広く置かれている家具も立派な物だ。

見覚えのない部屋に、きょろきょろと室内を見渡していると、外から部屋の扉が開かれる。


「おや、起きたようだな」


部屋の中に入ってきたのは、腰まで銀の髪を伸ばし、腰に二本の剣を帯びた女性だった。

その現実離れした美貌に、思わず言葉を失う。


「どこか体に痛むところはないか?」


心配そうに顔を覗き込んでくる彼女に、女性慣れしていない俺はつい顔を背けてしまった。


「首が少し痛むくらいですかね。……あの、あなたは?」


「先に自己紹介をするべきだったな。私はルスラ・フォンデルン。この地の領主であるウェールズ家に仕える騎士だ。今は君の保護を命ぜられている」


領主や騎士という現実世界ではおよそ聞くことがない言葉に、つい訝しげな顔をしてしまう。

容姿だって、日常生活では絶対見ることがない格好をしているし。


「私の格好が珍しいか?」


そんな俺の内心を見透かしたような質問に頷いて答えると、ルスラさんはふむといって手に持っていた分厚い書類の束に目を通す。


「君を助けた街の者たちの話と、今の反応を見るにやはり来訪者で間違いないようだな」


そういうとルスラさんは俺を安心させるような笑みを浮かべた。


「きっと不安でいっぱいだろう。大丈夫、私は君の味方だ。君が今知りたがっているだろう事も、幾つかは答えられるだろう。だがその前に、よければ名前をおしえてくれないか?」


そう言われても信用するか判断できるほどの情報がないが、とりあえず悪い人ではなさそうなので自己紹介をする。


「鈴木陸斗です。えっと、よろしくお願いしますルスラさん」


名乗るだけだとそっけないかと思った俺は、おずおずとルスラさんに向かって手を差し出す。

それを見たルスラさんも、嬉しそうに笑って手を握り返してくれた。


「あぁよろしく、リクト君。そしてようこそ、私たちの世界へ」


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