道端のレオンハート
そいつは汚い猫で茶色の毛をボサボサにのばしている。ライオンみたいな恰好だ。一日中ゴロゴロしている所はまさにあたしのイメージの中のライオンだった。
「ようよう、ライオン」
見かける度に話しかけるのに全くこっちを見やがらない。それにそいつはフェンスの向こうにいやがるから撫でることも出来やしない。汚いから触りたくもないのだが、とりあえずあたしはスマホのカメラでそいつを撮る。
「いいのか?ライオン?写真撮っちゃうぞ?」
カシャカシャ撮るが見向きもしない。
「おーい?ライオンさん?嫌がらないの?」
嫌がらせたいワケでもないけれど、リアクションが欲しいわけで、反応してくれないとろくな写真も撮れないし。
ため息一つついてスマホをしまう。
「じゃあね」ライオンさん。
もう少し愛想よくしろとは言わないけれど。
とりあえずあたしは先を急がないといけないんだった。
「遅刻かなー」と呟いて。