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工場勤務のなにが悪いんだ!

とりあえず、俺たちの目標は決まった。

卒業式後にある競馬だ。


それまでの2ヶ月の間、俺は軍資金稼ぎをすることにした。

 と、いっても魔法の小槌を振って金を手に入れたわけではない。

俺たちの地元には夏休みや冬休みのまとまった休みの日に中学生でも雇ってくれる工場があった。

俺は、そこで働いた。

作業は荷物運びや仕分けといったものだ。そこで、俺は一日5000円、週6で2ヶ月間働いて20万以上を稼いだ。

ちなみに、この当時は普通に週6勤務だった。学校でもようやく第2土曜日が休みになった頃だったし、これからしばらくして第2、第4土曜日が休みになり、完全週休2日になるのはもうしばらく先のことだった。


工場の人たちは、停学を喰らっている俺に対して好意的だった。

金丸が嫌われているということもあるし、それ以上に俺に同情してくれたからだろう。


工場で働いて2ヶ月が経った最終日、俺は社長に呼ばれた。

まず、社長は俺に現金入りの給料袋を渡した後、深く頭を下げた。


「源次くん、すまない。本当だったらこのままここの正社員にしてあげるって手もあったんだが……」


 俺は事情を察した。おそらく、俺がここで働いていることを知った金丸が俺を首にするように手を回したんだろう。

それでも、途中で俺を切らずに約束の2ヶ月まで雇ってくれたことに俺には感謝しかなかった。


「お気になさらず。こういっちゃなんだけど、俺、就職するつもりはなかったから」


 社長は、一度自身の顔を撫でた。


「源次くん、これからどうするの?」


「実は厳密に決めてないんですよね」


「あんまり悲観しないことだよ。ここの工員も高校中退した人間とかいるしね。それでもちゃんと生きているんだから」


「ええ。わかってますよ」


 世の勝ち組様から言わせれば工場勤務というだけで「悲惨」ということになりそうだが、そこで働いて生きている人間からするなら大きなお世話だ。

ぶっちゃけ給料安いけどよっぽどのことがなければ毎日定時上がりできるしな。


「もし、進学をしたいなら相談に乗るよ。高校浪人という手もあるし、定時制もある。金丸の目が厳しいなら他県の高校という手もあるしね」


「ありがたいけど、今のところ進学は考えていません。今の状況、客観的に見れば不幸ってことになるのかもしれないけど、せっかく人と違う生き方をすることになったんだから、しばらくは楽しもうと思っているんですよ」


「うん、そういった考えを持っているなら大丈夫だ。長い人生の中で、たかだか数年自分の好きに生きるくらいどうってことないからね」


「うん、そう言ってもらえると救われます」


 世の中には新卒で大手に就職できないと一生不幸になると思っている人もいるけどね。


俺は、頭を下げて工場を後にした。


ちょっとだけ魔法の話をしておこう。


俺が手に入れた魔法『フラッシュ』は、びっくりするほど使えなかった。

だって、指先がコンマ1秒ほどピカッて光るだけなんだもの。

しかも、魔力はRPGでいうMPマジックポイントも兼ねているようで、一日に2回(だいたい半日で回復する)だけしか使えないし。

当然連続使用は無理。

とりあえずハズレを引いたってのが悔しいので、俺は色々やってみた。

と、いっても一日2回。便座に腰掛けてるちょっとした時間のみだ。


日課としての魔法使用は、2週間ほどで変化が来た。

ちょっとだけ長く光らせられるようになったのと、指先から離れて光らせることができるようになったのだ。

といっても発火作用もないし、光らせるだけであることにはかわらなかったけど。

ステータスを見ると、魔力が2になっていた。


俺は、日課を続けた。といっても、一日2秒が4秒になっただけだけだ。


それからさらに1ヶ月も経つと、魔力が3になった。

今度は、割と使える変化が起こった。

……ガキの悪戯レベルで、という注釈が必要だが。

今度は、射程範囲が伸びたのと、光を弱めて使えるようになったのだ。

可能な限り弱めて使うと、光は見えなくなる。だがこれはあくまで人間の視覚で、であり、光は見えないままで存在するようだった。


妹ちゃんで実検した。


ソファで寛いでいる妹ちゃんの顔前で発光させる。

すると妹ちゃんはソファから飛び跳ねてきょろきょろしだしたのだ。


「どうかしたか?」


 さりげなく声をかける俺。


「え? えっと……、虫?」


「虫がいたのか? 今冬だぞ」


「わかんない。なんかそんな気がしたんだけど……」


「お菓子を喰い散らかしてるからだろ。後ででいいから掃除しろよ」


 俺はお徳用袋菓子が乗っているテーブルを指差した。

すると、妹ちゃんはしもぶくれ気味の頬を思いっきり膨らませた。

この頃は普通に可愛かったのになあ。

将来、あんな風に擦れちゃうんだよなあ。


「源ちゃんに言われたくない。ていうか余裕ありすぎ。高校どうすんの?」


「あ~、この部屋は小うるさい虫が多いな。退散退散!」


 俺はなおもぎゃんぎゃん言ってくる妹ちゃんから逃げて部屋に引っ込んだ。



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