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まあ、気持ちはわかるけどさ

 非常階段。

素行のよろしくない輩の溜まり場だった場所だ。端っこのほうを見ればそれを証明するように煙草の吸いカスなんかが落ちている。

幸いにして今はそこにいるのは俺たち3人だけ。

俺は、冷たい階段に腰を付けた。


「……んで、どうする?」


「どうする、とは?」


「いや、本気でわかんねえ。とりあえず怪しいってことになっている占い師を探すか?」


「探してどうすんだ?」


「……、元の時代に戻してもらう?」


「まあ、待って。とりあえず落ち着こう」


 そう言ったのは立花雄平だ。


「率直に聞くけど、元の2013年に戻りたいか?」


 俺も、雅彦も、答えなかった。


「とりあえず、俺は戻りたくはない。負け組とかどうとか言うと源次が文句を言うかもしれないけど、俺たち、うまくいってなかったのは事実じゃん」


「結局、どうするんだよ」


「だから、これはチャンスなんじゃないかってことだよ。人生リトライの。もう一回人生やり直せるんじゃないかってチャンスだよ」


「……そうかもな」


 同意したのは雅彦だ。


「別に、この時代をもう一度生きたって俺たちに不都合はないんだ。過去を忘れてもう一度やり直すってのも『有り』だよな」


 俺はため息を吐いた。

こいつら、こんなに前向きだったのか? それとも肉体が若返った影響を受けているのか?

どっちにしても、俺たちはなんでタイムスリップしたのかはわからない状態だ。ひょっとしたら今晩寝て目が覚めたら元に戻っているってこともあり得るのだ。

だから、俺は不確定性を排除するためにも女占い師を探すべきだと思うが、どうやらこの2人に言っても無駄のようだった。


「……まあ、女占い師を探すのはひとりでもできるか」


 俺にしても、もし人生やり直せると考えてわくわくしないと言ったら嘘になる。

俺も、こいつらと同じように今の状況を前向きに考えるか、そう思ったときだった。



階段を上ってくる人影があった。

男6人に女3人、いわゆるリア充グループだ。当時はそんな言葉なかったけど。


その連中を見て、雄平の顔色が変わった。



立花雄平。


高校はサッカーのスポーツ推薦で進学。

大学は誰でも知っている準一流といえるようなところに浪人もせずに進学。

就職も2部上場の大手に決まり、23歳で幼馴染と結婚。

彼の人生は順風満帆だった。

25歳までは。


雄平は20歳の成人式で今まで疎遠になっていた幼馴染と再会し、それから3年の交際を得て結婚した。

この幼馴染、中学高校と俺たちの同級生と付き合っていて、高3の時に浮気されて振られている。

その後に雄平と付き合って結婚することになるのだが、雄平はこの女にこっ酷く裏切られることになる。

まあ、不倫していたわけだ。それも以前に振られた男に。

雄平は激怒した。

有責での離婚に慰謝料請求、不倫相手への制裁。

それらを実行しようとして、雄平は、あることに気付いた。


周りに味方が誰もいないことに。


不倫相手の男(名前は金丸慎也という)の父親が、国会議員だったからだ。ちなみこの男も28歳の時に地元から立候補して当選している。俺はこいつには入れなかったが。

いわゆる女性保護団体なる連中が集団で雄平の家に押しかけ、「空気を読んだ」会社はあっさりと雄平の首を切った。

さらには話し合いの時の軽い接触を「傷害」と見做され、雄平はDV男として多額の慰謝料を逆に請求される立場になってしまった。


周りは雄平が悪くないことは知っていた。

だが、だからといって雄平を助けられるかとは別問題だ。


……まあ、雄平を不幸のどん底に叩き落した不倫した元妻と不倫相手が18年前の姿でいちゃついているわけだ。


「悪い。過去を忘れて、なんて言ったけど俺には無理だ」


「え~っと、雄平。気持ちはものすごくわかるけど、あいつらは未来のあいつらじゃないわけで」


「ああ。あああ、わかってる、でもでもそれでもも俺はここからはじめないととと」


 なんか呂律が回ってないし。

俺は、一応雄平を止めようとした。

が、雄平は俺の手を振りほどき、一直線にそいつらに向かって走っていった。


「おい、源次。どうするんだ?」


「どうしようもねえだろ、もう」


 雄平は未来の不倫相手に思い切り飛び蹴りをかました。そのまま馬乗りになり殴打を繰り返す。

周りのリア充連中はあまりの事態にぽっか~んとしたままだったが、やがて女のひとりが悲鳴を上げて我に帰った。

なにやら訳のわからないことを言っている雄平を不倫相手から引っぺがし、3人がかりで羽交い絞めにする。

金丸は切った唇を撫でながらゆっくりと立ち上がった。


「どういうつもりだ、立花」


「うるせえ! ぉぉぉおまえだけは絶対に許さないぃぃぃ!」


 なおも泣き喚く雄平にリア充軍団は奇異な眼差しを向けていたが、やがて金丸は雄平の鳩尾に拳を叩きこんで黙らせた。


それからはリンチだった。

雄平は暴れるが数人かかりで押さえられては歯向かうことすらできなかった。


「ど、どうするんだよ、源次」


「……まあ、一般的には自業自得なんだろうけど、俺たちは雄平の事情を知ってるしなぁ。それに……」


「それに?」


「俺、金丸のことが昔から嫌いだったんだよ」


 俺はそれだけ言って、ゆっくりとリンチ現場に向かった。

ヒステリックに雄平を殴り続ける金丸の肩に手を置く。

振り返った瞬間、右の拳で金丸の前歯を叩き折ってやった。



 俺が注目を集めている隙に雅彦は雄平を取り押さえているやつらに飛び掛る。

自由になった雄平は口を押さえて蹲っている金丸になにやらわめき声を上げながら体当たりをかました。


うん、まあ、阿鼻叫喚だわな。

 雄平は金丸をたこ殴りにして、俺と雅彦はそれを邪魔されないように他の野球部員をけん制する。

それは、厳つい体育教師が俺たちを止めにくるまで続いた。



―友情ポイント5000点を獲得しました。

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