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第一話 初登場ですよ、魔王様?!

お久しぶりです、ちーさんです!


ちょっとモンスター愛が爆発したので書いてしまいました。

それでは、第一話です。


勇者と魔王。


善と悪。光と闇。互いに相反する存在。


古来より二つは相容れない存在とされ、数々の歴史もそれを証明してきた。

両者の争いは血と血で争うものがほとんどだった。

例えば魔王以下その眷属による「人間の侵略に対する防衛」が行われば、今度は勇者や人間が「侵略してきた魔王軍の撃退」を行うといった終わりの見えない争いが続いていた。



だが、その不毛な争いは意外な形で終わりを迎える。

魔王による人間殲滅でもなく、勇者による魔王討伐でもなく、両者の和解という形で……



しかし、争いそのものが無くなったわけではない。言うなれば、両者が殺し合う争いはなくなったのだ。



これが血を流さずに両者の権益を掛けて戦う「安全保障戦争」通称:保戦の始まりである。

今から三千年前のことだった。










とある城内の一室、そこは戦場のような張りつめた空気が流れていた。机に座っている誰もが話さず微動だにせず、俯いている。



そんな空気の中、一際小さな影が木槌を振り下ろし話し始める。正直小さすぎて机からは帽子しかみえない。ぴょこぴょこと小刻みに帽子が動く様子は笑いを誘うが、この場にいる誰もが気にしていない様子である。

いや、たった一人王座に座っている人物だけは苛々した様子でそれを眺めていた。



「これより、定例報告会を行う。報告の前に偉大なる我らが王で在らせられます、第五十代目魔王リデア・エステリオ陛下から「長い!」……陛下、まだ儂は最後まで話しておりませぬ!」

「うるさいぞ、じい。お前は背だけではなく、器も小さいのか。」


罵声ともに放たれた小さめの魔力弾が額に当たる。当たり所が良かったのか、小さい影は声にならない声を上げゴロゴロと転げまわっている。

明らかに痛みだけではない荒い鼻息と時々「陛下ぁ……、じいは興奮しますぞ!!」という叫び声が聞こえるのは、誰も気にしていない。


ちょっと被虐趣味な小さい影の名はシャジ・ラウザウ(種族:エルフ♂)。政を任せたら右に出るものはいないとまで言われている。

こんな醜態を晒してはいる人物が、この国の政一切を取り仕切っているのだから人は見た目によらないものである。



その様子をとても冷めた目で見ながら、ぴょんと座っていた王座から豪快に飛び降りてくる影。


意思の強さを表すように吊り上った眉、きゅっと締まった腰、すらりと伸びた足。美しい容姿より何より目を引くのが、肉食獣のように鋭い赤い瞳と艶やかな黒髪から生えている角だった。



彼女こそが魔族唯一の王、魔王リデア・エステリオである。

容姿こそ美しいが、戦になれば熟練の戦士も一撃で倒してしまう強さは正に「魔王」と呼ぶのに相応しかった。



まだ転げているシャジを足でどけ、椅子に座るリデア。それにまた興奮したシャジが叫んでいるが気にせず話を始める。


「さて、この変態が言っていたがこれより報告会を始める。では第一軍団から報告を始めよ。」

「はっ。まず……」


各々の軍団長がこの前にあった保戦の損害を含めた成果を報告していく。勿論、その際魔王陛下にきっちり良い所をアピールすることも忘れない。

魔王の一声で給料は勿論のこと、自分の軍団を解散させられることもある。またその逆に働きによっては陛下直々に賞与を貰えることもある。

いかにシャジが政全般を取り仕切っているとはいえ、最終決定権は魔王にある。全ては魔王、リデアの意のままなのだ。


軍団長は実に魔王軍らしく、様々な種族がそろっていた。獣の容姿に近い獣人や蝙蝠のような翼が生えた魔族などその数十二。

彼らは皆魔王軍直轄の団長たちである。それぞれが多種多様な能力を持つ選りすぐりの戦士たちだった。


容姿も能力も個性も強烈かつ纏まりの無い彼らの忠誠を集めているリデアは、間違いなく歴代魔王の中でも最高の魔王だった。

血を血で争っていた時代でもこれほどまでの人材が集まっていたことはほとんどない。




そうして報告は順調に進み、最後の第十二軍団の番になる。

「第十二軍団長、報告を」

「はっ…」


今まではそれぞれの成果に驚きの声や悔しげな呻き声が聞こえていたが、最後の人物が立ち報告を始めると室内から堪え切れないように笑い声が漏れ出す。

だが、軍団長は気にせず、報告を続ける。

これまでの軍団と違い、その成果は芳しくない。今回に限らず、前回も前々回もまたその前も成果は良いといえるものでは無かった。


「まったく、流石ですな十二軍団は。」

「ああ、我等にはとても真似できない。」


数人の団長たちから明らかな侮蔑をぶつけられても、軍団長は困ったように笑うだけで反論はしなかった。

リデアが苛々しているのに全然気づかず、その反応でさらに一部の団長の笑い声が室内にあふれる。

その横ではシャジが諦めたようにため息を吐いていた。



堅苦しかった雰囲気が一気に緩む。嘲りを含んだその様子についにリデアは堪え切れず、かなり強く机を叩く。


「静かにせんか!!馬鹿者どもが!」

よほど興奮しているのか、力加減を間違えたらしく叩きつけた所から放射状にひびが入る。机の惨状に何より、リデアの様子に皆青ざめ一斉に口を閉ざす。

転がっていたシャジだけは、やれやれとため息をを吐いていた。

静かになったことに満足したのか、最後の人物に話を続けるように促す。


「悪かったな、十二軍団団長。いや、イザ・グーアル団長。」

「大丈夫です、慣れてますから。」


ははは、と困ったように笑う団長。彼こそが十二軍団最弱の団長、イザ・グーアル(種族:スライム♂)であった。

その態度に苛立ったのか、また同じ団長たちから怒号が飛ぶ。


「貴様っ、陛下に失礼だぞ!」

「最弱のスライムのくせにっ……」



「スライムのくせにだと……?」

浴びせられた罵声に反応したのは当事者のイザではなく、魔王のリデアだった。

あちゃー、と目を手で覆いながら天を仰ぐシャジとイザ。

他の団長たちも苦笑いを隠せず、同情を込めた視線を数人の団長に向ける。




「いい加減にしろよ、貴様ら……」

ゆらりと立ち上がるリデア。体中から見て分かるほどの魔力が立ち上る。

殺意を込めた視線と魔力に向けられている団長たちは気絶寸前だった。


「頭を冷やせ、馬鹿者がっ!!」

青ざめた団長たちの頭上に拳大の氷塊が現れたと同時に、落下する。

ゴンッといい音を出した氷塊が意識を刈り取ると、リデアはもう興味がないとばかりに視線を外す。

これほどまでに、正確な魔力コントロールできるのは流石魔王とでもいうのだろうか。



「まったく、私の幼馴染を馬鹿にするとはいい度胸じゃないか。なあ、イザ」


「は、はは……(勘弁して下さいよ、魔王様ーー!)」




今日も魔王城は平和であった。



どうだったでしょうか?ご指摘・感想ありましたら、宜しくお願いします。


また次話で、皆様とお会いできる日を楽しみにしています。

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