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Wahrheit  作者: てと
第一章「Awakening」
1/4

プロローグ

更新は不定期ですが、頑張っていきたいと思います。

 走る。

 走る。

 走る。

 走る。

 後ろは振り返らない。ただ走る。そんな暇はないから。

 ()が追いかけて来るのを感じる。なぜかは知らないが分かってしまう。心の底から沸き上がって来る恐怖感。追いつかれれば、きっと、多分、殺される。


「クッソ!!」

 思わず漏れる悪態。息が上がってきている。限界が近いのは自覚出来るが、それでも足を止める事は出来ない。

 もうかれこれ三十分は走っているがそれでも撒けない。まるでこちらを嬲っているようだ。あるいはその通りなのかもしれない。あくまで感覚であり確かな確証などないが、向こうはその気になればこちらを捕らえる事などわけもないはずだ。連なる家々の屋根を蹴り砕きながら追跡すると言う人外の技を披露しておきながら、人間一人殺れないなど理屈が通っていないだろう。

「なんだってんだよ、チクショウ!!」

 ほんの少し前までは普段と変わらない日常がそこにあったのに、コンビニまで飲み物を買いに行っただけで非日常に取り込まれた。

 叶うならばあの時の自分を殴り飛ばしてやりたいが、現実問題そんなこと不可能であるし、その程度で現状が変わることなどない。無為であり無価値である。大体、連続殺人犯や強盗犯、誘拐犯に襲われるというならまだしも、人外の化物に襲われるなど誰が予想出来ようか。少なくとも俺には無理だ。結局、こういう事態に巻き込まれていたのだろう。

 ドンッ!!という衝撃音が大気を伝わってきた。かなり近い。飽きたのか、はたまた別の理由か、分かりなどはしないがそれでもこちらを仕留めにかかったのだろう。知覚していた奴の気配が一気に速度を上げた。先ほどまでの倍近い速度で彼我の距離を詰めにかかる。

 やばい、という直感。振り切ろうとこちらも速度を上げるが焼け石に水だ。どう考えても相手の速度の方が速い。見る見るうちに差が縮まり、そして――――――――





「期待はずれもいいところだな、おい」 




声とともに、それは降ってきた。

 衝撃。轟音。とっさの判断で後ろへと跳んでいなければ粉砕されていたであろう。先ほどまでいた場所のコンクリートが打ち抜かれ、陥没している。規模としてみればそれは決して大きいものではないが、驚くべきは相手はそれを腕の一本で成し遂げたということ。

 一体どれ程の膂力があれば出来るというのか。先の移動もそうだが明らかに人の領域から逸脱している。加えて相手はまだ本気を出していない(、、、、、、、、、)

 降ってきたそれは人影、それもようやっと成人したという年の頃の男だった。肩までの金髪に赤く燃える赤眼。黒一色で統一された服はともすれば神父服のようにも見えるが、感じられる印象は聖職者とはまるで真逆だ。獣のような闘争本能をさらして隠しもしない。日常の中にいた俺でも分かる。きっとこいつは人を殺すことに何のためらいも、ましてや良心の呵責もないのだろう。

「なんか考えてんのかと思えばただ逃げるだけ。場所を選ぼうとしているのかと思えばそうでもない。やることは恐怖に怯えて逃走のみ。あぁ、白けるぜ。メフィストフェレスの器が見つかったってんで来てみりゃ、肝心の器がこの体たらくかよ」

 心底萎えた、とでも言いたげに、あからさまに男が落胆の表情を見せる。意味不明な単語の羅列を吐き出しながら、男はその双眸でこちらを射抜いた。

 それだけで俺の体が吹っ飛んだ。原理も理屈も分からない理不尽が肉体を蹂躙する。軽く十メートル以上吹き飛んで、コンクリートブロックへと体が叩き付けられた。

 肺から空気が吐き出される。あまりの痛みに苦痛の呻きさえもれない。悶絶する肉体を一瞬で近づいてきた男が踏みつけた。

「痛ェか?怖ェか?あぁそうだろうな理解出来るぜ。目の前に理解不能な化物がいて、そいつに殺されかかってんだからそりゃぁ怖ェだろうよ」

 口だけの同情の言葉を投げかけながら、男は踏みつける足の力を緩めない。むしろさらに強く強く押し込んで来る。

 人外の化物。似ているのはその姿形だけだ。どこまでも圧倒的に、かつ断絶的に、魔性の存在としての力を男は振るっている。

 死ぬ。死ぬ。死んでしまう。すぐそこまで死が迫ってきている。踏みつけて来る足を押し返そうと渾身の力を込めるが男の足はビクともしない。このままでは圧殺される。そしてそこから逃れる術は俺にない。

「なんなんだよ、お前は――――――ッ」

 口から漏れる声。目の前の人外へと、俺は思わず問いかけていた。

 明滅する視界が俺の限界を伝えて来る。意識が闇へと落ちていく。納得出来ない。お前は一体なんなんだ!?

「なんで、俺を狙うんだよッ」

 疑問をぶつけてやる。ふざけんなこの野郎と、男に投げかけた。

「はん」

 返る言葉は――――――――嘲弄。

「テメェの役割を自覚させるために決まってんだろうが」

 再びの言葉も意味不明で、

「今日はここまでにしといてやる。次会った時はもうちっとマシになっていやがれ。じゃねぇと」

 その言葉を聞き取れず、俺は意識を手放した。








「テメェが大切にしてるモン、一つ奪っちまうぞ」

のっけからピンチです。ですが、しばらくはこんな感じになります。

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