恐怖!黒猫真拳!!
ジャーン…ジャンジャンジャーン(銅鑼の音)
『いつの世からの理か、古来より社会の陰で弱者を貪りつづける悪の組織…』
『人の知らぬ闇の中…そんな悪の組織に立ち向かう一匹の猫がいた!』
『変身ヒーロー獅子拳ジャー!!』
チャララ、チャーララ、チャララララチャンガッシーン!!
あのビル影の奥、届かぬ正義に泣く声に
答える力が巡りくる
倒れたお前に与えるモノは
白き虎毛の小さき体
振るえ右足、力の限り
すり寄る友が倒れても
ならせ喉音、息する限り
抱く腕が温まるまで
闇の中の、光るネコ目を見逃すな
輝けバン!流星の如く!
~前回のあらすじ エスマイルを倒した俺の前に現れ、ヒヨコを惨殺していったテレーズ!彼女が去った後やってきたトゥルシギリをバンはついに倒した!そして改心したトゥルシギリが立ち上がった所、彼の腹に大穴が開いた。そしてトゥルシギリはその場に崩れ落ちるように倒れ伏したのだ!~
「トゥルシギリ!大丈夫か!」
俺が倒れたトゥルシギリに近寄ると、奴は息も切れ切れで明らかに目の焦点はあっていなかった。傷口はちょうど腹の中央にぽっかりと空いており、そこからは『だくだく』と血が流れ続けている。
「…俺に気を取られるなバン…奴はすでにお前を狙っているぞ…」
瀕死ながらも俺を気にするトゥルシギリ。
「奴とは?」
「裁きのムカージー…」
「ムカージーだと!」
俺がそう叫んだ時、俺と1Mほど離れた路上の空間が突如としてぐにゃりと歪む。
そしてそこには雄雄しき黒豹が此方を冷酷な目で見据えていた。
「裏切り者が…一撃でとどめを刺しておくんじゃったわい…」
「お前はムカージー!!お前…一度は改心し先生に従っていたというのに再び黒虎に従うとはどう言う事だ!」
「ふっ…前にわしがマクシミリアンに下ったのは年経た事による気の迷いよ…復活して若返った時、気づいたのじゃ…6将軍としての誇りにな!!!」
ムカージーがそう言いながら右前足を上げると、何処に隠れていたのか、黒服の戦闘猫がずらりと奴の後ろに整列した。
「出会え、出会え!!トゥルシギリもろともやってしまえ」
その掛け声を聞き、トゥルシギリの部下がわれ先へと逃げ出していく。
「ううむ…再び悪の道に戻ったのみならず、仲間を殺そうとするとは許せん!!」
「変身!獅子拳ジャー!!」
―フェリス・チェンジ!mode…カトゥース!!!―
俺の叫びと共に、辺りに緑色の光が満ちる。
そして光が引いた後、路上には全身を白い洗練されたアメショ模様の衝撃アーマーに包まれた覆面ヒーロー猫が立っていた。
♪♪♪♪♪♪
説明しよう!
『小床木バン』は正義の変身ネコヒーロー!
猫野目博士の開発した戦闘AI『マリーヌ』と共に
人に仇なすブラックタイガーを倒すべく現れた正義の戦士!
バンの正義の怒りが頂点に達した時!
マリーヌはその怒りエネルギーを衝撃アーマーに変えて
バンを覆面ヒーローにするとこができるのだ!!!
♪♪♪♪♪
「犬猫も三日飼えば恩を忘れずと言う!先生への恩を忘れた貴様に正義の鉄槌を下してやろう!!」
「恩など猫に小判じゃ!変身…パンテェラ・パルドゥス…」
ムカージーがそう呟くと共に、ムカージーはその場からふっと姿を掻き消してしまった。
「逃げたか…ムカージー!」
突っ込んできた戦闘猫を叩きのめしながら俺はトゥルシギリを守り続ける。
そんな俺を見て、トゥルシギリは苦しそうに苦言を呈した。
「…バン…お前は知らんかもしれんが…ムカージーのアーマーは光学迷彩…奴は姿を消しているのだ…」
「なんだと…そのような力を隠していたのか!」
以前、俺に魂を預けた時には、助言しかくれなかったムカージー。知将と言われただけはあって、奥の手を隠し続けていたようだ。
「…ふっわしの黒猫真拳は門外不出の暗殺拳…継承者以外には決して使わせんのよ」
「戦闘員に隠れて奇襲とは門外不出も大したことないな!」
突っ込んできた戦闘猫2匹の頭を小突き合わせるかのようにぶつけ、一度に倒した俺が叫び返す。その時、俺の右わき腹に前触れなく鋭い打撃が直撃するのを感じた。
「くっ・・・」
吹き飛びながらも態勢を整える俺が慌てて元居た場所に戻り、めくらめっぽうに連打を放つが、まったく捕えられない。
「面白い踊りよのう、小床木バン…正義のヒーローなど止めてサーカスにでも入ってはどうか?」
「ぐわっ!」
奴の話声のした方向に打撃を打ち込み続けたがかすりもせずに、逆に背中を打たれ、アーマーの大部分を削がれてしまった。
「このままでは負ける…」
そう思った俺の目に、戦闘猫に囲まれたトゥルシギリの姿が目に映る。
「やめよ、貴様ら!」
慌ててトゥルシギリに纏わりついていた戦闘猫を跳ね飛ばし、安全を確保してやる。
「小床木バン…俺の事は放っておけ…」
「何を言っている…その傷では戦闘猫一匹さえ相手できぬであろう!」
「…バン…俺はもう死ぬ…その前にお前に…」
「やめろ!トゥルシギリ!必ず助かる!!」
囲んでいた戦闘猫にネコパンチを繰り出していた俺だが、またもやムカージーが奇襲をかけたため、トゥルシギリの足元に吹き飛んでしまった。
「ぐっ…」
打ち所が悪かったのか、立ち上がれない…
「もはや…態勢は決したな…」
そうムカージーが近くで囁くのが聞こえる…
どうやら、これで終わりらしい。
そう思った俺のアーマーが解除され、俺はただのイエネコの姿に戻ってしまった。
「バン…死ぬな…お前はここで死んでいい漢ではない!」
そう、俺の耳元で声がした。
ふと見ると、血だらけのトゥルシギリが俺を守るかのように仁王立ちしていた。
「やめろ…トゥルシギリ…」
「ふっ…わが牙豹拳は獅子山拳とは違うのだ…」
「獅子山拳は弱者を守る拳だが…牙豹拳は傷つける技…それが…たとえ…自分であっても!」
トゥルシギリは唯一纏っていたアーマーである牙を自らの体に突き刺す。
そして、首を振り、傷口を広げると、辺りにトゥルシギリの血が飛び散った。
「なんじゃとおおおおおおお」
途端に上がる叫び声。
見るとトゥルシギリの血を浴びたムカージーがその透明な体に血を付けて、真っ赤な豹の姿を衆目にさらしていた。
「後は…頼んだぞ…バン!」
崩れ落ちるトゥルシギリ。
「わかった…お前の覚悟…決して無駄にはせん!」
息を引き取ったトゥルシギリの魂が俺の体に宿るのを感じ、涙と共に右手に力が宿るのを感じる。
そしてムカージーに全力で突っ込む俺。
白い体は流星の如く輝き、俺はその力のすべてを使い、
獅子山拳師範・俺だけが使える必殺技を奴にぶつけた!
「シューティング・カトゥース!!」
流星の如く突っ込む俺の右前足にトゥルシギリの大牙が重なる。
そして俺の右前足はムカージーの光学迷彩を引き裂き、中に居た奴に大ダメージを与えた!
「ぬぐわぁぁぁぁぁぁぁっぁぁ」
ムカージーは派手に吹っ飛び、城壁にぶつかると、その動きを止めた。
そして、逃げ出す戦闘猫ども。
その姿を確認した俺だが、力を使い果たし、奴にとどめを刺すこともできず、その場に突っ伏している。
「…やったぞ、トゥルシギリ…お前の仇を討って」
「…果たしてそうかな!」
声に驚き、顔を上げた俺の目に、立ち上がるムカージーの姿が映った。
「最強と言われる獅子山拳といえども、使うのがイエネコではわしに致命傷を与える事は出来んかった様じゃのう…」
「・・・くっ」
悔しくて臍をかむ俺。
獅子山拳を学んでいる時より、俺がイエネコであることはことあるごとに、俺を悩ます問題だった。イエネコの力はネコ族の中でも1・2を争うほど弱く、力を必要とする獅子山拳の同門の先輩方には他の流派を学ぶように何度も忠告されたものだ。
それを克服すべく、アーマーに使う怒りパワーで自らの体を流星へと変え、敵に超打撃を与える俺だけの必殺技を編み出すことで、先生から師範と認めてもらうことができたのだが…奴を倒すための力には少し足りなかったらしい…
「まあ、今回は…みのがしてやろうかのう・・・」
そのまま死を覚悟した俺だったが、ムカージーは意外なことを言ってその場を去って行こうとした。
「とどめを刺さんのか?」
「わしは知将ぞ?何度お前と戦っても負けんのに、なぜ怪我をしたこの状態で無理せねばならんのだ?」
昔ながらの笑顔で俺を見るムカージー…
まさかムカージーは俺を鍛えるために…
ありがとう…ムカージー…そう奴の後ろ姿に礼を述べる俺。
そして、俺はそのまま気を失い、気づいた時は再び、白髪のツインテールの館の中だった。
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「うぎゃあああああああああああああああああ」
真っ暗な闇の中にムカージーの叫び声が響き渡った。
「まったく…ジジイはこれだから使えないわね」
しなやかな最速のネコ科はそう言うとムカージーの体に手を置き、その魂を切り裂いた体から『つるり』と吸収する。
「うん、なるほど、こう使うのね。なかなかいいじゃない」
美しい顔に肉食獣の笑みを浮かべながら、テレーズはその場から『ふっ』っと姿を消した。
名前 小床木バン(おとこぎばん)
【基本職】F.CATUS【サブ職業】変身ヒーロー
腕力 イエネコ
体力 イエネコ
器用さ イエネコ
敏捷 イエネコ
知力 人並み
精神 師範代
愛情 ネコ程度
魅力 薄めの虎柄・白アメショ
生命 馬ぐらい
運 ヒーロー
スキル
【獅子山拳・師範】Lv.17
【魂の伝承者】Lv.3 ↑
(C. caracal)
(N.nebulosa)
【正義の心】 Lv.10
【人語】Lv.11