空を見に行こう
初めての短編です!!
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空を見に行こう
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周囲からは絶望の怨嗟が絶えなかった。
『──殺してくれ』
泣き声、呻き声……聞いているだけで吐き気を催す。
私はそんな場所が───嫌だった。
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空を見に行こう
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「お腹空いた……」
「だねぇ……」
私は親友のリサと一緒に石造りの壁にもたれかかり、お腹に手を当てていた。『奴隷』の私達への食料なんて貧相な物。水だって殆どもらえない。
「今日も作るのぉー?」
「しょうがないよ。こんな場所に産まれちゃったんだから」
私は牢の中で苦言を呈しながら、絹と針を持つリサに呆れながらも、その言葉は至極正しいと分かっていた。
「ねぇ、リサ」
「なぁに?」
「空を見に行こうよ」
私の突拍子も無い発言に、リサは困惑している様子だった。「頭でも打ったの?!」、と今にも言いたげな顔だ。
「地上には空があるんでしょ?! 本に書いてあったじゃん!! 見てみたくない?」
「そりゃあそうだけど……出来るわけないじゃん」
ここは牢屋が大量にある地下。奴隷達は皆ここに収監され、働かされる。私達は赤ん坊の頃からここにいたから、『空』というものを知らない。
まだ見ぬ未知にワクワクしている私とは対照的に、今度はリサが呆れていた。そうだ、私達は奴隷。一生ここで働いて、死ぬ。酷使させられて死ぬ。
でも、そんな人生面白くない。
「実はね、とっておきの作戦があるの!」
「……聞くだけ聞くよ」
私が考えた、あるとっておきの作戦を伝えると、リサは少しだけ、ほんの少しだけだが瞳を輝かせた。
「……確かに、それならここから逃げ出せるかもしれない!!」
「ちょっと! 声が大きいよ! ……いい? 決行は明後日。失敗したら私達死んじゃうんだからね!?」
「わ、わかったよ! でも、あれはどうするの?」
「あれはね───」
朝なのか、昼なのか、はたまた夜なのか分からない時間帯に私達はひそひそと作戦会議を始めた。
看守の目に息を潜めながら着々と案を出していく。
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空を見に行こう
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『…………』
翌日、死んだ目をしながら私達の前方の牢屋から男達が看守に連れていかれる。彼等はいつも牢屋の中で『殺してくれ』、と呟いていた。
私は死ぬなんて嫌だ。
こんな糞みたいな空間で一生を終えるのもやだ。
空を見てみたい。
「ね、ねぇ、本当に大丈夫なのかな……?」
「大丈夫! 作戦は完璧だから!」
少し不安気にしているリサを私は元気づけ、看守から得た乾燥したパンを食べながら、絹に針を通していく。
暗い、本当に暗い。周囲の明るさは牢屋の前にあるロウソクによって成り立っている。
でも、それはここが地下だからだ。地上には空にお日様があると本で見た。こんな生活、もうすぐおさらばだ。
「じゃあ、おやすみ……」
「うん、おやすみ」
まだ身体を震わせているリサをゆっくりと私は抱き、そのまま眠りについた。
翌日。
遂にここから脱出する日だ。
今日の就寝時間に私達はこの場所から去る。
逃げるための準備をして、私達はその時間を仕事をしながら待った。
一秒一秒がとても長く感じ、私達は冷や汗が止まらなかった。
看守の目もいつもより怖く感じる。
「リサ……!」
「……うん、絶対成功させよう!」
私達は堅い握手を結んで仕事に取り掛かった。
「……よし、行こう」
「うん!」
私達は絹で作ったロープを使い、仕事をサボって寝ている看守の横から慎重に鍵を引きずっていく。
土を金属が擦る音がとてもうるさいと思った。
私は柵の前に来た鍵をゆっくりと拾い、音が出ないように鍵を解錠した。
ギィィ……、という金属の扉が開く音が鳴るが、気づく様子は無い。
私達は慎重に歩を進めて行き、遂に出口を見つける。
今日は看守が年に一度宴会を行う日。出口を見張る者は先程居眠りしていた看守一人だけだ。
私達は出口と思われる階段を息を殺して登っていく。
その先に光は見えないが、分かる。
この先が地上だと。
私は胸の鼓動が抑えきれなかった。
ワクワクが止まらない。
開放感が胸を満たす。
そして、私達は最後の段を登り───
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空を見に行こう
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───地獄を見た。
「……え?」
笑いながらおかしな声を上げる私の横には絶望した表情を見せるリサの姿があった。
『空』を見たいと願った私達は恐る恐る上を見上げる。
そこにあったのは、本に書いてあったような、青く澄み渡る空だ。
───青く澄み渡る空で、あって欲しかった。
私達の目に映るは黒い雲で覆われた空。青は一欠片すら見えない。
お日様なんてものは、無かった。
たまたまだ、そう信じたかった。
しかし、広がる荒野の遥か先に見えるおっきい建物のような物から棒のような物が飛び出し、もくもくと気持ちの悪い煙が空へと向かっていることに気づいてしまう。
「……なに、これ……?」
「ち、地上はもっと凄くて、綺麗な、はずで……!」
しかし、私達の前に広がるのは荒廃した荒地、黒いすすまみれの家々、紅く光るおっきい建物。
本に書いてある、世界とは全く違った。
「……? 何の音……?」
「っ?! 避けて、リサ!!」
「え───」
何も分かっていないリサは何故か宙に投げ出された。
浮いている最中に見えたのは、黒い空に紛れる鉄の塊。
そのままそれは、赤熱した鉄の塊のようなナニカを落として───
彼女達は暖かい何かに抱かれて眠りについた。
最後、彼女達の頭に過ぎるは、何故か男達の言葉。
『殺してくれ』
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空を見に行こう
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空を見に行こう───
いや、
自由を求めに行こう───
最後まで読んでいただきありがとうございます!
初めてファンタジー以外の作品を書いてみて、「これで良かったのかなー?」と思ったりしてます。
さてさて、彼女達は『檻』から出て、『空』──つまり、『自由』を求めていました。
ですが、自由だと思っていた場所はまた別の『檻』でした。寧ろ、更に酷い檻でした。
冒頭で『殺してくれ』、とありましたが、これもある種の『自由』であると思っています。
死ぬことを嫌っていた主人公が最後は死んで、やっと『嫌いな自由』を手に入れるとは、皮肉ですね。
死んでしまえば、こんな空間から逃げることができます。
ですが、それを自由と言っていいのでしょうか?
死ぬことは本当に自由なんでしょうか?
死の先に何があるかなんて、誰も分かりません。
『自由』とは、何なんでしょう?
これはあくまで自分の主観にすぎません。当然人によって意見は異なります。
それでは、またお会いしましょう!
本作はフィクションであり、実在の人物、団体、事件等とは一切関係ありません。また、自殺や自己肯定感の否定を肯定・助長する意図は一切ありません。




