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美と璃  作者: 檀李糸
1/1

妹の場合

 いつか、こんなことになる気がしていた。それが気のせいであることをずっと願っていた。

 

 見覚えのない番号からの電話を見て、怖気が全身を走り抜けた。トラックに轢かれたらしい。病室の番号、105。開けてみると、いつも通りの、仮面のような微笑みが貼り付けてあった。

「来たんだ。」怪我人は言った。

「来なくてもよかったのに。」

「来なかったら、連絡くれてたの?」

「それもそうだ。」

 気持ち悪い。昔からそうだ。自分の片割れのはずのこの女からは、得体の知れない気味悪さしか感じない。

「遠かったでしょう?」

 そこにいるのに、

「早かったね。」

 いるはずなのに、

「かずきくんは元気?」

「ねぇ」

 掴めない。

「なんでこんなことになったの」

「事故だよ。」

「嘘」

「嘘じゃないよ。」

「じゃあ、都会の真ん中で信号無視したのも、事故?」

「事故だよ。」

 嘘だ。無意識だったかもしれないけれど、こいつは、意思を持って車に轢かれに行ったはずだ。

 だって、この女は

「生きてないからでしょ」

「え?」

「死んでないだけでしょ」

「…誰に言われたの?」

 何を言っているんだ。やっぱり、こいつは、私のことをわかっていない。何も。

「誰にも言われてない。ただ、そう見えただけ」

「そう。やっぱり同じ人間だからかな。」

 同じなものか。私は、こいつの感性も、努力も、諦めも、何も知らない。同じ人間なわけがない。きっと、分裂する時に欲しかったものを全て奪われたんだ。ただそれだけだ。

「全部頑張ったんだけどね。全部上手くやったはずだったんだけどね。」

 それなのに。

「死にたいわけじゃないんだよ。生きたいわけでもないけど。」

 なんでこいつは、

「ただ、もう疲れた。」

 なんで私は、

「ねえ、あなたは私にならないでね、(あき)。」

 自分を奪い合っているんだろう。

「なるわけないでしょ、(はる)

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