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サイアク  作者: 駄犬
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4-10 救焔の願望

 月葉さんと長髪の男に出会ってから数十分後。

 俺達は『デザイア』の反応がする方へ向かい、たどり着いたのは寂れた廃工場。

 俺の直感が正しければ、ここに『デザイア』を持つ長髪男がいるはず。しかし……

「本当にここにいるのか?」

「お前が連れてきたんだろ」

 無意識に零れた疑問を、戒刃が険しい表情で突っぱねる。

「いや、そうなんですけど……」

 目の前にある工場は寂れて見窄らしく、何年も稼働していない事が窺える。人の営みも気配も一切ない。常識的に考えて、ここに人なんている訳がない。

 しかし、この廃工場に『デザイア』を持った長髪の男がいる。その感覚だけが胸の奥で渦巻いている。

 つまり現在、視覚的な情報と感覚的な情報に矛盾が生じているのだ。

 ま、まあ!実は中に工場内にさっきの男がいるかもだし!?入ってみるのが最適だろ!

 そんな矮小な希望を胸に、口を開く。

「とりあえず!中入ってみよう!入口どこだ───」

「───待ってください」

 唐突に、俺の言葉をシロアが遮る。

「……います」

 そこに普段の怯えた様子はなく、確かな自信が込められた言葉だった。

「確かに、誰かいるな」

 戒刃は目を瞑り、暗闇の中で何かを探しているような顔を浮かべながら、シロアの言葉を肯定する。

 二人の中には絶対的な確信があるようで、それを理解できない俺だけが置いていかれていた。

「……誰かって、人?」

「それ以外に何があんだよ」

 俺の疑問に戒刃が少しだけ目を開き、眉をひそめる。

「いや……なんで分かるの?」

 その言葉に、シロアと戒刃がまるで「当然ですが?」とでも言いたげな表情をする。

「えっなにその顔……?」

 俺の疑問は正当なモノの筈だ。

 俺達は現在、工場の入口の前に立っている訳ではない。その周囲にいるだけだ。窓からも中を覗いたりもしていない。

 つまり、この廃工場内の様子を一切見ていないのだ。

 しかし、二人はこの中に誰かがいると確信している。

 そんなの普通に考えておかしいだろ!超能力者か!?

「普通に気配で分かるだろ。な、シロア」

「は、はい……」

 超能力者でした。俺が凡夫なだけでした。

「そっすか……」

「拗ねるな。それよりも、厄介な事が起きてるぞ」

「厄介?」

 戒刃は眉をひそめ、小さく息を吐いた後に言う。

「ああ。お前が言ってた、さっきの『デザイア』を持った男。いただろ」

「うん、長髪の」

「ここにあいつはいない」

「え?いないの?」

 反射的に、驚嘆が口から落ちる。

 じゃあなんで『デザイア』の反応がこの工場から?おかしくないか?もしかして、俺の勘違い?

 でもここで「勘違いでした〜えへへ〜」なんて言ったら戒刃に斬首される。洒落にならん。

 そんな事を考えていると、戒刃は変わらず眉をひそめたまま、真剣な面持ちで呟く。

「しかも、二人いる」

「……二人?」

 さっきの長髪の男じゃない上、二人?それは本当です?

 そんな疑問を口から放つよりも先に、戒刃が首を絞められたような顔をしながら、確かな確信を秘め、言い放つ。

「……槍華と飛鳥だ」

「……え?」

 予想外。それ以外の何物でもない。

 その名前が上がる可能性は、脳の片隅にもなかった。

「な、なんであの二人が……?」

「知るか。ただ、ここにあの二人がいる」

 俺の疑心を跳ね除けるように、戒刃は確信めいた声色で答える。

 槍華はまだ理解出来る。槍華は『デザイア』を持つ長髪男の共犯者の可能性がある。

 しかし、飛鳥さんに関しては予想外すぎる。あの人は一般人の筈だ。それなのに、どうしてこんな所に?この廃工場に二人がいるのは、ただの偶然にしては色々と出来すぎてる。

 瞬間、ある可能性が頭を過ぎる。

「……もしかして、飛鳥さんも槍華と同じ共犯?」

 その言葉に、戒刃の表情が陰る。

「……まぁ、あり得ない話ではないよな。それより、暁理」

 戒刃は苦い顔をし、頭をガシガシとかきながら問いかける。

「マジでさっきの長髪男の気配、一切ないぞ。暁理、本当に『デザイア』はここにあんのか?」

「そこになければないですね」

「死ね」

 戒刃がゴミを見るような目で吐き捨てる。ごめんって。

「いや!本当にここにある気がして……」

 そう言うと、戒刃は呆れた表情でため息を吐いた。

「……可能性としては、認識阻害の結界とか、隠匿の術式が展開されてる。他にもあるだろうが、まあ理由としてはそれぐらいだな」

「なるほどわからん」

「無能」

 戒刃はぺッと唾を吐く。汚ね。

「認識阻害系や隠匿系の術式は、こんなに簡単に使用できるものなんですか……?」

 シロアが唐突に、おずおずと戒刃に質問を投げかけた。

 確かに、認識阻害とか隠匿ってそんな簡単にできるものなの?素人なんでそもそも言ってることもよく分かんないんですけどね!

「いいや、全然。むしろ超絶技巧寄りの術式だ。だから、今の状況はかなりまずい。向こうには手練れがいるかもな」

 戒刃はシロアの問いに淡々と答えた。

 その回答を聞いたシロアは眉をひそめ、羽虫のような声を落とす。

「そう、ですよね……」

「とりあえず、問題だらけだな」

 シロアも戒刃も、戸惑いの表情を隠せてはいない。二人とも、この状況にお手上げのようだった。

 確かに、色々と複雑な状況が絡み合っている現状ではある。『デザイア』を持つ長髪男はいないし、なぜか槍華と飛鳥さんがいる。冷静になるのは難しいだろう。

「……」

 しかし、自分でも意外に思うほど、俺の頭はクリアだった。

「でもさ、問題はシンプルだろ?」

「……あ?」

 戒刃が「こいつ適当な事言ったら殺すわ」という顔をする。こっわ。

 俺はその圧に怯えつつ、指を3本上げて話を続ける。

「問題は3つ。1つ目は『デザイア』の所有者がいない。2つ目は命術を使える疑惑の槍華がいること。3つ目はそこに飛鳥さんもいること。だよな?」

 話が終わると、シロアと戒刃は目を丸くする。そして、戒刃が少し困惑を浮かべながら零す。

「……分かってんだな」

「分かってるよこれぐらい」

「感動したよ。お前の糞尿みたいな脳みそでもちゃんと働いてるんだな」

「泣くぞ」

 戒刃は満面の笑みで小さく拍手をする。煽ってんだろ。

 そして、戒刃は俺を指差しながら冷静に告げる。

「その問題の中で、最優先に解決すべきは2つ目だ。槍華を捕獲するぞ」

「捕獲?」

 戒刃から意外な発言が繰り出される。

 倒すや殺すじゃなくて、捕獲?

「ああ。『デザイア』の長髪男の場所がわからないなら、そいつの共犯である可能性の槍華を捕らえて、吐かせればいい」

「なるほど。飛鳥さんは?」

「飛鳥も命術を使ってきたら捕獲だ。ただ、奴に関してはただの一般人の可能性もある。だから、そこはケースバイケースだ」

 そして、戒刃はまるで当然の事のように言い放つ。

「俺が槍華を、状況によっては飛鳥を捕える。俺の命術は捕獲向きだしな」

 その意見は、確かに得策ではある。

「……」

 しかし、それは最適解ではないような気がした。

 槍華だけならまだしも、『デザイア』がいる可能性を考慮した時、これが一番正しい選択なのか?万が一、『デザイア』が戦闘に参加して戒刃が殺された時、槍華を捕獲できなくて不利になるのは俺達では?

 なにより、命術戦で捕獲という役割があり、経験値も多い戒刃を先に出して良いのか?

「……いや、先に俺が出るよ」

 良くない。最適解じゃない。

 そう思い、本能的に反論が口から零れた。

 瞬間、戒刃が眉をひそめ、懐疑的な様子で口を開く。

「暁理が?」

「ああ。命術戦闘で大切なのは『情報』だろ。なら尚更、俺が先に出るべきだ。俺が槍華の情報を引き出してから、戒刃が隙を見て捕獲する。その方がスムーズだろ」

「でも、お前が負けたらどうするんだよ。お前の中の『デザイア』が取られるだろ」

「大丈夫だろ、俺より戒刃の方が強い。だから、俺が負けたとしても、戒刃なら絶対勝てる。シロアもいるしな」

「んん……」

「それに、もし飛鳥さんが命術を使ってきたり、『デザイア』の長髪男やそれ以外の伏兵がいた場合、いきなり戒刃のカードを切るのはもったいない。奇襲ができるカードは残しておきたい」

「うーむ……」

「最低でも敵が二人以上になってから、戒刃は戦闘に参加してほしいかな。最初からフルベットする必要は今回はないだろ」

 戒刃は一瞬だけ目を伏せ、ため息をつく。そして、何かを飲み込んだような顔で言う。

「……いいだろう。それでいこう」

「ほ、本当に!?」

「ああ……お前の策が悪くなかったからな。そのゴミとドブを混ぜたような脳みそでよく考えたな」

「泣き喚くぞ」

 酷い事しか言わんやん。人の心とかないんか?

 傷心状態の俺は、流れるようにシロアの方を向いて口を開く。

「で、シロアには飛鳥さんの保護をお願い」

 シロアはまさか自分に白羽の矢が立つとは思っていなかったようで、肩を大きく揺らした。

「わ、私ですか……!?」

「うん。飛鳥さんが命術を使わなかった場合、彼はただの一般人。それなら、保護しないといけないからね」

 シロアの命術は保護向きの能力。

 俺が槍華と戦闘をしている間に隙が出来る筈。その時に、シロアには飛鳥さんを保護する。適材適所であり、最適の筈だ。

「うぅ……」

 シロアは困ったような表情のまま少し唸った後、何かを思い出したかのような顔をする。

 そして、

「……わかりました」

 真っ直ぐとこちらを見つめ、確かな決意を秘めた言葉を向ける。

「ありがとう。ただし、飛鳥さんが命術を使ったら、すぐに撤退、これ約束な」

「は、はいっ」

「よし」

 その言葉に少しだけ安心した俺は、二人に改めて作戦を伝える。

「じゃ、改めて……まずは俺が出て槍華の命術の情報を集めつつ、シロアは飛鳥さん保護の為の時間稼ぎをする。で、槍華を捕獲できそうになった場合と、敵が二人以上増えた場合は戒刃が出てくる。二人ともOK?」

 俺は手をパンッと鳴らし、二人に問いかける。

「はい」

「異論ない」

「おけ。じゃあ行ってくるよ」

 その言葉を聞いてすぐ、俺は『デザイア』を起動させる。

 四肢が黒い鎧に再構築され、赫い焔が放出される。

「頼むぞ二人とも」

 そして、両脚から焔を逆噴射させ、廃工場の上まで一気に飛び上がる。

「ふーっ……」

 ゆっくりと息を吐き、右手に赫い焔の出力を上げる。

 そしてそのまま、工場の屋根を殴り飛ばし、隕石のように落下した。

 ――――――――――――――――――――

「殺してやる」

 天井を貫いて地面に着地した後、そう呟くのは槍華。

 槍華の手に握られた『翡翠色の槍』からは、荒風が発生していた。

 嫌な予想は当たる。やはり槍華も命術が使えるようだ。

「……ずいぶん物騒なものお持ちで」

「黙れ」

 その言葉に共鳴するように、風が更に激しく吹き荒れる。

 槍華の手から顕現した『槍』と、槍から放たれる『風』。

 能力の全貌が分からない以上、下手に動けない。

 しかし、一つ確信がある。

 槍華の近くにいる飛鳥さんは、戦闘態勢ではなく、この状況に酷く狼狽していた。

 それはつまり、飛鳥さんが一般人である事を表していた。

 安心と同時に、危機感が押し寄せてくる。

 あの位置だと、彼が巻き添えにあって死ぬ。それはなるべく避けたい。

 シロアがスタンバイしているとはいえ、このままじゃ飛鳥さんを保護する事は不可能。

 だから、まず俺がやるべきは『槍華と飛鳥さんの距離を離す』こと。飛鳥さんが一般人だと確定したのなら、それが最優先だ。

「好きなタイミングでこいよ。合わせてやるから」

 俺がわざと槍華を煽るように右手の手のひらを上に向け、クイクイッと二度動かす。

「……」

 槍華はその煽りに反応せず、冷め切った目でこちらを凝視していた。

 そして、首を絞められたような声で、零した。

「お前が、風雅を殺したんだろ」

「……え」

 それは、違う。と言いかけた。

 しかし、言うよりも先に思考にある可能性がよぎる。

 『デザイア』同士は共鳴する。風雅さんが死んだ『デザイア』の事故は、俺が『デザイア』に適合した事で、福岡に来た事で起きた事故かもしれない。

 つまり、俺は槍華の言葉を一概に反論はできない。とはいえ、それを説明するには根拠も時間もない上、どこまで話していいのかも分からない。

 だから、迷ってしまった。次に彼に向ける言葉を。

 そして、俺が言葉を見つけるよりも先に、槍華が憤怒を込め、問いかける。

「お前が……『デザイア』の所有者なんだろ」

 それは。

「───」

 脳を一瞬停止させるには、十分すぎた。

 だって、それは、ただの事実。

 それだけは何一つとして、否定する事の出来ない、正真正銘の事実。

 だから───

「あぁ」

 俺は、そう答えるしか出来なかった。

 その時の俺が、どんな顔をしてたなんか分からない。

 けれど、それが分水嶺だったんだろう。

「ッ……!!」

 槍華は、今まで抑えていた怒りが全て暴発したかのような顔をした。

 それが合図だった。

「殺すッ!!」

 瞬間、槍華は手に握られた槍の刃を半回転させ、俺とは真逆の方へ向ける。

「……?」

 反射的に槍華の攻撃に構えるものの、それは攻撃体勢とはかけ離れたものだ。槍術は詳しくないが、槍の刃を反対に向けて構える技術はあるのだろうか。

 距離も20〜30m以上離れてる。

 この状況なら、槍華の攻撃は俺には届かない。

 そんな、薄氷のような慢心をしてしまった。

 瞬間───

 何もない空間に、眼前に表れたのは、槍華。

「は?」

 距離に表せば、1m以下。

 まるで瞬間移動のように、俺は刹那の間に距離を詰められた。

 そして、槍華は翡翠色の槍を半回転させ、槍の穂が俺の上半身を薙ぎ払う。

 ───ザシュッ!!

「ッ……!!」

 肉を抉る音が響く。赤黒い液体が宙を舞う。

 槍華の攻撃が当たる刹那、俺は両脚で焔を逆噴射させ、一気に後方へ飛んだ。

 しかし、槍華の槍による攻撃は直撃。上半身につけられた傷口は、綺麗な一直線を描いて血が垂れる。

 俺の焔による移動以上の速度。全く目で追えなかった。

「はぁ……はぁ……」

 距離を離した俺は、上半身から溢れる血を抑えるように、傷口に触れる。傷は深くはないものの、絶えず血が流れ続ける。

「……チッ」

 目の前の槍華は悪意を込めた舌打ちをする。

 それは、間違いなく敵意であり、殺意であった。

「……」

 確信した。槍華は想像以上の脅威であると。

 このままじゃ、捕獲なんて夢のまた夢。

 殺すつもりでいかないと、俺が殺される。

 だから、覚悟を決めろ。甘えるな。

 目の前の男を、善人を殺す覚悟を。

「ふーっ……」

 俺は瞼を閉じ、一週間の訓練で教えられたことを思い出す。

 ――――――――――――――――

「『デザイア』って7種類あんねん」

「そこは200種類あれよ」

 5日前か4日前。座学の時間にゲノムさんがドヤ顔で言い放った事を思い出す。こっちには200を司るモデルがいんねん。

「でねー『デザイア』にはそれぞれ名前があるんだよ。零奈と暁理の『デザイア』にもちゃんとした名前があるの」

「へー?」

「全異世界で一番浸透している言語、『ウア語』でそれぞれの『デザイア』を名付けてるの」

「……ウア語で『デザイア』の意味ってなんなんですか?」

「『願望』だよ?」

「……英語と一緒では?」

「英語でもウア語でも『デザイア』って読み方の意味は『願望』なんだよねー!奇遇だよねー!」

「とんでもないご都合展開を目の当たりにしている気がする」

 奇跡かご都合主義以外ないだろ。『デザイア』と呼ぶ言葉の意味が『願望』って。

 そんな俺の混乱をお構いなしに、ゲノムさんはコーヒーを一口飲むと、真剣な面持ちでゆっくりと口を開く。

「とりあえず、暁理の『デザイア』の名前を教えるね」

「それって、なんの意味があるんですか?」

「え!?暁理も自分の名前、ちゃんと意味あるでしょ!?」

「俺の場合、祖父が名付けてくれましたが、名前の意味は教えて貰ってないので分かりません」

「いやいや!ご両親が教えてくれたりするでしょ!?」

「教えてくれません。仲悪いので」

「全部噛み合わねー!!」

 ゲノムさんが呆れたように叫ぶ。

 でも仕方ないじゃん。俺は親と折り合いが悪くて、まともな話すらできないので。

「まーいいや。名前はね、命術においてトップクラスに重要な要素なの。『デザイア』も命術の一つ。だから、『デザイア』ぐらいは覚えて。ね?」

 ゲノムさんは俺に訴えかけるように言い放つ。

「……わかりました」

「では、教えます。暁理の『デザイア』の名前は……」

 そうして、俺の中に宿る『デザイア』の名を教えてもらった俺は。

「……それも発音的には全部英語では?」

 と、反射的につぶやいてしまった。

「うっさい」

 そう言いながら、ゲノムさんは恥ずかしそうにデコピンしてきた。

 ―――――――――――――――

 名を呼ぶ事。それは命術、つまり『デザイア』の出力を上昇させる条件。詠唱に似た効果を持つらしい。

 正直、名前の意味も由来も理解していないし、寧ろ、怒りすら感じてしまうほど大層な名前。

 何が救いだ、って心の中で悪態をつく。

 たった一人の大切な人すら、救えてないのに。

 けれど、今はそれを受け入れるしかない。

 受け入れて、前に進むしかないんだ。

「悪いけど、俺はまだ死ねない」

 俺は右手を強く握り直す。

 赫い焔は更に激しく燃え上がり、黒い鎧は硬度を増していく。

 殺意は『デザイア』のトリガーであり、燃料。

 激しく燃え上がる赫焔の隙間から見える、刺すような槍華の敵意が更に強くなる。

 それでも、俺は止まる気はない。槍華に同情もしない。

 全ては、零奈を生き返らせる為。

 全身全霊で殺意をコントロールしろ。

 目的を果たす為に、槍華を殺すつもりで、殺さないように戦え。無理難題を成し遂げろ。

「だから、最初からフルスロットルでいくぞ」

 俺に宿った、零奈から託された『デザイア』の名は。

「───『救焔の願望レッド・デザイア』」

お読みいただきありがとうございます。

今回めっちゃ長いですね。前回の3倍の文章です。

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