6話 決意
冒険者になりたい……といっても今のままだと絶対に無理だ。冒険者が何をやっているか詳しくは分からない。知ってることといえば魔物と戦ったり、ダンジョンを探索したり……私に出来るとは思えない。
魔物と戦ったことなんてないし、ダンジョンに関する知識もほとんどない、体を動かすのも得意じゃない、体力もない、魔力も少ない……考えれば考えるほど冒険者になれると思えなくなる。
すぐに心が折れてしまう気すらする。でも……まだやってもないのに諦めるのは早いと自分に強く言い聞かせる。今は恐れよりも冒険者になりたい憧れが勝ったけど、早速壁にぶつかった。
何から始めれば……? 体力をつける? それとも勉強? どうしよう……
「大丈夫ですか、何か困りごとが?」
余程顔に出ていたのか、テーティスさんが優しく聞いてきた。
「あ、ふぅ……ぼ、冒険者になりたいと……おもって……でも、何からしたらいいか、分からなくて……」
言うのは恥ずかしいというか……そんな気持ちと、急に私が冒険者になりたいと言って困らせてしまうとも考えたけど、テーティスさんになら話しても良いと思った。
沈黙が流れる。やっぱり困らせてしまったと思って徐々に不安になってくる。
「私で良ければ手伝いますよ」
手伝う……? 何か助言を貰えたらとは思っていたけど……まさかの提案で驚ろきつつも、本当に私が想像しているものか心配になって念の為に聞いてみることにした。
「て、手伝うって……私が冒険者になる、のをですか?」
「そうですけど……迷惑でしたか?」
「そ、そんなことないです! けど……」
テーティスさんが手伝ってくれるのは凄いありがたい……でも、何でここまでしようとしてくれるのかも分からないし、魔物から助けてくれて治療までしてくれたテーティスさんに申し訳ないと思いつつも本当に信じてもいいのかと思ってしまい、戸惑ってしまう。
「ど、どうして……そこまで……しようと、してくれるん……ですか?」
「う〜ん……ユウさんのことを見てたら手伝いたくなったからです」
真剣な表情でそう言ってくれたテーティスさんを見て本当に手伝ってくれるんだと感じたけど、まだ不安が残る。それに、テーティスさんに私がないない尽くしの人間だということを伝えてない……このことは絶対に言わないと。
「で、でも私……何もないですよ……魔力も体力も、人よりない……冒険者に関する知識も全然ない、覚悟だってできて、ない……テーティスさんに……とても迷惑を、かけることになります……」
「そうですか、でしたらこれから一緒に頑張りましょう」
「……手伝って貰っても……私が駄目でテーティスさんの時間を無駄にするかもしれない……それに返せるものも持ってなくて……」
「大丈夫です、ユウさんならなれます。あと、私から手伝いたいと言ったんですから、なにか返そうなんて思わないで下さい」
不安が全てなくなった訳じゃないけど、憧れた人がこんなに言ってくれてる。テーティスさんを信じたいと思った。
ふぅ……よし! また涙が出てきたのを隠すように勢いよく体を起こす。そんな私を見たテーティスさんは驚いている様に見えた。
「……て、テーティスさん、わ、私が冒険者になる手伝いを、お、お願いします」
「う、うん。喜んで」
「あ、ありがとうございます」
はぁ……良かった。
「ユウさん、体はもう大丈夫なんですか?」
ほっとしているとテーティスさんが心配そうに聞いてきた。……いたい。
じわじわと完治していないところが痛くなってくる。ミアさんのことだったり、冒険者のことで頭がいっぱいになっていたけど、そのことがある程度まとまって落ちついたのと、テーティスさんの一言で怪我が治っていなかったことを思い出した。
「うぅ……」
「大丈夫ですか?」
「は、はい、いきなり動いて少し痛くなっただけです……」
「まず、怪我を治しましょうか。それからですね」
微笑みながらテーティスさんが言ってきて、少し恥ずかしくなった。
「はい……」
「病院やユウさんに迷惑でなかったらまた明日来ようと思います」
「め、迷惑なんて、そんな……わ、分かりました」
「では、今日はもう帰りますね。外も暗くなってきたので」
もうそんな時間かぁ……
「んっ」
テーティスさんが優しく頭を撫でてきた。
「明日はもっと早い時間に来ますね。ユウさんに冒険者のことなど、色々話したいこともありますし」
「ま、待ってます」
「ふふ、それでは。またね」
「は、はい、今日はあ、ありがとうございました!」
テーティスさんが帰っていった。寂しい……
テーティスさんのおかげでミアさんと話す勇気が持てたし、冒険者になる決心がついた。でも、怪我が治りなきゃベッドの上にいるだけだ。早く治さなきゃなぁ……そんなことを思いながら眠りについた。




