5話 変わり者の冒険者
サラセニア・テーティスさん。この人が治療してくれたんだ……でもなんで私に会いに来たんだろう? お礼が言えたのは良かったけどテーティスさんが来てくれた理由がいまいち分からずにいる。うーん……ルナのことを聞きたいのかな。
「シラズ・ユウさん……珍しい名前ですね。シラズ……? どこかで見たような……聞いたような……」
シラズという名前に引っかかっている。多分、ルナのことだ。でも、名前を忘れているんだったらここまで来てくれた理由はルナじゃない……? ますます分からなくなった。
「た、多分……シラズ・ルナという名前……じゃない、ですか……?」
「あ! そうです思い出しました。ありがとうございます。では名前が同じということはユウさんはルナさんの妹なんですね」
妹……私がルナの? 確かにそう見えてもおかしくない……ルナは14歳に見えないほど雰囲気が大人っぽいし、身長も高いし……最初に会った頃から既に身長を越されていた。
「る、ルナの方が従妹です……」
「……そうなんですね……失礼しました……」
「い、いえ、全然大丈夫です……あ! そ、そうだテーティスさんはなんで私に会いに来てくれたんですか?」
少し気まずくなってしまい話題を逸らすように私に会いに来てくれた理由を聞いてみた。
「来た理由ですか……そうですね、私がユウさんのことを気になったのと、それと、頼まれたからです」
私が気になった……? 頼まれた……? 来てくれた理由のどっちも気になったけど頼まれたという方が聞きたくなった。
「頼まれた……? だ、誰にです?」
「私が翼竜を倒した時にその場所にいた足を怪我して倒れていた人からですね」
「……その人の……な、名前って分かり……ますか?」
「確か、ミア・スピナと名乗っていましたね。ユウさんの応急処置が終わって彼女の足を手当てしていた時にお願いされまして、私が無事だとあの子に伝えてほしいと。友達でしたか」
……良かった。ミアさんが助かっていたことが分かって安堵して涙が出そうになる。でも……
「友達……ではないと思います……知り合い……というか、私がミアさんの都合を考えないで……一方的に気にしてるだけで……ミアさんから疎まれていますし……」
だからこそ分からない……なんでテーティスさんに無事なことを伝えてほしいと頼んでくれたのかが。
「そうでしたか……二人の関係は分からないですが、一方的というのは間違っていると思いますよ」
間違っている……どういうことだろう?
「……ど、どうして……そう思ったん……ですか?」
「ただ疎まれているだけでしたらわざわざ私に、あの状況で涙を流して自分は無事ということを伝えてほしいと、頼まないと思います。なにも知らない私の推測ですが」
テーティスさんの言葉にハッとしたと同時に、なによりもミアさんが涙を流していたということが気になった。
「み、ミアさん、泣いていたんですか?」
「ええ、私のせいでまた傷つけてしまった。と言っていましたね、二人に何があったのかは分かりませんが一度話し合ってみては?」
話せるかな……会いに行って話しかけても無反応のままそれで終わるかもしれない。どうすればいいか考えてるうちに暗い気持ちになっていき、俯いているとテーティスさんが頭を優しく撫でてきた。
「ひゃ!」
急なことで変な声が出てしまった。
「ごめんなさい、何も知らないのに勝手なことを言ってしまって」
「い、いえ……」
今この瞬間にも頭を撫でられている。なんだか安心というか気持ちが楽になるけど少しだけくすぐったくて微妙な表情になる。
そんな表情を見ていたテーティスさんが申し訳なさそうに喋る。
「嫌でしたか?」
「い、嫌じゃないです。むしろもっと撫でてほしいです。ただ少しくすぐったくて……」
ん? 今変なことを言った気がするけど大丈夫だよね……
「ふふ、良かった、私も頭を撫でられるのが好きだったから……」
テーティスさんのおかげで気持ちが軽くなった。ミアさんと話さなきゃ……そう思えるようになるほど元気も貰えた。テーティスさんに言っても困らせるだけだと思ったけど、ミアさんと話してみることを伝えたくなった。
「て、テーティスさん……出来るか分からないけど……ミアさんと話してみようと思います……」
「うん、頑張ってね」
優しい笑顔でそう言ってくれたテーティスさんを見て泣きそうになっていると、もう一つ聞きたいことがあったのを思い出した。来てくれた理由で私のことが気になったと言っていたことだ。
「い、いきなりでごめんなさい……て、テーティスさんここまで来てくれた理由で……私が気になったと……言ってましたよね……それって……どういうことだったんですか……?」
「ん? ああ、まだ言ってなかったね、翼竜に襲われても人を助けようとするユウさんが気になって、だから会いたいと思った、とても凄いことだから……」
その理由を聞いた瞬間、数滴の涙が頬をつたい、救われた気持ちになった。嬉しかった……褒められたのが……多分、初めてだったから。
心の中で強く思う……落ちこぼれの私でも……テーティスさんみたいに……冒険者になりたいと。
いつの間にか憧れていた。




