4話 目覚め
「……んっ…………はっ!」
目を開くと同時に勢いよく上体を起こす。
「いっ!」
ズキッと右腕に痛みが走った。……生きてる? 確認をするためにほっぺをつねってみる。
痛い……ちゃんと感覚もある……生きてるんだ……あのまま気絶しちゃったのか。ここは? 病院? 右腕をなるべく動かさないように辺りを見渡す。うん……多分病院だ。あの後ここに運ばれてきたんだ。
生きてることは確認出来たし、私のいる場所も分かった。後はミアさんだ……大丈夫かな? 気絶する前にミアさんの声が聞こえた気がするから大丈夫なはず……大丈夫……だよね……
気絶する前のことを考えていると一つ、とても気になることがあったのを思い出した。
魔物が倒れた時にそのすぐ近くにいた人のことだ。あの時は意識もはっきりしてなかったし視界もぼやけてて良くは見えなかったけど確かに人がいたはず……あの人が魔物を倒してくれたのかな。
考え事をしていると、この病院で働いてるナースの方が近づいて来た。
「目が覚めましたね、ここに運ばれてから丸一日寝てましたよ、体の方は今どんな感じですか?」
「……み、右腕が痛い……です……」
「他に痛む場所や違和感を感じる場所はありますか?」
「背中が……痛いです……後……痛い場所は……ない……です……」
「分かりました、今日中は安静にしてて下さい。治癒魔法で処置されていたとはいえ完治している訳ではないので」
「は、はい……分かりました……」
「では失礼します」
「す、すいません! 少しだけ聞きたいことが……」
この場を去ろうとしていたのを呼び止めた。ミアさんのことがどうしても気になり、知らないかもしれないけど聞いてみることにした。
「なんですか?」
「み、ミアさんがどこにいるか分かりますか?」
「ミアさん……?」
困り果てた表情で喋る。
「すいません、どなたか分からないです。ここにはミアさんという方は来てないですね」
「そ、そうですか……あ、ありがとうございます……」
「どういたしまして、では失礼します」
ミアさん……助かっていたとしていても足を怪我していた。血、出てたし……ちゃんと治療を受けてるといいけど。
今の私には病院のベッドの上でミアさんの安否を祈ることしか出来ない。探そうにも今日中は安静にしててと言われた。そのことを無視して探しにいっても病院に迷惑をかけてしまう。だったら今日は安静にしていち早く怪我を治すことに努めることにした。
気持ちでどうにかなることでもないと思いつつも、今日中に絶対に治すと心の中で強く思った。
それからしばらく経ち再びナースさんが私の元にやってきた。
「体は大丈夫ですか?」
「は、はい……」
「良かったです。それから、あなたに会いたいという人が来てるんですけど今、会えますか?」
私に会いたい人? 予想外のことに驚いて黙ってしまう。
「身元はこちらで把握しています。あなたに治癒魔法で応急処置をし、私たちの元まであなたを運んできて下さった冒険者の方です」
冒険者? もしかしたらあの時、魔物の近くにいた人かもしれない……
「厳しいようでしたら無理にお会いになさらなくても大丈夫ですよ」
「……あ、会いたいです……」
治療をしてくれたお礼も言えるし、仮にあの場にいたとしたらミアさんのことをなにか知ってるかもしれない。
「分かりました。ではお呼びになってきますね、少々お待ちを」
「あ、ありがとう……ございます……」
冒険者かぁ……どんな人なんだろう。そんなことを考えていると少し遠くの方からナースさんの声が聞こえた。
「こちらです」
声が聞こえる方を見るとナースさんと一緒に歩いてくる人が見えた。あの人が冒険者かな?
スラッとした体に腰まで届く澄み切った空のような長い水色の髪を揺らしながら歩いてくる。人見知りで緊張しちゃうけど私の方を見てくる透き通った穏やかな瞳で少しだけ緊張が和らぐ。
「私はこれで失礼します」
案内を終えたナースさんがこの場を去ろうとする。
「ここまでの案内ありがとうございました」
「どういたしまして、では」
そう二人が軽く言葉を交わしナースさんはどこか別の場所へ向かった。
「………………」
冒険者さんが私を見つめてくる、ただ見つめてくる。ん……なんだろう……なんでこんなに……あ! 挨拶しなきゃ。
「こ、こんにちは! し、シラズ・ユウと言います。私のことを治療してここまで運んで下さりありがとうございました!」
緊張してしまって挨拶と同時に勢いでお礼もしてしまった。もう一回しっかりお礼しなきゃ。
すぅーふぅ……
「わ、私のことを治療して下さり……ありがとう、ございました……ここまで、運んでくれたのも……冒険者さんだと、聞きました、そのこと……についても、本当にありがとう……ございました……」
途中、言葉が詰まったり声が小さくなってしまったけどお礼を言うことが出来た。
「…………………………」
まだ見つめてくる……聞こえてなかったのかな? もう一度話そうとした時だった。
「あ、ああごめんなさいちゃんと聞こえてました。どういたしまして、今のは癖というかなんというか……」
「癖……?」
「そうですたまにやってしまうんです。だからあんまり気にしないで下さい。改めてまして、私はサラセニア・テーティスです」




