3話 襲来
近くに魔物がいるという呼び掛けに対し教室中の人達は特別焦る様子もなく困惑したり戸惑っているばかりで急いで避難しようとする人はいなかった。
それもそのはず……国の中に魔物がくることなんて滅多にない。ましてや自分たちの近くに魔物がくるとも思ってもなかった。一応学校でも魔物が襲来した時のための訓練などはしていたけどいざその時になっても実感が湧かない人の方が多い。
私自身もそこまで実感が湧いていなかったけど焦っている教員の表情や「早く! 早く!」と伝えてる様子、今この時にも外でなっている大きな音や悲鳴を聞いて早く逃げなきゃと思い動き出した。他の人達も教師の指示に従って落ち着いて行動している。
教室の中にいた人たちの半分くらいが廊下に出た時だった。
背後の方からなにかが崩れる音が聞こえ、その瞬間一人の生徒の叫び声が上がり、連鎖をするように教室の中にいた人たちが一斉に走り出した。
なにが起きたのかを確認しようと後ろを見ると壁が壊れ、その部分から巨大な翼を体に備えた魔物が入ってきていた。
「クアッーーーー」
逃げなきゃ……魔物を一目見てそのことだけで頭がいっぱいになり、走り出そうとしている時だった。
魔物の方に体を向けたまま動こうとする気配もなくただ座り込んでいるミアさんの姿が見えた。
魔物がこっちに向かってきてる! このままだとミアさんが!
「ミアさん!」
一緒に逃げようと急いで駆け寄る。
「え……?」
ハッとした表情で私の方を見てくるミアさんを見ると魔物が壁を壊した時の破片が当たったのかミアさんの足から血が流れていた。思わず目を覆ってしまいそうになり、心臓の鼓動が早くなる。
これじゃミアさんが歩けない……どうしよう……肩を貸して走る? 駄目だ追いつかれる……どうにかして足止めをする? 無理だ私じゃなにも出来ない……どうする……
「逃げないの?」
ミアさんが淡々と喋る。
「私のことは置いてって早く行って、このままだとシラズさん死んじゃうよ」
魔物が迫ってきていてミアさんもここにいたら死んでしまうかもしれないのに他人事のように話す様子になんて言ったらいいか分からなくなった。
歩けないからもう諦めてるのか……いや今はそんなことを考えてる暇じゃない! とりあえず動かなきゃほんの少しでも生きれる可能性があるなら。
「ミアさんごめんなさい」
痛いと思うけど無理やりミアさんに肩を貸して立たせて一緒に歩こうとする。
「うっ! 何をしてるの? 早く離して! 私のことはいいから!」
「離しません」
「シラズさん死んじゃうよ! 私は大丈夫だから!」
さっきまでの落ち着いていた様子とは打って変わって焦っていた。
「このペースだと追いつかれる、お願い! 私を置いていって!」
「いやです!」
涙混じりの声でそう伝える。
「……なん……で……」
後ろを確認しながら全力で進む。
すぐそばまで鳴き声が聞こえた時だった。
「危ない!」
魔物が大きな口を開き二人まとめて噛まれる寸前、勢いよく前に飛び込みなんとか避けることが出来た。でも一回きりで魔物の攻撃が終わるはずもない。
次の攻撃がくる……倒れ込んでる状態で避けれる訳ない……どうする……?
急いで起き上がろうとするも魔物の方が早い……やばい! このままだとミアさんもろとも……
一瞬でもいい魔物の動きを遅らせるんだ。必死に頭を回転させ、一つだけ思いついた。
魔法だ……私の魔法を使えば……でも通じるのかな? 私が出来るのは魔力を消費してただ雪をだすだけ……けどもうこれしか……
ふぅ……よし
魔物が次の攻撃をしようとした瞬間……魔力を全て消費して出せるだけ雪を出した。
視界を悪くさせることは出来たはず、今のうちに!
「雪……?」
驚いてる様子のミアさんに再び肩を貸そうと立ち上がろうとしていると視界が悪くなったからか魔物ががむしゃらに動いていた。
「うっ!」
「シラズさん!」
魔物の頭にぶつかり思い切り吹っ飛び体を壁に打ちつけた。
「っ! っひゅ! っは! はっ! ひゅっ! 」
息が上手く吸えない……苦しい……意識が……まだミアさんが……
視界がぼやけながらも魔物の方を見ると私の方に近づいてきていた。
ミアさんの方には行ってない……良かった……
もう意識が……魔物がきてる……このまま死ぬのかな……まだ読みたい本とかあったんだけどなぁ……
「シラズさん! シラズさん! 動いて! 」
ミアさんの声が聞こえる……ごめん……なさい……もう体が……
魔物が大きく口を開いて突進してくる。
うぅ……
もう駄目かと思った瞬間、魔物の胴体から血が出ると同時に首が落ち倒れた。
なにが……起きたの……? 消えかかってる意識で魔物の方を見るとそこに人が立っていた。




