第4章:コーデックス・インフェルヌス
中央ファイル保管庫の立ち入り禁止区域は、まるで石化した森に生える金属の樹木のように、天井に向かってそびえ立つファイルキャビネットが迷路のように立ち並ぶ。空気は古紙の匂いで充満し、静寂を破るのは換気システムの微かな音と、時折聞こえる金属の軋む音だけだった。
コルヴァスはリベットに追われ、通路を慎重に進んだ。彼らは警戒を強めていた。敵地の奥深くにいることを、少しでも間違えれば身元がばれ、任務が危うくなることを。
「ここはゾッとするな」リベットは、換気システムの音にかき消されそうになる声で囁いた。「まるで忘れられた秘密の霊廟みたいだ」
コルヴァスは頷いて同意した。官僚的な単調な仕事に慣れきった彼でさえ、立ち入り禁止区域の重苦しい雰囲気は不安を掻き立てた。まるで見えない目で監視され、詮索されているかのようだった。
彼らはリベットが用意してくれた地図を調べた。それは、盗んだ設計図とささやき声から彼がまとめた、立ち入り禁止区域の大まかな概略図だった。地図には、彼らが求めている報告書、つまり省の腐敗を暴く可能性のある文書が、「コーデックス・インフェルヌス」と名付けられた区画にあることが示されていた。
「コーデックス・インフェルヌスか」コルヴァスは呟いた。「不吉な響きだな」
「そうだ」リベットは言った。「省が最も機密性が高く危険な情報を保管している場所だ。誰にも見られたくない情報を」
彼らは地図を頼りに、書類棚の迷路をゆっくりと、そして骨の折れる作業で進んでいった。部署の職員との接触を避けるため、彼らは注意を引かないように注意しなければならなかった。
歩きながら、コルヴァスはアクセス制限区域の書類棚がメインホールで見たものと異なっていることに気づいた。これらの書類棚は黒曜石のような暗い素材で作られており、精巧な彫刻と神秘的なシンボルで飾られていた。かすかな悪意に満ちたエネルギーを放っているようだった。
また、彼はセキュリティ対策がはるかに高度であることにも気づいた。通路はレーザー砲と高度なセンサーを備えたロボット歩哨によって巡回されていた。書類棚はフォースフィールド、動体検知装置、そして圧力板で保護されていた。
「気をつけないと」コルヴァスは言った。「ここは要塞だ。」
「分かっている」リベットは言った。「だが、もうすぐだ。コーデックス・インフェルナスはすぐそこだ。」
彼らはゴシック体で「コーデックス・インフェルヌス」と刻まれた巨大な鋼鉄の扉に辿り着いた。扉は、黒い鎧を身にまとい、エネルギー兵器を構えた二人の屈強な執行官によって守られていた。
「これが最後だ」リベットは囁いた。「最後の難関だ」
コルヴァスは深呼吸をして執行官たちに近づいた。心臓は激しく鼓動していた。まるで日常業務をこなす整備作業員の一人であるかのように、自信に満ちた態度を装った。
「整備班です」とIDバッジを見せながら言った。「扉の構造的健全性検査に来ました」
執行官たちは疑わしげな目で彼を見つめた。「構造的健全性検査ですか?」一人が言った。「構造的健全性検査については知らされていません」
コルヴァスは鞄から用紙を取り出した。「用紙666-Aです」と彼は言った。 「構造健全性検査許可書。三部複写、監督者の署名、警備員の承認、所長の副署、異次元公証人の公証済み。」
執行官は用紙を受け取り、目でざっと目を通した。「この用紙は…過剰だ」と彼は言った。「だが、きちんと整っているようだ。」
彼は少しためらい、頷いた。「わかった。」と彼は言った。「だが、許可されていない物品がないか検査する必要がある。前に出て。」
コルヴァスとリベットは心臓がドキドキと高鳴る中、前に出た。彼らは許可されていない物品を運んでいることを知っていた。ペーパークリップジャマー、盗まれた設計図、そして武器として使用できるメンテナンスツールだ。
執行官は手持ちのスキャナーをコルヴァスに向け、起動させた。スキャナーは光線を発し、彼の体をなぞった。
コルヴァスは息を止め、スキャナーが不正なアイテムを検知するのを待った。しかし、何も起こらなかった。スキャナーはビープ音を鳴らし、スキャン完了を知らせた。
「クリア」執行官は言った。「次へ」
彼はスキャナーをリベットに向け、起動させた。再びスキャナーはビープ音を鳴らし、スキャン完了を知らせた。
「クリア」執行官は言った。「進めて構いません」
コルヴァスとリベットは安堵の表情を交わした。どうにかスキャナーを回避できたのだ。
二人はドアに近づき、施錠機構を調べた。それは歯車、レバー、ダイヤルが複雑に絡み合ったシステムで、分厚い透明な装甲で保護されていた。
「これは厄介だ」リベットは言った。「この錠前を破れるかどうか自信がない」
コルヴァスは鞄に手を伸ばし、ペーパークリップを取り出した。彼はペーパークリップを小さく複雑な形に曲げ、施錠機構に差し込んだ。
歯車が唸り、レバーがカチカチと音を立て、ダイヤルが回転した。施錠機構が振動し始め、甲高い音を立てた。
執行官たちは驚きで目を大きく見開き、扉を見つめた。「何が起こっているんだ?」と一人が言った。
コルヴァスは彼らを無視し、鍵を掛け続ける作業を続けていた。額から汗が流れ落ち、集中力で手が震えているのを感じた。
突然、施錠機構がカチッと音を立てて開いた。扉が内側に開き、暗く洞窟のような部屋が現れた。
「入れる」とコルヴァスは言った。「行くぞ」
当惑する執行官たちを後に残し、彼らはコーデックス・インフェルナスへと足を踏み入れた。
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コーデックス・インフェルナスは、コルヴァスがこれまで見たことのないようなものだった。それは広大な地下金庫で、書類、巻物、そして大冊が山積みになっていた。空気は古びた羊皮紙の匂いで充満し、静寂を破るのはかすかな紙擦れの音だけだった。
部屋は揺らめく蝋燭の灯りで薄暗く照らされ、長く不気味な影が壁に踊っていた。壁自体も精巧な彫刻と神秘的なシンボルで覆われ、官僚主義の恐怖と次元間の混沌を描いていた。
コルヴァスは背筋に寒気が走るのを感じた。ここは単なる情報の宝庫ではない。悪の宝庫だった。
「ここは省が最も暗い秘密を保管している場所だ」リベットは震える声で囁いた。「誰にも知られたくない秘密を。」
彼らは慎重に部屋の中を進み、積み重ねられた書類に目を走らせた。省の腐敗を暴く報告書、腐敗した役人たちを失脚させる文書を探していた。
歩きながら、コルヴァスはコーデックス・インフェルヌスの中にある文書が、メインホールで見たものとは異なっていることに気づいた。文書は奇妙な古風な言語で書かれ、革と金属で装丁されていた。かすかな悪意に満ちたエネルギーを放っているようだった。
また、セキュリティ対策が以前よりもさらに高度になっていることにも気づいた。部屋は魔法の結界、見えない障壁、そして動く守護者によって守られていた。
「慎重に行かなければならない」とコルヴァスは言った。「ここは厳重に警備されている。」
「分かっている」とリベットは言った。「だが、もうすぐだ。我々が探している報告書は『クリムゾン・ファイル』というセクションにある。」
彼らは地図を頼りに、文書の迷路をゆっくりと、そして骨の折れる道のりを進んでいった。魔法の結界、見えない障壁、そして動く守護者を避けるように注意しなければならなかった。
歩いていくうちに、彼らは次々と罠やパズルに遭遇した。彼らは難解な謎を解読し、複雑な方程式を解き、危険な迷路を進まなければなりませんでした。
コルヴァスは自身の創意工夫と機転の利く能力に驚嘆した。官僚主義に関する知識、人を動かすスキル、そして新たに得た力を駆使して障害を乗り越え、コーデックス・インフェルヌスの奥深くへと進んでいった。
ついに彼らは「クリムゾン・ファイルズ」と名付けられた区画に辿り着いた。入り口は巨大な鉄の門で守られ、複雑な施錠機構で封印されていた。
「これが最後だ」リベットは囁いた。「最後の障害だ」
コルヴァスは門を調べた。それは堅固な鉄で作られ、精巧な彫刻と神秘的なシンボルで覆われていた。施錠機構は歯車、レバー、ダイヤルが複雑に絡み合ったシステムで、分厚い透明な装甲で保護されていた。
「これは無理だ」コルヴァスは言った。「この錠前を破れるとは思えない」
「試してみるしかない」リベットは言った。「エセルの運命はそれにかかっている」
コルヴァスは深呼吸をし、鞄に手を伸ばした。彼はペーパークリップを取り出したが、それは普通のペーパークリップではなかった。官僚機構の力が宿った魔法のペーパークリップだった。
彼はペーパークリップを小さく複雑な形に曲げ、施錠機構に差し込んだ。
歯車が回転し、レバーがカチッと音を立て、ダイヤルが回転した。施錠機構が振動し始め、甲高い音を立てた。
突然、門が勢いよく開き、薄暗い小さな部屋が現れた。
「入れるぞ」とコルヴァスは言った。「行くぞ」
彼らは心臓が高鳴る中、クリムゾン・ファイルの部屋に足を踏み入れた。
部屋は小さく円形で、壁は滑らかに磨かれた石でできていた。部屋の中央には台座があり、その上に一つの物が置かれていた。革装丁の書物だ。
その書物は古くて擦り切れており、ページは黄ばんで脆くなっていた。それは精巧な彫刻と神秘的なシンボルで覆われ、官僚主義の恐怖と次元間の混沌を描いていた。
これこそが彼らが探し求めていた報告書であり、省の腐敗を暴き出す文書だった。
コルヴァスは震える手で台座に近づいた。手を伸ばして書物に触れ、指先で滑らかな革の表面をなぞった。
指先が触れた瞬間、エネルギーの波が体中を駆け巡った。奇妙なうずきを感じ、広大で古代の何かと繋がっているような感覚を覚えた。
書物が輝き始め、彫刻が不気味で異次元的な光で部屋を照らした。空気がエネルギーでパチパチと音を立て、低い音が部屋を満たした。
突然、声が部屋中に響き渡った。深く、響き渡る声は、まるで書物そのものから発せられているようだった。
「それで」と声は言った。「あなたは真実を求めて来たのですね。」
コルヴァスは凍りついた。心臓が激しく鼓動していた。彼は自分が一人ではないことを知っていた。
「誰だ?」震える声で彼は言った。
「私は地獄の写本の守護者だ」と声は言った。「そして、お前のものではないものを奪うことは許さない。」
部屋の中央に人影が現れた。背が高く、威厳のある人物が黒い鎧を身にまとい、燃え盛る剣を振りかざしていた。
地獄の写本の守護者が到着したのだ。