アキちゃんのお守りに助けられました
いらっしゃいませ!
どうぞ楽しんでいって下さいね!
「さくら?気が付きましたね?……良かった。」
「素敵な夢を見ていたのよ?青いバラの少女がいたの」
「……」
「凄く綺麗な瞳をしていたわ。思わず引き込まれそうになった時に、龍二さんに抱き締められて……そっか、助けてくれたのね?」
「さくらがさくらで無くなるような、存在が書き換わるようなそんな気がしたのですよ」
「そう…私ね、トカゲの気持が少し分かった様な気がするわ。あの青いバラの少女、彼女を見た時にね、強い憧れを抱いたわ。自分もそうありたいと、心の底から願ってしまった。」
「今はどうですか?まだ、その様に感じますか?」
「それ程強く意識はしていないけれど、知らなくても良いことを知ってしまった。そんな感じはする。」
龍二は心配そうにさくらの眼を見つめている。明らかに何かに干渉されたか、共鳴してしまったのだろう。ただの夢であるはずが無かった。
「コンコン」
ドアがノックされた。ソルも異変を感じたのだろう。
『大丈夫かしら?』
「ええ。…いえ、少し話をしましょう。」
場所をリビングに移して、ソルにもさくらの夢の話を伝えた。
『青いバラの少女ね。私は聞いたことが無いわね。夢魔の類いかしら?』
「恐らくはその様なレベルでは無いですね。さくらの存在が書き換わる所でしたから。」
「彼女は悪い存在では無いわよ?」
さくらは惚けた様に頬を染めている。
『そうだとしても、存在の影響力が大き過ぎるわね。少なくともさくらには危険だわ。』
「問題は何故さくらと繋がったかです。」
龍二はさくらの手を取り、もう殆んど泣顔になっている。
その時、さくらの胸元から温かな光が拡がって、さくらの體を包み込んだ。
「え?……恵みの神様。……レイヤちゃんも?……いや、レイヤちゃん!それ酷い!」
さくらには何か聞こえているようだ。
「フフフッ。ありがとう。」
「さくら?」
次第に光は薄くなり、アキから貰った首飾りへと吸い込まれて行った。
「あのね。恵みの神様が私に祝福をしてくれたの。そして、レイヤちゃんと話をしたわ。レイヤちゃんったら、貴女はそんなに綺麗になれないから、諦めなさいって言うのよ?酷いわ!」
『フフフッ!』
「ぷっ。そ、それは…」
「もう!何よ!二人とも!」
ソルと龍二は、膨れっ面のさくらに思わず笑ってしまった。
「すっかりいつものさくらですね。」
『そうね。安心したわ。』
「アキの首飾りに助けられたのね。ありがとう。」
さくらは胸元の首飾りを両手に包み込んでお祈りをする。
もう外は少し明るくなって来ていて、鳥たちのさえずりも聞こえてきた。
さくらは外に出て、昇って来る朝日を見る。
「見て!今日が生まれるわ!」
『フフフッ。さくららしいわね?』
ソルは両手を広げて、朝日に祈る。
すると、一瞬だけ陽の光が強くなった。
「凄いわ!ソルがやったの!?」
『フフフッ。大サービスよ?』
「ホントに太陽の女神だったのね!」
『あら、失礼じゃない?』
朝日の中で、そう言って笑い合う二人は本当に仲の良い女神の様であった。
「私はこの鏡面界で産まれたけれども、不思議だわ、まるで違う世界に迷い込んだ気分だわ。」
『私達は今、神話の中に居るのよ。フフフッ、さくらは何の女神様かしらね?』
「やだ、私は女神なんかじゃ無いわよ。でも、そうね。頑張っちゃおうかな!」
「さあ、コーヒーを入れましたから朝食にしましょう。坂本もそろそろ来るでしょう。」
−−−−−−−−−−−−−−−
坂本は林道にオフロードバイクを停めて、山小屋に続く山道を一人歩いていた。
仕事は完璧にこなして見せたが、徹夜で動き回っていたのだろう。その強面の顔には疲れの色が見える。
「どうしたらいいんだ…いや、…」
何やらブツブツと独り言を呟きながら、それでも淡々と山道を登る。
そして目的地の山小屋へと到着したが、中々入口のドアに手が掛けられない様子である。近くの木の根元に座り、煙草に火をつけた。
「いい年こいて、根性無ぇよな…」
坂本が短くなった煙草を揉み消すと、山小屋のドアが開き、龍二が出て来た。
「おはようございます。休憩は終わりましたか?」
「ああ。宮川、終わったぜ。」
そう言って、胸ポケットから取り出したSDカードを龍二に手渡す。
「宮川、頼みがあるんだ。あのな………」
坂本は龍二に耳打ちする。
「…………なんと。まあ、私は構いませんが。」
そこへ、さくらとソルも出て来て、
「坂本さん、おはようございます」
『おはよう』
「ああ、おはよう。」
坂本は、ソルの前まで歩いて行くと、
「ソル。俺と決闘してくれないか?」
『…え?』
「はい?」
「俺が勝ったら、俺の女房になってくれ」
またまた赤鬼の形相になった坂本が、とんでもない事を言い出したのだった。
次回、坂本とソルの決闘!さて、その行方は!?
来週の土曜日に更新します!
お楽しみに!