さくら貝のブレスレットをもらいました
「お~い!さくら〜!」
眠っている琴乃を抱いたさくらが空を見上げると、坊が空から降ってきた。
「…朝っぱらから何してるのよ」
全くそんな事を言える立場ではないが、さくらは呆れ顔でそう言った。
「あははは!目が覚めたらさ、空から落ちてたんだ!」
坊は木の葉の様にひらひらと落ちてきて、草の上に大の字に横たわる様に着地した。
ちょうどさくら達の真ん中に寝転ぶ坊と、それを見下ろすさくらとソル、そしてマリカ。
「あー楽しかった!おはよう!」
「…何よそれ…。そんな事よりもほら、見て!世界樹から産まれたばかりなのよ?」
さくらは琴乃が驚かないように、そろりそろりとしゃがみ込んだ。
「うわ〜…かわいいな。…寝てるのか?……ぴーちゃんみたいだなぁ…」
「フフフッ。そうでしょ?琴乃ちゃんよ?」
坊は起き上がってさくらに抱かれた琴乃を覗き込み、そーっと撫でてみる。
「ふわふわしてて…真っ白で…かわいいなぁ〜」
琴乃は坊に触られるとモゾモゾとくずったそうにしていたが、次第に気持ちよくなってきたのか、一つ大きく伸びをすると仰向けにお腹を見せた。
「マリカちゃんが仙桃をくれたのよ?」
仙桃を食べて満腹のふっくらしたお腹が、何とも可愛らしい。
「仙桃が好きなのか?そっか、やっぱりぴーちゃんとおんなじだな。」
「あら?そのブレスレット、どうしたの?」
ソルが坊の手首に巻かれたブレスレットに気付いて、不思議そうに尋ねる。
「ん?…ん~~!?……何だろな!?」
皆でしゃがんで手首から外したブレスレットを覗き込む。それはピンク色の小さな貝殻と小さな青い石で作られていた。
「まあ!綺麗な貝殻ね…さくら貝かしら?」
普段アクセサリーなどに興味が無いソルだが、とても気を惹かれる何かを感じているようだ。
「………それは、さくらのよ?…おまじないがしてあるの…」
「えっ!?私のブレスレット!?見たことがないけど!?」
「とてもとても古くて…とてもとても新しい物なのよ?…はい。」
マリカはブレスレットを手に取ると、さくらの左手に付けてあげる。
「そうね私も何となく、さくらへのギフトだと思うわ。誰がくれたのかしらね?」
「…………」
「さくら?」
ソルが返事の無いさくらを見ると、ブレスレットを付けた左手を見つめたまま瞬きもせず、頬を一筋の涙が零れ落ちて行くところであった。
「坊………ありがとう……」
「…ああ。ちゃんと届けたぜ。」
さくらはそのまま暫くの琴乃に顔を寄せながら、静かに静かに祈り続けたのであった。
次回!
『いつもの幸せの始まり』
お楽しみに!




