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仙桃の奇跡が起こりました

今回から『限りなく人間に近い僕達』のネタばれを多く含みます!

『限りなく人間に近い僕達』を先に読んで頂けると、登場人物やストーリーが繋がります!

御容赦下さい!

さくらとソルが昨日植えた仙桃の種は、一晩で腰の高さまで成長して見せたが、何と芽吹いたのは世界樹の若樹であった。


以前ババ様から、「仙桃の奇跡は何が起こるか分からない。その効果は人それぞれだからね」と、聞かされていたのだが、そんな事はすっかり忘れているさくらである。


『フフフッ…』


ふわりと吹いた風に乗って、微かに笑い声が聞こえた気がして辺りを見回す。


『あら、何かしら?』


奇妙な気配がしたのでそちらを見ると、地面の一部がモグラ塚の様にモコモコと盛り上がり、ボコッと音を立てて陥没した。


「ヴオォーーッ!!」


次の瞬間、穴の奥から恐ろしい咆哮が響き渡った。


「きゃー!!なになに!!」


『さくら!!下がって!!』


ソルは咄嗟に大きな光の盾を展開する。


「あはははっ!ひゃっほー!!」


「ボン!!」という音と共に、穴から何かが飛び出してきた。


「…えーー!?」


『あらまあ。』


「ドッコラせっと!ふんっ!!」


続いて穴から這い出てきたのは、毛むくじゃらの筋肉達磨だ。


「あはははっ!!さくらみーっけっ!!」


「……坊じゃないの……何で!?」


「遂に堀り抜いたぞ!!オヤジ!俺は遂にやったぜ!」


毛むくじゃらの筋肉達磨は、何故か膝を着き、天を仰いで号泣している。


『はぁ…これも仙桃の効果なのかしら?』


そして、坊と毛むくじゃらの筋肉達磨は抱き合って喜んだかと思うと、ヘンテコな喜びのダンスを踊り始めたのだった。


−−−−−−−−−−−−−−−


俺の名はコマ。土の民だ。


俺達土の民の男は、人生を掛けてたった一本の穴を掘る。生きるという事は、穴を掘るということだ。


俺のオヤジも爺さんも曾祖父さんもその前からずっと、穴を掘ってきたのだ。


その穴をみれば、その男の生き様が解る。その想いが、その命が、その全てが刻まれているからだ。


そして、そして俺は遂にやり遂げた。


今迄誰も成し得なかった、天に繋がる道を掘り上げたのだ。


天は光と緑に溢れ、太陽の女神が俺を出迎えていた。


感極まって涙する俺に、女神が祝福の言葉をかける。


『はぁ…これも仙桃の効果なのかしら?』


その言葉の意味は分からなかったが、やり遂げた俺に対する最高の賛辞である事は理解出来た。


俺は『歪み』の神であるロキ様と共に舞い、『太陽の女神』に捧げる。


「ロキ様。お導きを感謝致します。」


そして、俺はまた穴を掘るために里への帰路についたのであった。


−−−−−−−−−−−−−−−


さくらとソルが、突然現れて奇妙な行動を取る二人に唖然としていると、毛むくじゃらの筋肉達磨は何かに満足したかの様な晴れ晴れしい笑顔を残して去って行った。


「…で、坊は何してるのよ?」


「あははは!トカゲを見に来たに決まってるだろ!」


「いやいや…」


「おーい!早く来いよ!」


『フフフッ…』


先程と同じ様に風が吹くと、世界樹の淡い光を巻き込むようにつむじ風となり、次第に幼い女の子の姿となった。


「あれ?何処かで会ったかしら?」


ぴーちゃんに良く似た感じの可愛らしい女の子の雰囲気に、さくらは確かに覚えがある。


『あ…』


ソルはその少女を見た瞬間に、固まってしまった。


『ソル、久しぶり。さくらは、そうね…初めましてかしら?』


『恵みの…神様…』


「えーーーっ!!」


何と、まだあどけなさが残るその少女こそが、いつも祈りを捧げている恵みの神様なのであった。



次回『皆んなが世界樹に集りました』

来週の土曜日に更新します!

どうぞお楽しみに!

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