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12.赤髪の美女

夜の帳が降りるころ、街の喧騒は徐々に静まりつつあった。暗がりの中を歩きながら、陽斗はつぶやく。


「情報収集もろくに出来なかったな」


街のあちこちに見える荒廃した建物、疲れ切った人々の顔。そのどれもが、この世界がどれほど深刻な状況にあるのかを物語っていた。王女も溜め息を漏らす。


「まあ、初日はこんなものよ」


「飯にするか? 転移で森でも荒地でも行って、ゆっくり準備はできるが」


「そうね。一旦街を出ましょう」


王女が同意する。二人は周囲を見渡し、人気のない路地裏へと向かった。



暗がりの路地裏にたどり着いた二人が耳にしたのは、低く濁った男の声だった。


「おいおい、そんなに怯えることないだろう? 俺たちは優しくしてやるって言ってんだよ。」


「……!」


振り向くと、そこには赤髪の女性が二人の魔族の兵士に絡まれていた。彼女は小刻みに震えながら壁際に追い詰められている。兵士たちは卑猥な言葉を投げかけ、彼女の周囲を囲むように動く。


「おいおい、本気で怖がってるじゃねえか」


「これだから人間は可愛いもんだよな、なあ?」


「……魔王城に転移させるか」


陽斗が動こうとした瞬間、王女が腕を引っ張る。


「待って。なにか変よ」



その時だった。赤髪の女性が顔を上げ、不敵な笑みを浮かべた。


「……なんてね」


突然、女性は魔族の兵士に素早く接近し、鋭い一撃を浴びせた。一瞬の出来事に兵士たちは驚きの表情を浮かべ、次の瞬間には地面に転がっていた。


「ぐっ……! な、何だこいつ……!」


「調子に乗るからよ。お勉強になったかしら?」


女性は肩を軽く回しながら、まるで何事もなかったかのように余裕の態度を見せる。


その一部始終を見ていた陽斗と王女は、路地裏の影からそっと出てきた。赤髪の女性は彼らの存在に気付き、目を細める。


「あら、あなたたち……見てたの?」


王女はその顔をじっと見つめた後、驚いたように声を上げた。


「もしかして……リサ!」


「……なぜ私の名を?」


王女はフードを取り、涙ぐみながら顔を見せる。


「リサ……私よ、リヴィアよ!」


「リヴィア……? 本当に……あなたなの?」


リサは驚きの表情から次第に笑みを浮かべると、リヴィアに近づき静かに肩を抱いた。



「生きてたのね……本当に……」


「そっちこそ……ずっと気になってたのよ……」


リサはリヴィアを抱きしめたあと、陽斗に目を向け、にやりと笑った。


「で、この人は? リヴィアにもついに彼氏ができたってわけ?」


リヴィアは顔を赤くして即座に否定する。


「違うわよ! ただの勇者よ」


リサは興味深そうに陽斗を見つめる。


「勇者ねぇ……ずいぶん若いじゃない。まあ、リヴィアが勇者を連れてくるなんて、これも何かの縁。話があるからついてきて」


リサの誘いを受け、陽斗とリヴィアは新たな仲間との再会を経て、次の一歩を踏み出すのだった。


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