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第10話 魔物使役能力獲得。

 グレイゴーレムを倒してレベルアップした瑞樹を見ながら、Dはむふーと満足気に腕組みをしながらうんうんと頷く。D的にはもっともっと強くなってもらわないと困るのだが、無理せずに地道にやるしかない、という事なのだろう。

そんな風にDが思っていると、瑞樹と共に戦っていた魔狼は、はっはっと舌を出しながらDの元へと駆け寄っていく。


「ん~?どしたワンコ?ふんふん、相棒の傍にいたいって?なるほど。ワンコならこの世界にも『犬』『狼』という共有概念があるから外界に行っても修正力で消去されることは少ないかぁ。それに相棒の護衛にはちょうどいいしね……。よし!ワンコ!君に相棒の護衛役を命じる!同様に指揮権を私から相棒に移譲する!その命を持って相棒を守護しなさい!!」


「わふ!!」


 Dとしては魔狼を瑞樹のLVに対して使おうと思っていたが、見た感じ、瑞樹も自分の因子を引き継いだから魔物使役の技術もありそうだし、魔狼は彼のちょうどいい護衛になるだろう、と権限を瑞樹に譲っておく。

 いきなり現れて自分を殺すような存在よりも、瑞樹たちの方が魔狼も懐くし護衛役にもふさわしいと考えたのだ。


「一応魔物を収納できる指輪をあげとこうか。いざとなったらここから収納した魔物を出せるし、この中にしまっておけばダンジョンから離れても問題なく長期収納できるからね。ワンコもしまえることもできるはずだよ。」


「ん~。とりあえず相棒がLV10、ワンコがLV3、プリちゃんがLV1かぁ……。プリちゃんももっとLV上げる方法を探らないとなぁ。

 後は相棒は戦士職とかよりも魔物使役……魔獣使い(ビーストテイマー)、召喚師(サモナーとかそっち方面の素質があるっぽいね。あのグレイゴーレムを操作したのもそうだし、グレイウルフが懐いてるのもそうかも。まあダンジョンコアである私の因子が結構宿っているから、この迷宮から生まれた魔物に対して相性がかなりいいんだろうね。そっち方面の素質を伸ばすように頑張っていこうか。」


「魔物使役……そちら方面に素質があるのか……。」


 個人的にはやはり戦士になってバンバン倒しまくるというのは夢ではあったが、そこまでこだわる事ではない。

 魔物を使役して戦うというのならそれも立派な能力の一つであり、別に他から白い目で見られたり迫害される訳でもない。


「ただね~。あくまで私の因子を持ってるだけだから、私から生み出された怪物と言っても絶対服従とはいかないかなぁ。きちんとコミュをとって親愛度とかきちんと上げないと言う事聞かない可能性があるからね。例えばワンコなら撫でてあげるとか何か食べ物上げるとかだね。まあ十分懐いているから問題ないけど。

 召喚魔術や魔物使役はいかに召喚対象や魔物とコミュを取っていかにご機嫌を伺うかが最も大事なツボだからね。その辺は頑張ってね~。

 まあ、最悪私がシバき倒して脅して絶対服従誓わせるからさ!問題なし問題なし!」


 そういうとDはにっこりと太陽のように微笑む。だが、その反面瑞樹は(この子の下で働かされる魔物たちは大変そうだなぁ)と思わずげっそりとしてしまったのは仕方ないだろう。

 ん~。何か適当に良さそうな怪物はないかな~。とDはキーボードを叩きながらどんどん画面に出てきた魔物を検索していく。


「ここは切り札を切るべきか……?いやいや、まだまだ地脈からの魔力でコストが賄えないしなぁ……。コストが低くて扱いやすい魔物は……。魔獣系は狂暴だしワンコと被るしなぁ……。」


 ぶつぶつ言いながら白魚のような指を華麗に動かしながら、お嬢様のような可憐な顔を仮想ディスプレイとにらめっこをするD。

 グレイウルフは外に出ても長持ちするだろう、という事でまだ指輪分の一騎のストックがあるので、そこに何か適する怪物を入れておいた方がいいだろう、というDの考えである。

 彼女から「外界はクソまみれの敵ばかり!相棒はしっかり護衛しなくちゃ!」との事で空いてる枠があるのならその枠に一体入れておいて、グレイウルフは普段そのままに付き添わせておけばいい、との事である。


「あ、それじゃあの泥人形じゃなくてストーンゴーレムとかはどうなの?あれだと強そうじゃない?」


その姫奈の言葉に、ふむ、とDは顎に手を当てて考え始める。


「うーん。確かにいいかもね。ワンコで攻撃を仕掛けて、ストーンゴーレムが相棒の盾となればかなりいいと思うけど。ただなぁ。ストーンゴーレムは自立判断機能がへっぽこだからなぁ。アイアンゴーレムとか金属……マテリアルゴーレムにしたほうがいいかもしれないけど、ちょっと様子見をして調整するかぁ。後は気になる点もあるからちょっと試してみようか。」


 Dはそういうと、ぱちんと指を鳴らすとそ迷宮都市建設を行っているストーンゴーレムの一体が、ギギギとルーチンワークの行動を止めて重々しい足音を立てながらこちらへと歩いてくる。

 そのこちらへと近づいてきたストーンゴーレムを見ながら、瑞樹は心の中で、おおお……カッコいい!と思わず呟いてしまう。

 ストーンゴーレムは正確に言えばロボですらないが、やはりロボ系に憧れてしまうのは男の子のロマンである。

 Dの口ぶりでは、LVが上がればマテリアルゴーレム……アイアンゴーレムなども操れるかもしれない。俺……アイアンゴーレムが手に入ったら外見をめっちゃカッコよくするんだ……いや、ストーンゴーレムでも外見をカッコよくカスタマイズできるかも!と心の中で考えている瑞樹に対して、Dは自分の目の前に直立不動の体勢で真っすぐ立っているストーンゴーレムをん~とじろじろと見る。


「まあこれを相棒に渡すのもいいし、外見をカスタマイズしたのを渡すのはいいんだけど……他に気になることがあるんだよね。

 ワンコにこれやるとまた相棒やプリちゃんに文句言われそうだから、壊れても問題ないコレで試してみるかぁ。それじゃ相棒、ちょっと衝撃が来るかもだけど、痛みはないはずだから我慢してね~。」


 えっ?何をするつもり?とストーンゴーレムとアクセスした瑞樹は困惑した。

 そして、そんな彼を置いておいてDはストーンゴーレムの右手を片手で握りしめると、まるで発泡スチロールのようにいとも容易くその石で作られた右腕を握りつぶして粉砕した。

 そして、その瞬間瑞樹の右腕にも衝撃が走り、彼の右腕が衝撃で麻痺状態になってしまう。


「!?」


 思わぬ麻痺状態になった瑞樹を見て、Dは自らの頭を掻きながら、あーやっぱりなぁ。という言葉を口に出す。


「あーやっぱりそうか。相棒、結構魔物との相性がいい……ビーストマスターとしての才能があるから使役した魔物がダメージを受けるとフィードバック受けるんだ。

 今はゴーレムの右腕だから衝撃を受けた程度だけど、これが例えば使役している時にワンコが生命活動を停止した場合、相棒もその活動停止……ええと、有機生命体の”死”に引き込まれて死の感覚を味わう可能性もあるね。」


 そういいながら、Dはいともあっさりとストーンゴーレムの右腕を再生させ、石で構築された腕を元に戻す。それと同時に麻痺していた右腕も次第に感覚が戻ってきたので、瑞樹は右手を振って感覚を取り戻していく。

 なるほど、確かにビーストテイマー……モンスターテイマーであることの注意点は理解した。むやみやたらに使役している存在を突貫させて自爆させるような戦法を行えば自分の身が危ういし、そうでなくても無理に前線に立たせて使役魔物が死亡した場合自分も危ういので、きちんと戦術的に動かさなくてはならない、という事である。やはり何の代償もないのに優れた能力を得ることはできない。これが魔物使役スキルの欠点といえるだろう。だが、それでも何の能力がないよりは遥かにマシである。瑞樹は喜んでその代償を受け入れることになった。



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