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海と空の共鳴|心のぬくもり幻想舎

作者: 大野ちはる


「空が青いから海も青いのでしょうか。それとも、海が青いから空は青いのでしょうか」


放課後一人で教室に残り、窓の外を眺めていた少女はとある教師に声をかけられ、質問を投げかけた。


夏の熱を孕んだ日差しが、じりじりと二人の肌を焼いていく。


遠くでは甲子園の練習にいそしむ野球部員の声が聞こえて、余計体に熱がこもる感じがした。


「ずいぶんと唐突な質問ですね」


困ったときに頬をかく仕草は、彼の癖の一つ。


「先生はどうお考えですか?」


ビジネススマイルを浮かべる彼をまっすぐに見つめ、はぐらかされないように言葉を切り返した。


「…なぞなぞじゃないのなら、真面目に答えますが」


「ええ、問題ありません」


「海が青いのは太陽の光を吸収しているからで、空はいろいろな光を空気中で散乱させているから、人の目に優先的に映るのはのは青色だと言われています」


これでよろしいですか?と、彼はまたビジネススマイルを向けた。


すると、少女は少しむっとして一歩前に出る。


「私、海と空はずっと共鳴しているから青いのだと思っていました」


「ほう。なぜ、共鳴という表現を?」


「海と空の色が混ざり合っているように見えたからです。現に、曇りや雨の日も、海と空は同じ色をするでしょう?」


「なるほど、それはおもしろい考えですね」


「先生は…このような思考回路を持つ人間はお嫌いですか?」


少女は先ほどと同じようにまっすく彼を見つめ、はぐらかされないように詰め寄った。


「いいえ、嫌いじゃないですよ」


「なら、よかったです…ありがとうございます」


軽くお辞儀をする少女に、彼は先生らしく「またわからないことがあれば質問してくださいね」と返す。


日差しを浴び続けた肌は赤くなり、ひりひりと痛かった。


             fin.


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


ご覧いただきありがとうございました。

こちらでは毎週月曜日に、1分ほどで読める短編小説を2本アップします。


日々をめまぐるしく過ごす貴方に向けて書きました。

愛することを、愛されることを、思い出してみませんか?


ここは疲れた心をちょっとだけ癒せる幻想舎。

別の短編小説もお楽しみに。


前週分はInstagram(@ousaka_ojigisou)に先にアップしています。早く読みたい方は、あわせてチェックしてみてくださいませ。


大野

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