一人と一匹の朝食
「ほれ、これはおめぇのだ」
そう言って温めた牛のミルクを黒い仔猫の前に皿に出すファーム。
仔猫は首を右に左に傾け、何を言われているのやらわからない、という風貌を返しました。
「ん?何だ、どうした?これではダメなのか?」
自分の朝食を揃えながら、差し出したミルクを目の前にしても微動だにしない仔猫に少し苛立ちながら近寄るファーム。
「にっ!」
と少しその様子に驚いて、仔猫は毛を逆立てます。
「……すまん、そうか。おめぇさんまだ乳飲み子同然なんだな」
そう、この仔猫はどうやら食べるものも飲むものも初めて同然で、どう摂取していいのかわからないのです。
「どうどう、急須に入れて飲ませるかな。」
仔猫を手拭いにくるめたまま抱きかかえ、急須に移し替えたミルクを少し仔猫の口につけ、少しずつ、少しずつ与えてやりました。
ファームは自身の朝食も食べずもう空腹でしんどくてイライラしていましたが、自身が幼い頃に乳母にされていたことを思うと何だか「嗚呼、あの時はこんなに大変な思いをして育ててくださったのだなあ」と感慨深く思って我慢しました。
「どうだ?ミルクはうまいか?」
「んにぃ、んに」
「そうか、そうか、うまいか~!あっははははは!」
仔猫が投げかけた言葉に反応するように、しかし急須の口を両手で押さえ必死に飲みながら答える姿にファームはおかしくてついつい笑ってしまいました。
仔猫がある程度飲み終えたあと、ファームがいつもより遅い朝食をゆっくりと口に運び、その朝は終わりました。
ここまでありがとうございます。
最初から読んでいただいて、そしてこれからも続くので毎回読んでくださっていただけるほど、愛される作品にしていこうと思っています。
どうぞお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。