夜明け
黒い仔猫を拾った翌日。
ファームはいつも通り朝早く目覚めました。
まだ辺りは薄暗く、夜が明けきっていない模様でした。
「ふああああ、何だかまだ身体が重いが起きたからには仕方ない。」
ファームは半ば満足いっていない浅い睡眠から何とか目を覚まし、身体を「よいしょ」と起こしました。
「ああ、そう言えばかの猫はどうなんだろうか。」
そう呟きながら居間の方に行くと、黒い仔猫はテーブルの上の手ぬぐいの中で蹲っていました。
どうやらまだ眠っているようです。
「よしよし、よく眠っている。良かった良かった」
その声に気がついたのか、仔猫は耳をパタつかせてからファームの方を見るように首を上げました。
「にぃー」
「おお、おお、起こしてしまったか。すまないな。」
しかし、仔猫はカクンと首を傾げて「にぃーにぃー」と鳴くだけでした。
「取り敢えず元気になったのなら、良かった。本当に良かった。」
ファームは少し緊張しながらも仔猫を抱きかかえ、その腕や胸に伝わってくる命の温かさを感じました。
「命とはこんなにも温かく、こんなにも軽いようで重いんだなあ」
「……?」
一人と一匹はお互いがお互いを見つめ合いながら、感慨深くふけったのでした。
すると、ぐぅーとファームの腹の虫が鳴いたので
「あははは!そうだな、飯にするか!」
とやっと朝食にありつきました。
お疲れ様でした。
次話もよろしくお願い致します。