樵と仔猫
久しぶりに投稿します。
以前は違うアカウントで執筆していましたが、ログインできなかったため新たに心機一転してこちらで投稿させていただきます。
今回は絵本のような小説にしようと思ったのですが……文が長く細かいため絵本は出来そうにないです笑
それでも読んでいただけたら幸いです。
これはいつの時代だったか、黒猫とその飼い主の影の物語。
さあ、ここは森の奥深い樵の家。
とある村から外れて一人で生きていこうとした樵のファームは、自分で森から切り崩してきた木で家を建てて暮らしていました。
彼はある日、自分の木を切る作業場で仔猫の鳴き声を聴きました。
「にぃ……にぃ……」
それは今にも掻き消えそうな、か細い声でした。
声のする方へだんだん近づいていくと、茂みの中に捨てられていた黒い仔猫が一匹いました。
よく見ると茂みの木の枝で傷ついてしまったのでしょうか。
黒い毛でよく見ないと気が付きませんが、皮膚がベッタリと血や泥で汚れています。
「まあ、なんてこった。これはいかん!」
ファームはその子猫をゆっくりとそおっと掬い上げるように持ち上げると、それはもうできるだけ早足で、しかし仔猫を大きく揺さぶらないように慎重に持ち帰りました。
家に着くと、背負っていた薪やらそれをとる小道具やらはほっぽり出して、仔猫を洗面所まで連れていきました。
「にぃ……」
仔猫は目も開けられない様子でした。
「はぁ、どうしたもんか。わしはこれまで猫どころかネズミ一匹、人間さえも育てたことなぞない。どうしたもんか。」
ファームは今まで何かを育てる、助ける、救うという経験をしたことがなかったため、不安と緊張で動揺しました。
目の前の息も絶え絶えの仔猫を一体どうすれば助けられるのか。
「仕方ない!もう背に腹はかえられん!」
ファームは今まで使ったことの無い脳をフル回転させてから息を一吸いし、吐き出して言いました。
そして急いで先程ほっぽり出してしまった薪を囲炉裏にくべ、お湯を沸かし始めました。
お湯が少し沸いたところで、ファームは手ぬぐいを持ち出しお湯に浸してそれを少し空気に晒してから猫の肌にゆっくりと触れました。
「にぃぃぃぃ…」
「すまんなあ…少し勘弁してくれ、わしも物覚えが悪くてな……昔、乳母にしてもらったことしかできんのだ」
少し刺激になって痛いのか仔猫はまるで「ひぃひぃ」言わんばかりの鳴き声で訴えるも、ファームは一生懸命に宥めながらその身体を拭きました。
血も泥も大体落ちて、最初に拾い上げた時よりもすっかり見違えたので、ファームは仔猫を温かいふっくらした手ぬぐいの中に包み込んで寝かしつけました。
「今日は程々に、明日も早いからな。また明日、いやお前が帰りたいと思える場所が見つかるまでわしはいるからな。」
そう言ってファームは仔猫を眺め床に着きました。
お疲れ様でした。
次作どうなるか自分でも分からないので、のんびりゆっくり気長に待っていてください。
またあえる日まで。