ダンジョンベビーは困っている
実は私は人間じゃない。私の正体はダンジョンの元になるダンジョンベビーだ。
そんな私だけれど今とても困った状況にいる。
「一級生のハーティ・ワターさん!あなたに決闘を申し込む!」
食堂の入り口から男は大声で私を名指しした。
私は口の中にあるサンドイッチを飲み込むのを忘れた。
まさか、こんなが強引な方法でくるとは思っていなかった。
教員と上級生、下級生が入り乱れうるさかったお昼時の食堂は静かになる。
私のさっきまで話していたクラスメイトは私と男を交互に見る。
男はまっすぐ座っている私に向かった。
あー、食堂の入り口から遠い隅っこの方で食べてたのに意味ないじゃない。
あの一級女子何した。三級生に決闘を申し込まれるなんて滅多にないぞ。
しかもあの三級生、あの有名なフィアム・スピース
と食堂にいる人たちが口々に言う。
そんなことを言われているのも気にせず私の前にきた。近づいてきてわかったけど男は右手に紙を一枚持っていた。
この男、フィアム・スピースは断れない状況を狙ってきたね。
この学校のルールでよほどのことがない限り決闘を申し込まれたら断ってはいけない。
学校のルールを進んで破りたいと思ったことはないけど、このルールほど今破りたいものはない。
こんな観衆が多いところで断れば後でうわさになるに決まってるというのに。
成績以外で人の話題になるのは嫌なのに。
スピースは目の前にきた。座っているままだとスピースを見上げることになるので椅子から立ち上がる。
「ワターさん、貴方は私が国科に勧誘をしているというのに断りましたね」
「ええ、国科は私のようなあまり運動や魔力の扱いが下手なものが行くべきではないと思い断りました」
かれこれこのセリフをスピースには3回言った。しかしまだ諦めていなかった。だからこの決闘を申し込まれたのだ。
国科への勧誘されている?!それを断る?!
あの国科だぞ。断るか普通!
また食堂がうるさくなる。
国科、国家直属特別養成科
簡単に説明すれば国の偉い人になる出世コースの入り口、入ったら一年で魔力保持レベル、レベルが30以上は上がると言われていて頭がいいとか武術にすぐれている人たちしか行けない、国内でモンスターやダンジョンが発生したときには国の騎士団と一緒に討伐にいく最強の学科。
学科生もしくはこの科の卒業生の誰かに勧誘されなければなることができない。私以外の誰もがうらやむ花形の学科なのだ。
スピースに集中していた視線が私にも来た。あ、これもう決闘を断ったら余計目立つ。
「ワターさんが勝てば、もう国科への勧誘はやめます。しかし負けたら」
手に持っていた紙を私に見せた。
「国科に入ってもらいます。そしてその低いレベルを早く上げていきましょう」
紙は国科にしかない特別な勧誘届と転科届だった。
こうして私は決闘を受けることになった。
この決闘にはどうしても勝たなければならない。国科にどうしても入りたくない。というのには私がダンジョンベビーであることが理由なのだ。私はあなたたちに討伐される側なんだって