2.デフレを恐れてバブルに走る反緊縮
「日本はデフレ!積極財政でデフレ脱却!」
リフレ派・反緊縮・MMTを名乗る人々はもう何年もこのような念仏を唱え続けているが、うまい棒すら値上げされている現状がデフレなわけがない。
今の日本は密かに物価が上がり、それ以上に株価が急上昇する『バブル』。
それも異次元緩和によって作られた、過去最大の官製バブルだ。
アベノミクスの本質は、デフレ脱却でも景気対策でもない。
量的緩和で通貨価値を下げ、作為的に『バブル』を作ることだ。
90年代のバブル期と比較しても遜色ない求人倍率や株価を見れば、日本の景気が金融・財政政策によって強制的に引き上げられているのがわかるだろう。
それでもバブルの実感がない。
デフレで不景気。
そう思っている人のために、『バブルの定義』を確認しておこう。
バブルとは何だろうか?
株価や地価がどんどん上がること?
間違ってはいないが、大事な点が抜けている。
バブルとは、『資産価格が実体価値とかけ離れて高騰すること』。
例えばチューリップバブルにおいては、球根一個が一軒家に匹敵する高額で取引されていた。
食料にも薬にもならないチューリップをマイホームと交換するのは、明らかに過大評価。
このように経済的に根拠のない価格上昇が起きている状態を、バブルと呼ぶ。
価格が上がっても、経済的な裏付けがあればバブルとは言えない。
トヨタの株価が10倍になっても、その業績も10倍になっていれば妥当な水準だろう。
では、アベノミクスの株価はどうか?
10年間で株価は2倍以上になったが、日本の経済規模も2倍以上になっただろうか?
・2011年 日経平均 10,000円 GDP 497兆円
・2021年 日経平均 28,000円 GDP 553兆円
財政拡大や量的緩和で株価は上がったが、GDPは1割程度しか変わっていない。
経済は成長してないのに株価だけが上がった状態は、バブルと判断できる。
もちろん、近年の株高は日本に限った話ではない。
2020年のコロナパンデミックに対抗して世界中の国々が景気対策を行ったために、世界中の株価が急上昇した。
特に米国は大規模な量的緩和・給付金バラマキを行ったため、米株指数は日経以上のバブルになっている。
バブルとインフレは若干意味合いは異なるがいずれも価格の上昇(通貨価値の下落)であり、切っても切り離せない関係にある。
金融相場においては先に資産バブルが起こり、インフレが追従することが多い。
・バブル:資産価格が実体価値とかけ離れて高騰する
・インフレ:商品価格が上昇する
量的緩和において、日銀はマイナス金利政策と株式ETFの買い入れを通じて株価を押し上げた。
溢れたお金は株式市場から商品市場に流れ込み、さらに国債発行も加わってインフレ率を引き上げていく。
2021年ではまだインフレ目標2%を達成していないが、政府のバラマキは間違いなく物価や株価、不動産価格を上昇させた。
生産者物価の上昇が消費者物価に転嫁されるまでにタイムラグがあること考えれば、今後インフレはさらに加速していくだろう。
当然、物価や株価が上がったところで実体経済が拡大したわけではない。
マスクの値段が3倍になったからといって、機能性が3倍になったわけではない。
アベノミクスはバブル(実体を伴わない価格上昇)をもたらし、人々に偽りの希望を与えただけだ。
もしも目標がCPIではなく株価2%であったなら、アベノミクスは大成功と判定されていただろう。
もっとも年率2%どころではない上昇で、とっくに出口戦略に向かうことになっていただろうが。
最近は日銀も緩和終了を恐れてか、コアコアCPIに目標を切り替えて出口から遠ざかろうとしているようだ。
自分が引退した後にどうなろうと構わないが、自分の任期中に危機が起こるのは避けたいらしい。
財政出動を行えば、日銀から借りた金を市場につぎ込むことはできる。
公共工事を割高で発注したり、Gotoで商店に補助金をバラまけば企業の業績を無理やり上げることは可能だ。
だが、それによって事業の価値が上がるわけではない。
公的支出は消費者の同意を経ないため、その事業が市場に必要とされていることを保証しない。
補助金やゼロ金利によって生き延びた企業は自助努力を忘れ、従来通り進歩のない供給を続ける。
改善の意思は失われてゾンビ企業が蔓延し、産業の新陳代謝は遅れていくのだ。
日本経済が30年も停滞を続けてきたのは、金融や財政の支援が足りなかったからではない。
世界が出口に向かう中でいつまでも緩和を継続し、ぬるま湯の中で企業を飼い殺しにしてきたからだ。
政府のバラマキで官製バブルを発生させることは可能だが、リフレ派の望むような物価上昇率を維持することはできない。
ましてや、借金で実体経済を成長させることなんかできるわけがない。
もしもそんなことができるなら、ソ連もジンバブエもインフレ率2%を維持して経済大国になっていただろう。
かつての社会主義国がそうであったように、国家ぐるみの粉飾で名目GDPを水増ししたところで、いつか化けの皮が剥がれる。
リフレ政策による経済成長なんてのは、計画経済の妄想でしかない。
続きはまた明日