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つかの間の休息


「あうぅ……まさか技を放った時点で居なくなってたなんて……」

「まぁまぁ。皆無事で良かったよ」

「リベラちゃんは無事って言えるか微妙だけどね」

「頭や首を痛めた訳じゃ無いので一先ず大丈夫そうですよ」


 ラースとの戦いを終えた僕達。

 目の前には次の場所へと繋がる扉が既に姿を現しているが、今の状態で突っ込んだ所で罠や魔物に対してまともに対応出来るとは思えない。


 移動をする前に、この場所で負った傷や消費した体力や魔力を回復する為にゆっくりと休憩を取る。


「にしても……そっか。リベラちゃんも出来る様になったんだね」

「……? それって全身に魔術を纏う奴?」

「それそれ。私は一人で遺跡を潜った時に使える様になったんだけど……」


 エルンの話を聞くに、魔術による全身強化はやはり窮地に陥った際に使えることがある様だ。

 だが、使える様になると言うだけで直ぐに使いこなせる訳でもないらしい。


 彼女も初めて使った時は激しい疲労に襲われ気を失いかけたと言うし、現にリベラも魔力の過剰消費と全身の疲労によって動けなくなっていた。


「エルンちゃんはいつも腕とかに限定して使ってたよね? やっぱり、消費が激しいから?」

「そうだねー。身体に掛かる負担とかを考えてもそう気軽に使える様な力じゃ無いし……。それに普通の遺跡に出て来る魔物相手だったらそこまでしなくても倒せるしね」


 最後に『ま、今回の敵は別格だったけど』と付け加えるエルン。

 その言葉の通り、彼女は滅多に使わない呪文詠唱も使って最後の大技を迎え撃っていた。


 詠唱破棄自体はそこまで難易度の高い技術では無いが、普段詠唱を行わないエルンが全力を出すとあれ程広範囲かつ高火力の魔術を使えるのかと驚いた。

 敢えて軽薄な態度を取り続ける彼女だが、やはりその技量は間違いなく高いと再認識する。


「……そう言えばリベラ、セレドゥの時の扉を潜って何か見えた?」

「あ、すっかり忘れてた!!」


 荒野に来る際、今まで通りであればリベラには誰かから見たセレドゥの光景も見えたはずだ。

 それどころの事態じゃなかったためにすっかり忘れていたが、一段落ついた今ならゆっくりと聞けるはずだ。


「うーんと。さっき見えたのはセレドゥでお祭りが開かれてる所だったかな」

「お祭り……。それもセレドゥでとなると、年に一度開かれる水遊祭かな?」

「うん、そうだった!!」


 セレドゥで毎年行われる水遊祭。

 他の国の貴族などもお忍びでやって来ると噂されるその祭りでは、普段から賑わっているセレドゥの街が更に人で溢れかえる光景が印象的だ。


 以前家族で訪れた時も、あまりの人の多さにうっかり父さんの手を離してしまった僕が迷子になってしまった事もあった。


「そのお祭りは何回目だったか思い出せる?」

「う~ん、流石にそこまで細かくは覚えて無いかも……」


 リベラはようやく少し動かせるようになった手で頭を抱える。

 もし彼女が何回目の水遊祭かを覚えて居ればどの年代を生きた人物の記憶なのかが探れたはずだが、そう簡単には行かない様だった。


「仕方ないよリオン君。あんま気にせずに行こう」

「そうですよ。それに、あの人も最奥がどうこうと言っていた気がしますし、遺跡の終点も見えて来たかも知れませんよ?」

「……確かにそうだね」


 レナの言葉でふと思い出す。


 ラースは最後の技を放つ前に『打ち破って最奥へ至るか』と言っていたはずだ。

 彼女の言葉を信じるならば、遺跡の最深部はもう目と鼻の先まで迫って居るのかもしれない。


 その考えに至り逸る心を宥めながら、今はとにかく休む事に集中する。

 無理に行動した所で状況が好転するとは思えない。


 特に今回の戦いで消耗の激しかったリベラやエルンはもう少し十分な休息を取らせてあげたい。

 溢れ出そうな好奇心を理性で宥め、僕はみんなが回復するのをじっと待ちわびるのだった。

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