惑星デュオン
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アシュラン兄ちゃん待ってよ!
アコモテが走って追ってくる。とても可愛い妹。いつも僕の後ろを追いかけてくる。長い髪の毛をみつあみにしてゆらゆらと揺らしている。僕に似て走るのが早い。あっという間に追いついてくる。
クイカが牧草を食んでいる。今日は僕がクイカの放牧当番だ。もともとシャポンから連れてこられた生き物だが遺伝子改良されてデュオンに環境適応している。良い乳が取れるし、毛は衣類になる。とてもおとなしい性格で、暴れたり、人間に危害を加えることはほとんどない。ただ、とてもすばしこく、伸びた毛を切ってやる作業が大変だ。
この星は農業と牧畜を主体としている。もう2000年も農本主義を貫き通している。肉は必要最小限しか食べない。2000年前にシャポンを離れた初期世代がそう決めたらしい。シャポンは科学であふれ、高度な文明が発達していたらしいが、初期世代が情報のほとんどを破棄し、科学技術のほとんどをロストテクノロジーとして封印してしまった。いまでは一部の関係者を除いて、誰もシャポンのことをほとんど知らない。ただ、科学の発達によって自滅したらしい、ということを学校で教わる。