表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水滸幸伝~王倫・梁山泊にて予知夢を見る~  作者: シャア・乙ナブル
79/167

第七十九回 孔明と孔亮

その日、孔亮(こうりょう)孔明(こうめい)の所へやってきた。


「孔亮ではないか。どうした?」

「きいたかい兄貴?」

「なにをだ?」


それによると姫様(ひめさま)考案(こうあん)水車(すいしゃ)なるもの、設置(せっち)(さい)手違(てちが)いで怪我人(けがにん)が出たらしい。怪我自体は打ち身や軽い捻挫(ねんざ)などで大した事はなかったようなのだが……(みな)を心配した桃香(とうか)()(ぐすり)処方(しょほう)したというのだ。


「なんと」

「それがな兄貴、手当(てあて)患部(かんぶ)に薬を()って布で巻くといった普通の内容だったんだが、何故(なぜ)か一点だけ他とは違うところがあったんだ」

「ほう。どんな?」

「布で巻く前に桃の葉か瓢箪(ひょうたん)の葉を入れていたというんだよ」

効能(こうのう)があるのか?」

「それは俺も専門(せんもん)じゃないからわからないよ。ただ、治るまでが随分(ずいぶん)はやく感じたそうだ」

「へぇ、そんな裏話(うらばなし)があったのか」

「桃香様の名声(めいせい)もうなぎ登りってね」


孔明は考える。(すで)に水車は完成し、その効果(こうか)が確認され現在(げんざい)中層(ちゅうそう)上層(じょうそう)設置(せっち)するための段階(だんかい)になっているはずだ。もしかすると王家村(おうかそん)の方にも利用(りよう)されるかもしれない。


「姫様も皇甫端(こうほたん)殿(どの)に教わっているとはいえ、独学(どくがく)の部分もあるだろうに(すご)いよなぁ」

「独学……独学と言えば先日(せんじつ)王英(おうえい)殿(どの)が頼み事をしに来たな」

「王英殿が? なんて?」

「最初は文字を教えて欲しいって話だったんだが……」


王倫(おうりん)自発的(じはつてき)勉学(べんがく)訓練(くんれん)(のぞ)ませるために発案(はつあん)した事に(から)んでいるだろうと推測(すいそく)した孔明。しかし話を聞くと扈家荘(こかそう)(むすめ)扈三娘(こさんじょう)に関係があるらしかった。


「この扈三娘、(となり)祝家荘(しゅくかそう)の三男と許嫁(いいなずけ)の関係にあったらしいのだが、どうもその関係を白紙(はくし)に戻されたようなのだ」

「へぇ、なんでだい?」

「王英殿が言うには三男が武芸に目覚めて修行(しゅぎょう)の為に村を出たからだとか言っていたが……」

「ははぁ、王英殿はそこに付け入ろうとしたんだろう?」

傷心(しょうしん)の彼女に恋文(こいぶみ)を渡す好機(こうき)だとは言っていた。しかし結局(けっきょく)その内容も私に丸投(まるな)げしてきたので、そういうのは鄭天寿(ていてんじゅ)殿(どの)に相談した方が良いだろうと言っておいた」


孔亮はそれを聞いて笑う。


「ははは、それは鄭天寿殿も災難(さいなん)だな。王英殿も果たして上手(うま)くいくのかね」

「上手くいくと言えば……」


孔明は声を少し下げた。


「先生の計画についてもだが……」

「うん?」

「私とお前は確かにここに来てから勉学に(はげ)んできた。先生もそれを認めて私達を(そば)に置いてくれている」

「ああ。昔の自分よりは成長しているという自負(じふ)はある」

「先生は確かに知恵者(ちえしゃ)だ。その先生すら梁山泊(りょうざんぱく)に来てもっと励まねばならないと思ったそうだからな。我らはまだまだだと思っている」

「まぁ……それは確かに」

「それでふと思ったのだが……」


孔明は孔亮に自分達が協力(きょうりょく)すれば呉用に対抗(たいこう)できるか(いな)かを()う。


「いや、いやいやいや。兄貴何言ってるんだよ。そんなの無理に決まってるだろ?」

即答(そくとう)か。まぁ私も同じ意見だ」

「だろ? 先生が(かり)諸葛亮(しょかつりょう)なら俺達兄弟は馬良(ばりょう)馬謖(ばしょく)だって」



※馬良

中国(ちゅうごく)後漢(ごかん)末期(まっき)から三国時代の政治家。馬謖の兄。


※馬謖

(なみ)(はず)れた才能の持ち主で、軍略(ぐんりゃく)(ろん)じることを好み、その才能を諸葛亮に高く評価(ひょうか)された。ただ主君(しゅくん)劉備(りゅうび)は彼を信用せず、白帝城(はくていじょう)臨終(りんじゅう)(むか)えた(さい)にも「馬謖は口先(くちさき)だけの男であるから、くれぐれも重要(じゅうよう)な仕事を任せてはならない」と諸葛亮に(きび)しく(ねん)を押したという。それでも彼を起用(きよう)した諸葛亮は(のち)に「泣いて馬謖を()る」事になる。



「それではお前は将来先生の足を引っ張ってしまうではないか」

「あ」

「まぁ、言いたい事はそこではない。肝心(かんじん)なのは……」

「俺達兄弟よりも即戦力(そくせんりょく)になりそうな知恵者が()にはまだいるんじゃないか? だろ」


孔明は(おどろ)いた。孔亮はにやりと笑う。


「ずっと兄貴を見てりゃ考えそうな事位わかるさ。それにそれは俺も考えてた」

「そうか。(たの)もしいな。お前を見て私も成長していたのだと実感(じっかん)できた気がするよ」

世辞(せじ)はいいよ。で? 何をどうする?」

「諸葛亮には司馬懿(しばい)という宿敵(しゅくてき)が立ちはだかってしまった。そのまだ見ぬ司馬懿が世に出る前に、我らでこちらの陣営(じんえい)に引き込む事が出来ないかと考えている」


孔明は自分より優れた知恵者ならば(おのれ)よりも強く呉用に推挙(すいきょ)する気でいたのだ。弟の孔亮もそんな兄の気概(きがい)を感じ取った。


「……いいね。面白(おもしろ)い。それであては?」

「それは……先生に聞きに行ってみようかと」

「……かぁー! (めずら)しく兄貴が格好(かっこう)いいと思ったらこれか!」

仕方(しかた)ないだろう。勉学に励んで来なかった我々にそういう知り合いはいないのだから」

「ま、違いない」


兄弟は笑いあっている。


「……ふ」


孔明の家の(とびら)の前には(たず)ねてきた呉用が()たが、そのまま(きびす)を返して自分の家へと戻って行くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ