表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水滸幸伝~王倫・梁山泊にて予知夢を見る~  作者: シャア・乙ナブル
100/167

第百回 白秀英真実を知る

戦袍(せんぽう)に身を包み長い(ひげ)(あか)(がお)の男を瓢姫(ひょうき)関羽(かんう)と呼んだ。その人物を鉢巻(はちまき)をしている怪しい男達以外は知っていた。先程(さきほど)まで舞台上(ぶたいじょう)貂蝉(ちょうせん)敵味方(てきみかた)に別れていたのだ。つまりこの人物は白秀英(はくしゅうえい)一座(いちざ)の者という事になる。


しかしあからさまに染料(せんりょう)と分かる赤ら顔の男の登場は相手側の思考(しこう)に混乱をもたらした。


「こ、この梁山泊(りょうざんぱく)狼藉(ろうぜき)を働こうとはな!」


関羽が叫ぶ。……声が若干(じゃっかん)裏返(うらがえ)っている気がしないでもない。周囲からは人の姿は見えないが(しげ)みからガサガサという音が聞こえる。


「お、おい囲まれてるぞ」

「梁山泊の奴等か!?」


男達は勝手な思い込みで動揺(どうよう)しはじめた。


「だから命令通り偵察(ていさつ)だけにしておけって……」

「て、手柄(てがら)をたてちまえばこっちのものなんだよ」


この見た目関羽も役者(やくしゃ)な訳で戦力としては期待(きたい)できない。周囲の者もおそらく一座の者だろう。そうなると男達がやけになった場合、戦える瓢姫一人に対して守る対象(たいしょう)が多すぎる事になる。


「……貂蝉のお姉ちゃんそれ貸して。あとそれも」


瓢姫は白秀英から玉錘(ぎょくすい)を受け取り関羽からは青龍偃月刀(せいりゅうえんげつとう)を受け取った。右手に青龍偃月刀、左手に玉錘の二刀流(にとうりゅう)である。


「……軽い」

「そ、それお芝居用(しばいよう)小道具(こどうぐ)だからとても武器には使えないわよ」

(かま)わない。大切なのは気分」


言うが早いか瓢姫は武器を構えて飛び出した!


「!?」


最初の男は武器を構える事も出来ずに青龍偃月刀を逆に持った瓢姫に()鳩尾(みぞおち)を突かれ(くず)れ落ちる。


強度(きょうど)のない小道具と言えども柄はそれなりの強度があり、さらに柄の先に力を伝えて突く事で強度の(もろ)い部分に力が分散(ぶんさん)破損(はそん)する事を(ふせ)いだ。


二人目の男には()り。鳩尾を蹴って気絶(きぜつ)させた。


「い、一撃!?」


青龍偃月刀をその場に手放(てばな)し三人目の男には()いた手で首の後ろに手刀(しゅとう)をみまって気絶させる。


「ば、化け物かぁ!」


四人目の男の剣を見切(みき)って余裕(よゆう)でかわし、あわせるように左手の玉錘で男の股間(こかん)を打ちつけた。男は(あわ)を吹いて倒れ込む。


「うわぁえげつない!」


見ていた関羽の赤ら顔が青い顔になり、混ざって紫色っぽい顔色になって自らの股間をおさえていた。想像してしまったものと思われる。


「お、俺達五人があっという間に全滅(ぜんめつ)!?」


最後の五人目は四人目の男が倒れ込む(さい)に瓢姫がその剣を奪い、五人目が一撃を防ごうとした剣ごと身体を真っ二つにした……と周囲には見えたようだ。本人も自分は死んだと思ったのか倒れて微動(びどう)だにしない。実際斬られたのは剣と鉢巻のみであった。その余りの手際(てぎわ)の良さに白秀英は口を開けてただ()()きを見ているだけだ。


「……終わった」


瓢姫は剣をその場に放り、青龍偃月刀を拾って戻ってきた。


「返すね」

「あ、うん。……お嬢ちゃん強いのね」


騒動(そうどう)が収まったと見て茂みから一座の者達が出てくる。


「秀英! 怪我(けが)はないか?」

「お嬢さん!」

「父さん、みんな。そういえばどうして……」


怪しい男達に気付いたのは白秀英だけでは無かった。そこへ彼女が飛び出して行ったものだから、皆彼女の危険を感じて対応できそうな道具を持って後を追いかけてきたというのだ。


「王倫様も無事でようございました」


白玉喬(はくぎょくきょう)の言葉で白秀英も王倫(おうりん)(鄭天寿(ていてんじゅ))に向き直り(まく)し立てる。


「王倫様! きっとこの者達は梁山泊の賊に違いありませんわ! (ひん)もなさそうでしたし間違いありません! 王倫様の財を狙って誘拐(ゆうかい)しようとしたんですわ! あまつさえお嬢ちゃんまで(なぐさ)みものにしようだなんて! あ、世話役の方は運が良かったですわね」


一座の者が思わず沈黙(ちんもく)してしまった。王倫(本物)は(かわ)いた笑みを浮かべている。


「し、秀英よ」


流石(さすが)に見過ごせないと思ったのか白玉喬が口を開こうとしたその時、


「王倫様」


王倫の背後に羅真人(らしんじん)公孫勝(こうそんしょう)の姿が現れた。瓢姫以外の皆が突然の事に驚く。


「これは羅真人先生に公孫勝殿」

災難(さいなん)にあわれたようですな」

「いえ、瓢姫のおかげで災難と言う程のものでは」

「ええ。実は姫様がおられるのであえて駆けつけようとはしませんでした。お許しください。すでにこの件、村にいる頭目(とうもく)達には一清(いっせい)に伝えさせてあります」


羅真人は公孫勝をとめ、別の指示を出したのも自分であると謝罪したが、王倫は先生に確信があったのなら謝る必要はないと返す。


「さすが王倫様は(うつわ)が大きい。その器の大きさを見込んで頼みがあるのですが」

「なんでしょう?」

「姫様を少しお借りしたいのです」

「瓢姫を?」


羅真人は瓢姫を見た。瓢姫はその視線に無言で(うなず)くと王倫に近づき、


爸爸(ぱぱ)。……ちょっと行ってくる」


と抱きついて離れ羅真人の横に行く。


「では首領(しゅりょう)殿。姫様をお預かりいたします」


公孫勝の言葉だけがその場に残り、一陣(いちじん)の風と共に三人は姿を消していた。間もなく彼から事情を聞いていた村の頭目達が集合し、気絶している五人を(しば)って山寨(さんさい)の方へと連れて行く。


それらの様子を混乱しながら見ていた白秀英。


「え? あの人王倫様じゃないわよね?」

「え? なんで皆私の王倫様そっちのけなの?」

「え? 襲ってきたのは梁山泊の賊でしょ?」

「え? あのお嬢ちゃん今姫様って……」

「え? 首領ってどういう事?」

「え? き、消えちゃったんだけど!」

「え? 村の人達がなんでこんな?」


その後、自分達の為に身体を張ってくれた白秀英とそれを助けようとした一座の皆は信用出来ると王倫(本物)に感謝された。


そして想いを寄せていた鄭天寿(本物)と自らの父白玉喬、それに一座の者達から真実を聞かされ今までの勘違(かんちが)いに気付く。


その時の白秀英の表情は一座の者達に大爆笑され、事の顛末(てんまつ)は伝説扱いされる事となるのだった。

後にこの出来事は「梁山泊首領の影」という「演目」とされ、喜劇として「一部の者達のみ(梁山泊関係者)」に余興のひとつとして公開されたりする。もちろん白秀英は本人役。笑

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ