↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/31

金策

黄金螺旋の塔はトリタール城下町のすぐ近くに位置していたため、冬牙達は徒歩で向かった。



黄金螺旋の塔に到着すると、見上げるほどの高さがあった。見た目は白い土壁にツルや苔が生えていてとても廃れていた。完全に名前負けしていた。



「なんか残念。てっきり黄金色かと思ってた」



「俺もそう思ってた。とりあえず、中に入るぞ」



「そうね」



塔の中に入ると、キラキラと光っているモンスターがうじゃうじゃいた。



「うわぁ、目が痛くなりそう」



万里乃は目頭を抑えて目を薄めた。



塔の中にはモンスター以外に金策目当ての冒険者がチラホラ見受けられた。



流石にここで合体スキルを使うのは気が引けるな。



「冒険者がいない階層で討伐しよう」



冬牙達はその後5階層まで登ったが、やはりちらほらと冒険者がいた。



「うーん、しょうが無いから1匹ずつ倒すか」



冬牙は金色に輝くキューブ型のモンスターをスキル「破壊」で倒して行った。モンスターは浄化すると同時に麻で出来た巾着袋をドロップした。

中には3000ピカが入っていた。



50万ピカだと、ざっと170匹は倒さないと行けないのか。早く合体スキルを使いたいな。



すると、5階層に居た冒険者がゾロゾロと帰り始めた。



「あれ?みんな帰り始めたけど、どうしたんだろ」



「分からないな。でもとりあえず、これで心置き無く合体スキルが使える」



冬牙は冒険者が居なくなった隙に、合体スキルを連発して短時間で90匹ほど倒した。



一気に倒しすぎたのか、5階層にモンスターがわかなくなった。



暫く湧きそうにないな。



冬牙はもう1階層上に登ることにした。

6階層のモンスターも難なく倒し終わり、あっという間に目標の50万ピカに到達した。



「意外とすぐに集まったな」



「そうだね!早速馬車を買いに行こう!」



冬牙達は町へ戻ろうと階段に向かった。



すると、ドシン、ドシンと何かが階段を登ってくる足音がした。



「なんの足音だろう」



万里乃は不安げな表情でそういった。



「分からないけど、冒険者ではなさそうだな」



冬牙は警戒しながら攻撃態勢に入った。



「金だ……、金の匂いがするぞ」



声がしたかと思うと、大きな黒い影が見えた。



「さぁ、お前らの持ち金全部寄越せー!!」



そう言って現れたのは二足歩行で耳が垂れた灰色の巨大兎だった。巨大兎はボロボロの布で出来た服を着ていて、サンタクロースのように大きな麻袋を持っていた。



「可愛い!!」



万里乃は愛らしい顔をした巨大兎を見てそう言った。



「ぶふっ……」



冬牙は思わず笑ってしまった。



「な!何笑ってるズラか!何かわての顔に付いとるズラか!?」



巨大兎は自分の顔を空いている方の手で毛ずくろいした。その姿が何とも愛らしい。



「何もついてないよ。いや、足音からしてどんな怪物が現れるかと思ったらその……兎って。くふふふっ!」



冬牙は緊張がとけたからか、変なツボにはいってしまった。



「笑うなズラ!そこまで笑われると流石のわてでも傷つくズラ!」



「ごめん、ごめん。それで、お前はこの塔のラスボスか何かなのか?」



「ラスボス?ラスボスって言うのが何か分からないけど、わては財宝を求めて世界中を旅してる旅人ズラ!」



「NPCなのに旅をしてるのか?」



「NPC?もしかしてのノンプレイヤーキャラクターのことズラか?そんな奴と一緒にしないで欲しいズラ」



「それじゃあ、ピコンみたいな感じか」



「違うズラ!わてはちゃんと現実世界に存在してるズラ。現実世界で人間達はわての事をうさぎーとかひけんたいーとか呼んでるズラ」



ってことは、こいつの中身は本物の兎って事か!?もしそうなら、今俺は兎と会話してるのか。



「そんなに驚く事かズラ?」



「そりゃ驚くよ」



「すごーぃ!兎さんと会話してる!」



万里乃は目をキラキラさせて、自分も会話をしたそうにうずうずしている。



「お名前はなんて言うの??」



万里乃は子供に話しかけるような口調で巨大兎に問いかけた。



「名前……。んー、名前ズラなぁ。そういえば、ちゃんとした名前は持ってないズラな」



「じゃあ、ラピちゃんはどう??」



「ラピちゃん……?」



「おいおい、万里乃。流石にラピちゃんは……」



「うっ、うぅ……」



突然、巨大兎は泣き始めた。



「ごめん!そんなに嫌だった?」



万里乃はおろおろしている。



「あーあ。泣かせた」



「本当にごめん!そんなつもりじゃ……」



「ち、違うズラ!ちゃんと名前を付けてくれたのが初めての経験で思わずウルってきてしまったんズラ」



巨大兎は涙をゴシゴシと腕で拭き取った。



「皆わての事を兎だとか、被検体とかでしか呼んでくれなかったんズラ。他にも沢山仲間が居たけど皆そう呼ばれてたズラ。だからずっとわてだけの名前が欲しかったんズラ」



巨大兎は抱えていた麻袋を置くと、両手で万里乃の手を掴んだ。



「アンタはわての恩人ズラ!この恩は必ず返すズラ!」



「恩人だなんて、そこまで大したことしてないよ」



万里乃は少し戸惑っている。



「決めたズラ!わてはアンタらに付いていくズラ!」



「はい?」



冬牙は唐突過ぎてポカンとしていた。



「そうと決まれば早速いくズラ!」



「いや待て、何処に行くんだ?」



「何処ってもちのろん、冒険ズラよ?」



「すまないけど、一緒に冒険する事はできない」



「どうしてズラ?」



「それは……、俺達と居ると危険だからだ」



「えー?そんなにヤバいやつらには見えないズラよ」



「まぁな。とにかく、お前は財宝を探すっていう夢があるならそうするべきだ。それを諦めてまで恩を返そうとしなくてもいいんだ」



巨大兎は暫く俯いて沈黙した。



「……夢じゃないズラ。財宝を求めて旅してるのは特にこの世界でやる事が無いからズラ。どちらかと言うと、ずっと一緒に冒険できる仲間が欲しかったんズラ。

冒険者は皆、わての事をモンスターと勘違いして逃げたり、討伐しようとしてきたり、散々だったズラ。今回もその腹いせに金品を奪って、悪さしようとしてたんズラ」



「ねぇ、冬牙、一緒に冒険してもいいでしょ?なんか可哀想だよ」



「でも……」



巨大兎は目を潤ませ冬牙をじっとみた。



「ったく、仕方ないな……」



「やったー!!わては今日からラピとしてアンタらに付いていくズラ!ちなみにわては盗賊だから金策は任せるズラ!」



ラピはよっぽど嬉しかったのかぴょんぴょんと跳ね始めると、その度にズシン、ズシンと地面が振動した。



こうして、ラピが仲間に加わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。