表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

コーウェン公爵家

クレア姉さまへのおくりもの

作者: 三里志野

 セディは朝からソワソワしていました。


 今日はクレア姉さまに何かおくりたい。


 何をおくればクレア姉さまはよろこんでくれるだろう。


「そうだ、お花にしよう」


 そう思いつき、セディは急いでお庭に出ました。


 季節は春のはじめ、お外はまだまだ寒いです。


「お花、咲いてるかな?」


 お庭ではちょうど庭師のボブが植木の手入れをしていました。


「おや、セディ坊っちゃま、どうされました?」


「クレア姉さまにお花をおくりたいんだ」


「それでは、あちらに行きましょう」


 ボブがつれて行ってくれた花だんには、たくさんのお花が咲いていました。


「わあ、いっぱい咲いてる。きれいだね」


「どうぞ、坊っちゃまの大切な方のために好きなだけつんでください」


「いいの? ありがとう」


 セディはお花をつもうと手を伸ばしましたが、茎にふれたところでためらいました。


「坊っちゃま、どうなさいました?」


「こんな寒い中でもがんばって咲いていて、とってもきれいだから、このままクレア姉さまに見せたいよ」


「では、こうするのはどうでしょうか?」


 ボブはにっこり笑って、その考えをセディに話しました。


 セディはボブの話を聞いて目を丸くし、それから急いで必要なものをもらいにお母さまのところに走っていきました。





 お昼すぎ、クレア姉さまがセディのお家にやって来ました。


「クレア姉さま」


 セディはいつものように駆けよって、クレア姉さまに抱きつきました。


「ごきげんよう、セディ」


 クレア姉さまもいつものようにセディの頭をやさしくなでてくれます。


「クレア姉さま、こっちに来て」


 セディはクレア姉さまの手をとって、お庭の花だんにつれて行きました。


 花だんを見たクレア姉さまはおどろいた顔になりました。


「まあ」


 花だんは赤いリボンで丸ごとかざりつけてあったのです。


 リボンにはカードがくくりつけてあり、セディの覚えたての文字でこう書かれていました。


『だいすきなクレアねえさま

 おたんじょうびおめでとう セディ』


「とってもすてきなおくりものね。ありがとう、セディ」


 クレア姉さまがとてもうれしそうに笑ったので、セディは胸のあたりが温かくなりました。


「こんなすばらしいおくりものをもらったら、今度のセディのおたんじょう日には何をおくろうかなやんでしまうわ」


「それなら、ぼくがまたお花をあげる」


「あら、セディはおたんじょう日のおくりものいらないの?」


「だって、ぼくはクレア姉さまの笑顔が見られたらそれでいいもの」


「もう、セディったら」


 クレア姉さまがセディをぎゅっと抱きしめてくれたので、セディもクレア姉さまにしっかりと抱きつきました。






 それから時がたってセディは大人になり、結婚しました。


 大好きな妻のおたんじょう日には、セディはやっぱりお花をおくります。


「クレア、おたんじょう日おめでとう」


「ありがとう、セディ」


 クレアは今年もにっこり笑ってお花を受けとると、セディを抱きしめてくれました。

お読みいただきありがとうございます。


冬の童話祭の「おくりもの」というテーマを見て、すぐに拙著『あなたに呼んでほしいから』のふたりの子ども時代のお話が浮かび、参加させていただきました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ