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零話(れいわ) 〜やり直しが効くこの世界に  作者: トゥルーY
零札幌〜施設入所、奮闘編
9/53

第9話 優しい逆四天王

 ソファーにどっしり座っている男がいいた。

見た目に迫力があった。

例えるならゴリラの様に屈強な肩幅と熊の様に強靭な胸板、カモシカの様に鍛え上がった足、そして眼鏡ショップの店員の様な眼鏡を付けている。


彼の名は真壁了まかべりょう、23歳である。

 入所したのは、20歳の頃でこの中で一番年上である。

 了は札幌出身で生まれた時はただの人であった。

 彼は生まれながら体格が良く、力も強かったのだ。

 小学生の時、チンピラに絡まれていた友達を助けるとその噂は広まり、何かあれば了に助けを求める様になった。

いわゆる青春漫画とかでよくあるような慕われている兄貴分見たいなものだ。


 充実した高校生活を送った了は卒業すると警備会社に勤めて毎日、遅くまで働いた。

 休みなんて月に一度あれば十分で残業なんて当たり前、根っからの社畜であった。

だけど、それでもよかった。

信頼できる友人と愛する彼女がいたからだ。


しかし、ある日事件が起きた。



 いつもの様に友人が了に助けを求めに来た。

 友人が道端で会ったチンピラと揉め事を起こしてると連絡が入った。

 了は体調不良と偽り、仕事を早退する。


 急いで現場に行くと友人が男数人と揉めていた。

 了は仲裁に入るがエスカレートしていて、中々収拾がつかない。


遂には相手のチンピラが興奮状態に陥り、友人に殴りかかかったのだ。

 止めにかかると次は了にも殴りかかってきて、なんとか受け止めるが数人がかりで来られては、了も限界であった。

 暴れる男たちをなんとか押さえ込んでいたその時だった。

了の彼女が一生懸命働いて買ってくれた思い出のネックレスを引きちぎられたのだ。


 その時、了の中で抑えていた怒りの感情が外へ走り抜けた。

それは、友人を傷つけられたのと彼女から貰ったプレゼント壊された事が引き金となってだ。

それは、もう理性なんてどこかへ置いてきたかの様だ。

気づけば、相手の男たちは皆、地面に横たわっていた。

了がやったのであった。


了はふと我に返った。

地面に座り込んでいる友人に駆け寄ろうとしたが、友人は怯えている。

 チンピラに殴られたからではなく、激昂した了の豹変ぶりにだ。

 そして、了が近づこうとしたその瞬間、そのまま走り出して行く友人。

 その後、現場の騒動を聞いて通報があり、警察官が来る。

そのまま了は署まで連行されたのだった。

なんとか釈放されるが、釈放と同時に逆四天王の称号が通達され、職場は解雇され、友人や彼女もいなくなる。

 幸せの日々が絶望に変わった。


 了は誰よりも優し過ぎたがゆえに過ちを犯してしまった。

自分の精神力の甘さを悔やんだ。

 この先どうするか悩んでいると、警察官から逆四天王更生施設の話をされたのを思い出し、入所した。


 了の紹介が終わるとずっとソファーに座り込んでいた了が立ち上がり、壱達の方にやってくる。



 了は壱達の前で立ち止まり、すっと手を出す。



 殴られる!!!!!


 壱はそう思って覚悟を決めて歯を食いしばった。



「これからよろしく。何かわからない事あったら言って」

 と優しい笑顔で自分の夢は普通の生活を取り戻す事だと話す了であった。

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